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「浮世絵現代」が上野で開幕、草間彌生や横尾忠則らが参加

6月15日まで、「東京国立博物館」表慶館で

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Chikaru Yoshioka
浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa | 「東京国立博物館」表慶館の外観
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東京国立博物館」の表慶館で2025年6月15日(日)まで、展覧会「浮世絵現代」が開催されている。

浮世絵の制作技術を高度に継承した職人を抱える唯一の版元「アダチ版画研究所」と、デザイナー、アーティスト、漫画家、イラストレーター、建築家といった85人のクリエーターが協働し、伝統木版画の可能性を追求した多彩な「現代の浮世絵」が楽しめる。

現代のクリエーターと職人が協働

会場では、草間彌生、塩田千春、横尾忠則、キキ・スミス(Kiki Smith)をはじめとする国際的な現代アーティストや、和田誠、粟津潔、田中一光といったデザイナー、建築家の黒川紀章らが絵師となり、研究所の彫師・摺師(すりし)たちとコラボレーション。江戸時代の浮世絵の技術を基礎とし、新しい表現を探求した浮世絵を制作した。

浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawaエントランス

作品のテーマは幅広く、人間的なものから宇宙的なものまで勢揃い。優美なたたずまいの表慶館の建築ともマッチし、じっくりと個性あふれるユニークな現代浮世絵を楽しめる。

お馴染みのキャラクターが登場する漫画家による浮世絵

冒頭は、世界に誇る日本のカルチャー・漫画だ。

浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa安野モヨコによる美人画
浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa水木しげるの作品

水木しげる、石ノ森章太郎、池田理代子、安野モヨコといった漫画家たちによる、遊び心あふれるものや力強い作品に、目移りするだろう。お馴染みのキャラクターも登場するので、アートや浮世絵をあまり知らない人でも楽しめる。

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Photo: Keisuke Tanigawa池田理代子の作品

現代的で多様な表現を味わう

力強く華やかな芸術であった江戸時代の浮世絵。現代となると、そのバリエーションはより豊かだ。

浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa靉嘔の作品
浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa加藤泉の作品

絵画・版画・立体などさまざまなモチーフを虹色のスペクトルで覆う作品で知られる靉嘔は、題材に葛飾北斎の『赤富士』を選び、鮮烈な色彩がほとばしっている。赤ん坊のような宇宙人のような、かわいさと不気味さを併せ持つ正体の知れないキャラクターの絵画で知られる加藤泉の作品は、背景の黒が美しく刷られている。

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Photo: Keisuke Tanigawa田名網敬一の作品
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Photo: Keisuke Tanigawaロッカクアヤコの作品

田名網敬一は、色彩がエネルギッシュに爆発。ロッカクアヤコは、春らしい色合いの鮮やかさと、自由なフリーハンドの表現が魅力的だ。

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Photo: Keisuke Tanigawa花井祐介の作品

1950〜60年代のカウンターカルチャーから受けた影響に、レトロな雰囲気がミックスされたイラストレーションで人気を集めるアーティスト・花井祐介の作品は、立体的に収められている。

伝統木版画の工程も見せる

アダチ版画研究所で行われている伝統技術の工程を見せるパネル展示や、北斎の『冨嶽三十六景』の刷り方も紹介する。

浮世絵現代
Photo: Keisuke Tanigawa展示風景

AIで簡単に作品が制作できる現在。時間も工程も肉体も要し、木という有機的な素材や人が使う道具とその過程、そして、表現の可能性が計り知れない伝統木版画のようなものはより特別になっていくだろう。

時代と社会を鮮やかに映し出すメディア

浮世絵の「浮世」は、「当世風の」という意味があり、浮世絵版画はまさに時代と社会を鮮やかに映し出すメディアであった。

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Photo: Keisuke Tanigawa町田久美の作品

他者とのコミュニケーションを遮断するシュールなキャラクターを描いた町田久美の作品でも、自意識の葛藤や社会的な違和感、他人とのつながりに潜む不安などを示唆的に表現。現代人の生活や社会を描いている。

名だたる現代アーティストが勢揃い

手作業や伝統技術は、現代の人々の心を捉える作品を生み出し続けることで、次代へと継承されていく。

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Photo: Keisuke Tanigawa李禹煥の作品

一見シンプルに見えるリー・ウーファン(李禹煥)の作品。木版画でグラデーションを表現するのは容易ではなく、20回ほど刷って完成させたという。草間の富士山を版画にした作品では、図柄は同じもので、色彩をカラフルに変化させている。

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Photo: Keisuke Tanigawaアントニー・ゴームリーの作品
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Photo: Keisuke Tanigawa名和晃平の作品

イギリスの版画家、アントニー・ゴームリー(Antony Gormley)は、開口部から光が出ているような作品だ。名和晃平は、間近でよく見ると図柄が入っているものや、さまざまな作品で登場する象徴的な白いシカが登場する。

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Photo: Keisuke Tanigawaグッズも満載

浮世絵だけでなく、人による手作業の魅力も改めて知れる本展。お気に入りの作品を見つけてみては。なお、東京国立博物館では、「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」と「イマーシブシアター 新ジャポニズム」も同時開催中なので、併せてチェックしてほしい。

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