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テキスト:山塚リキマル
LGBTQ+当事者とその支援者・アライ(ally=仲間や同盟を語源とするLGBTQ+当事者の支援者)と共に「生と性の多様性」を祝福するイベント「東京レインボープライド2024」に行ってきた。今年プライドパレードが30周年を迎えたという本イべントであるが、今回僕は初めて訪れた。で、どうだったかっていうとヤバかった。単純に人の数がヤバい。マジで超盛況だった。
僕が会場に着いたのは12時過ぎだったが、新型iPhoneの発売日とジャスティン・ビーバーのコンサートが重なってもこうはならないだろうという、圧倒的な人波であった。人人人、見渡す限り人だらけ。人口密度具合を例えて言うと、「ギリ吊革が全部埋まらないぐらいに混んでる電車」って感じで、マジで超盛り上がってた。
マジで人の数がヤバかった
聞くところによるとこの東京レインボープライド、去年はなんと2日間で約24万人を動員したというから驚きだ。しかも動員数は近年だんだん伸びてきていて、今年は残念なことに初日の4月19日が強風で中止になり20、21日の2日間日程での開催となったものの、それでも公式発表によればトータルで述べ27万人を動員したという。出店や企業・団体による出展ブースもいろいろ出ていて、フォトスポットありキッズスペースあり特設ラジオブースありで、もう規模感とか風格で言えば完全に夏の大型フェスの域に達してた。喫煙所が終日爆混みだったし。
会場を満たすLOVE
で、僕がいいな~と思ったのは会場を満たすムードである。誤解を恐れず忖度(そんたく)抜きで正直に述べると、かなりLOVEだった。愛の波動をツヨク感じた。おそらくパートナーと来たのであろうカップルたちが、手をつないだり膝を貸したりして仲むつまじそうにしてる光景が至るところに遍在していたのだが、なんつーか胸が、ほわ。ってなった。空気の色がうっすらとピンク色してる感じというか。
あとみんな、「ほっとしてる」って感じがした。これは良いパーティーに共通する空気感なんだが、ドキドキもワクワクもしてるけど、でも同時に安心してる。っていうヴァイヴスがビンビンにみなぎってたのだ。インクルーシブなセーフスペースであろうとする意志が、会場の隅々に行き渡ってないとこうはならないハズだ。
さてそんな感じであちこちフラフラしまくったのち、14時からプライドステージへ赴いてそこから終演まで一通り観た。
グッドヴァイヴスなステージ
まず各国駐日大使館によるスピーチがあり(ベルギー大使のスピーチがすごく良かった)、それからトップバッターのYYが登場した。ビートメイカーと箏(そう)奏者のユニットで、オリエンタル感あるメロの四つ打ちで、要するにYMOが発明しゲーム音楽が確立し、ボカロがカジュアル化したダンスミュージックだ。
日本舞踊とインラインスケートを折衷したダンサーのパフォーマンスなんかは、まさしくクールジャパンという感じだった。「ブレードランナー」的というかね。この日観たステージパフォーマンスはほとんど総てダンスの要素が入っていた(普通に歌い演奏するだけのバンドとかは一組も出てなかった)のも興味深いところだと思う。
続いて八方不美人。昔風にいえばコーラストリオということになるのか、ドラァグクイーン御三方によるグループである。「矢島美容室っぽい」とでもいえば分かりやすいかもしれないが、それは分かりやすいがゆえに全くの大ハズレである。
あれはシュープリームスのパロディだが、八方不美人が参照しているのはおそらく工藤静香や中森明菜、大黒摩季といったライン。歌謡曲にロックやラテン、ブラコンのニュアンスが入っているJ-POPだ。ユルめでキュートなコレオグラフはWinkや森高千里を想起させる。
そして矢島美容室はフェイクであることを前面に打ち出した企画もののパフォーマンスだが、八方不美人は徹頭徹尾リアルである。何より歌唱力がかなりガチだ。3人ともヴォーカリストとしてイケまくっているし、確固たる自信を感じる。
