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ロンドンのコヴェント・ガーデンにあるクリスタルショップ、Mysteriesのオーナーであるバランカ・ゲフィンは次のように教えてくれた。「コロナ禍で、家を浄化するためのセージを求める人が増えた。その後も人々は毎週、別のものを求めにやってきたよ。ソーシャルメディアのその時々の流行に左右されていたのでしょう」
クリスタルヒーリングの人気
人々が求めたものの一つが水晶。ローズクォーツやアメジスト、ブラックトルマリンやモルダバイトなどを使うクリスタルヒーリングの人気は、この1年で急上昇した。TikTokでも半貴石を見せびらかしたり、サクセスストーリーを共有する動画はよく見られていて、「#crystaltok」の再生回数は20億回を超える。
クリスタルヒーリングといえば、アデルが2016年のツアーで水晶を持ちながら歌い、舞台恐怖症を克服したことで注目を集めた。ほかにもケンダル・ジェンナー、サイモン・コーウェル、イヤーズ・アンド・イヤーズのシンガー、オリー・アレクサンダー(Mysteriesの常連客といわれている)などのセレブたちが、水晶人気を広げるきっかけを作っている。
また水晶は、クリスティーズのような大手オークションハウスで、高級美術品のように投資対象として扱われ、ウォール街のブローカーでさえ、富と成功を引き寄せるために持ち歩くことが知られている。つまり、誰もが石に夢中になっているというわけだ。
Z世代やミレニアル世代からの支持
石が人気なんて、まるでヒッピー時代のようだが、水晶やオルタナティブウェルビーイングの流行は確かだ。特に、Z世代やミレニアル世代から支持を獲得している
科学的根拠はほとんどないが、クリスタルヒーリングのベースにあるのは、特定の鉱物が体内の磁場を調整し、ネガティブな感情を和らげ、集中力や精神の明瞭さをもたらすという考え方。パンデミックによって世界全体がひっくり返ったのだから、なんであれよりどころを求める人たちを責めるのは酷かもしれない。
パンデミック以降の水晶の人気に驚いたゲフィンは、「ロックダウンで混乱した人々は、落ち着きを求めているのでしょう」と言う。Mysteriesは1982年に、ヨーロッパで最初の謎めいたニューエイジショップとしてオープン。タロット、手相、占星術などのサイキックリーディングも行っている。現在、同様の店が徒歩5分圏内に4店舗、ロンドンに50店舗以上あるという(ヒーリングサロンは除いて、だ)。
「人気は急速に拡大しています。私ですらこんなに早く国境を越えるとは思わなかった」と言うのは、メイフェアに拠点を置くレイキとクリスタルのヒーラー、リーヤ・アヴァニ。彼女は歌手、経営者、弁護士、医者、専業主婦などのクライアントを対象に、不安、ストレス、自尊心の低下といった問題に対処する手助けをする。
クリスタルヒーリングのセッションは2時間で125ポンド(約1万9,000円)から。クライアントに合った水晶を選び、(「チャクラ」と呼ばれる)身体のさまざまなポイントに置いて、詳細なフィードバックを提供する。「数年前までそんなことはなかったのだけど、2021年はクリスマスまでずっと予約でいっぱいだった」と、彼女もヒーリングの人気を実感している。
水晶ブームの代償とオルタナティブ
ビジネスは活況を呈していが、この水晶ブームには代償がつきものといえる。実は世界中の鉱山で採掘された水晶は、再生不可能で、持続不可能なものなのだ。採掘はマダガスカルなどの熱帯雨林の破壊を招き、生物多様性を減少させている。
また、鉱山労働者は最低限の賃金しか受け取れず、搾取的な状況にある。Mysteriesで売られているような「倫理的に調達された」石でも、サプライチェーンを規制することは難しいようだ。どんなに美しくても、輝く石のかけらには、高い代償が伴っていることを覚えておくべきだろう。
ただ、オルタナティブウェルネスの選択肢は水晶だけではない。ハックニーにあるヨガスタジオ、The Refineryでワークショップやクラスを開いているソニア・アンダーソンは、サウンド、カカオ、エネルギーのヒーラーだ。
「私はヒーラーになって7年だけど、確実に人気が出てきている。ロンドンはとても混沌(こんとん)としているから、本当にヒーリングが必要。人々は自分自身をもっと大切にし、人生にもっとバランスを取りたいと願っているのでしょう」
ゴング、チベットボウル、シャーマニックドラムなどの楽器を使うサウンドヒーリングは、音楽が気分を良くしてくれるのと同じように、人により深いレベルで作用するという。アンダーソンは「振動が内臓と交信するんだ。自分自身とつながったり、さまざまな意識状態になることができ、リラクゼーションやストレスの解放に役立つよ」と説明する。
オルタナティブウェルネスがすでに旅行業界に入り込み、クラスやワークショップ、リトリート、スピリチュアルセラピーなどが、休日のリラックスできるアクティビティとして提供されているのは、驚くには値しないはずだ。
ロンドンのフィッツロビアにあるホテル、Mandrakeでは、ゴングバス、クリスタルボウルメディテーション、「ヒーリングとマニフェストのために先祖のDNAを活性化する」ためのワークショップなど、あらゆるプログラムが用意されている。なんだか、とても興味深い。
これらのプログラムは、ウェルネス、エンターテインメント、非宗教的スピリチュアリティの要素が混じり合っていることが魅力となり、新型コロナウイルスに対する規制が緩和されてからはカレンダーがたくさん予定で埋まる中でも人気だ。
たとえあなたがTikTokの最新トレンドには疎く、セレブがハンドバッグに入れているものには関心がなくても、2022年のオルタナティブウェルネスは大きくなる一方だ。
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