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※本記事はタイムアウトマーケットの社長兼クリエーティブディレクターで、リスボンを拠点にしているジョアン・セペダによる寄稿。
察しの通り、タイムアウトがコミューナルテーブルを語る時、どうしてもバイアスがかかってしまう。リスボンに最初にオープンしたマーケットから、5つあるアメリカのマーケット、最近オープンしたドバイのマーケットまで、我々が展開しているどのタイムアウトマーケットにおいても、コミューナルテーブルが非常に大切な要素になっているからだ。しかしそれゆえに、コミューナルテーブルこそが2022年のフードシーンにおける、最強のトレンドの一つになると確信が持てるともいえる。
「出会い」は必然
我々が考えるコミューナルテーブルがうまく機能する理由はこうである。シンプルだが、「人と人との出会いをもたらすから」。サイズ、形、素材は何であっても、コミューナルテーブルは(ここが大事だが)「必然的」に人と人を引き合わせるものなのだ。
「おいしそうですね。何を食べているか、お聞きしてもよろしいですか?」。現代のフードホールでは、毎日何千もの会話がこうして始まる。
こういう状況が生まれることが、特にロンドンやニューヨークのような国際的な大都市、リスボンやマドリードのような観光の中心地で、コミューナルテーブルがここ数年のブームになっている理由の一つといえる。しかもこれらの都市に集まる人々は、同じ好みを共有してても、同じ母国語を話すとは限らない。多様な人々と出会うことも期待できる。
フードホールのコミューナルテーブル
定着しなかったが、かつて朝食店がコミューナルテーブルのように「相席してもらう」という仕掛けを使ったことがある。ただ当時は、短いピークタイムの稼ぎを小さなスペースでどう最大限にするかという、機能面の目的で導入した意味合いが強かった。朝は(少なくともほとんどの人にとって)見知らぬ人と友好を深めるのに理想的な瞬間ではないということだろう。
比較的新しいトレンドの中では、シェフカウンターが、コミューナルテーブルに似ていると思うかもしれない。確かに、伝統的なレストランがより社交的な場所になろうとする試みではある。しかしこれらのスペースは、客がほかの客と交流するためというより、料理のプロセスやシェフとより密接な関係を持つためにデザインされたものだ。
それに対して、タイムアウトマーケットやほかの多くのフードホールは、音楽フェスのフードエリアや、有名なオクトーバーフェストの会場構成といった、大きなイベントの雰囲気を踏襲することによって、社会的要素を作り出すことに成功している。これらの場所は、他人と心地よく距離を置けるようにではなく、人々が他人との関わりを持つためにデザインされたものという点でほかと違う。
つまり、フードホールは例外をルール化したものというとができる。その結果、人々は相席が好きになり、時々ではなく日常的に相席しても構わないと思っていることも証明された。
レストランへの浸透
となると、レストランはこのトレンドに乗らないのだろうか、という疑問が湧いてくるかもしれない。このチャンスは逃さない方がいいだろう。むしろテクノロジーが上ではなく下を向く理由をたくさん与えている今、人々はアプリ以外で他者と、140文字を超えた内容を話すための機会を必要としているようにも思う。
そうした状況もあってか、最近では並んでいた小さなテーブルをいくつかの大きなテーブルに置き換え、個々のゲストや小さなグループが仲間たちと一緒に座れるようにしようとしているレストランも増えている。
コミューナルテーブルの導入はサイズが鍵になるため、小規模なレストランではこのトレンドを取り入れることは難しいかもしれない。それでも、シェフやレストラン経営者によるこういった発言は増えている。経営者によるこのことについての発言は増え、彼らも、自分たちのゲストのほとんどが初対面の人と一緒に座ることを気にせず、とても楽しいものだと考えるようになっていることを認識している。
だから親密さ、静かさ、仕切り席といった、多くのレストランの「当たり前」は忘れよう。今のこの業界のキーワードは「近さ」であり、それは他人に対しても、家族や友人に対しても等しく適用されるものだ。
もしレストランがこのトレンドにさらに乗っていくのであれば、 きっと今後1年で、過去10年よりも多くの友人ができるだろう。
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