リリックもエンパワーメントに軸を置いているようで、とにかく全体的に力強い。この日MVがアップロードされた新曲「野良の拳」の「拳を振り上げ 覚悟を見せてやれ 負け犬のままで命を終えるな」という詞はすごい。こういうリリックを本気で歌う歌手って今ほんといなくなったと思う。作詞はなんと「残酷な天使のテーゼ」で知られる及川眠子というから驚きだ。
その後、AISHO NAKAJIMAの登場である。チャラくてセクシーな、しっかり腹筋ある感じのパワフルなR&Bという印象を受けた。フックがほかのヴァースと同じテンションで歌われる、「サビで何もしない(=常に躍動している)」タイプのやつで、これがまたナウい感じでかっこよかった。
AISHO NAKAJIMAが素晴らしいバックダンサーと共にハケると、 次のステージの前に、オナン・スペルマーメイドとryuchellへの追悼が挟み込まれた。僕はこのお二方についてほとんど何も知らず、だからこんなことを記述するのは失礼かもしれないが、短い映像で紹介されたこの両者の姿を、僕は気高いと思った。そして、いい人だったんだろうなと思った。フツーに、シンプルにそう思った。思った思ったってなんか小学生の作文みたいだけど、でも本当にそう思ったのだから仕方ない。
相当にかっこいいショー
それから、DRAG QUEENSによるショーが始まった。5人のドラァグクイーンが次々に登場し、それぞれリップシンクのショーを披露したのだが、めっちゃギャルくてサグい感じだったり、露骨にしっとりしてたり、アプローチがみんな違っていて面白かった。最後に登場した枝豆順子の出で立ちは、なんかもうファイナルファンタジーとか聖闘士星矢の域に達していて、ビリー・ポーターとかP!NKの楽曲でムチャクチャバックダンサーと入り乱れて踊りまくってて、相当かっこよかった。
余韻に浸っているとAAAの與真司郎のトークショー。昨年ゲイであることをファンイベントでカミングアウトしたというのは知っていたし、それについて語ったGQ JAPANのインタビュー記事も読んだのだが、現在35歳である氏が「自分みたいな人間は世界に一人なんじゃないかと思っていた」と言っていたのがとても印象的だった。
知らない人がめっちゃ有名だった時のドキドキ
そして大トリを飾ったのはちゃんみなである。大変失礼ながら僕はこの人を全く存じ上げておらず、本当に初見初聴きだったのだが、マジでめちゃくちゃ盛り上がっていてビックリした。カリスマ感が半端なかった。 どの楽曲でも歌い出しからシンガロングが始まるし、サングラスを外しただけで「イヤーーーーッ!!!」とか黄色い悲鳴が上がる。マジでスター過ぎる。僕もサングラスを外しただけで騒がれる人間になりたいものだ。
ライブもショーマンシップにあふれていて、椎名林檎を彷彿(ほうふつ)とさせるソングライティングセンスと、浜崎あゆみを想起させる憂鬱(ゆううつ)と官能のハイな融合性があり、まさにY2Kド真ん中って感じのディーヴァだった。真の意味でのギャルイズムを感じる。すごく現代的だと思うし七変化するボーカルスタイルも超テクい。
「みんなのバックにはあたしがついてるからね、負けないからね」というMCには心底シビれた。
帰り道に考えたこと
さて、ここまでを鑑賞し、僕は帰路に就いたワケであるが、帰り道に考えていたのは『素直に生きる』って大切だよなー、ということだ。相田みつをめいたことを言うが、幸福の最もな近道は素直に生きることだ。
だけども、素直に生きるということがままならない人々が世の中にはたくさんいて、自分が本当に着たい服を着られなかったりとか、好きな人と街中で手をつなぐことができなかったりとか、もう本当にいろんなことにがんじがらめにされて、押しつけられていたりするという現実がある。 そういうのを一刻も早くなくすために、歌ったり愛し合ったりしている人たちを見て、やっぱめっちゃ当たり前のことこそ声高に言ってくべきだと思った。
めっちゃ当たり前だけど何回だって言っていこう、すべての愛に自由を。
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