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世界には、人気が急上昇して手に負えなくなった観光地があることは、いまさら言うまでもない。格安航空券やソーシャルメディアの普及により、スペインのバルセロナからイタリアのアマルフィ海岸まで、さまざまな場所でオーバーツーリズムに拍車がかかっている。特に夏場のバカ高い料金とひどい混雑は耐え難い。さらにこの問題は、旅行者のみならず、住民にも悪影響を与えている。
ほかの人と同じ場所で休暇を過ごす必要はない。言えるのはこれだけだ。
我々が生きているのは、古くて大きな世界。あまり知られていない場所はたくさんある。そうした土地への旅行は出費を抑えることができるし、訪れること自体がその地の経済の活性化にも貢献できるのだ。もしかしたら、ビーチを独り占めすることだって夢ではないかもしれない。
2023年は、これまでの「行きたい場所リスト」は忘れ、今まで考えもしなかったような場所へ旅する年だ。ヨーロッパのビーチホリデーの代替地を探し、小さな町や地方を発見し、首都を飛び出してその国の地方都市への旅を試みてみよう。既成概念にとらわれない旅ができる場所を、以下に紹介する。
オルタナティブヨーロッパ
混雑している観光地が世界で最も集中しているのが、おそらくヨーロッパ。 観光客に「ほかに行ってくれ」と懇願しているような場所さえある。2023年はそのメッセージに耳を傾ける時かもしれない。イタリアの静かな海岸から、ヨーロッパの次のフェスティバルスポットまで、我々が注目する過小評価されている旅先を見てみよう。
「夏フェス」なら:パグ島からデルミへ
クロアチアはこの10年間で、ヨーロッパにおけるサマーフェスティバルの王者としての地位を確固たるものにしてきた。しかし2023年、その状況が一変するかもしれない。「アルバニアのリビエラ」といわれる小さな海岸沿いの町、デルミがヨーロッパのフェスティバルシーンにおける新しいホットスポットになりつつあるのだ。
クロアチアの「Hideout Festival」でバケットハットとポーチを身に着け、エレクトロな雰囲気に包まれた1週間を過ごすのが好きであれば、「ION Festival」が新しいお気に入りになるかもしれない。デルミの美しい海岸で7日間にわたり開催されるこのイベントでは、ダンスミュージックとウェルネスアクティビティが楽しめる。
デルミの魅力は、ヨーロッパの地中海沿岸の雰囲気をほかのどこよりも、はるかに節約しながら満喫できること。フェスティバルのことはどうでもいい、という人にもおすすめだ。
どれだけ節約になる?:アルバニアでは、クロアチアよりもビールが77%安い。
ビーチなら:アマルフィ海岸からポンティーネ海岸へ
ローマの南に位置するポンティーナ海岸には、歴史ある海辺の町があり、沖には太陽の光が降り注ぐ島が点在している。観光客はここよりもっと有名な(そしてもっと混雑している)アマルフィ海岸に集まるため、ほとんど注目されてこなかった。そこで2023年は、ローマの人たち同じように行動してみてはどうだろうか。
テッラチーナ、スペルロンガ、ガエータといった海岸沿いの町には、広々とした砂浜がある。テッラチーナの「Vicoletto」では、新鮮な魚介類のパスタに舌鼓を打ち、地元のワインを堪能しよう。ポンツァ島やヴェントテーネ島へ行き、岩の多い入り江や隠れた入り江で泳ぐのもいい。
どれだけ節約になる?:テッラチーナのレストランは、アマルフィ海岸のの街、ピャーノ・ディ・ソッレントより50%ほど安い。
都市での休暇なら:アムステルダムからサラエボへ
アルバニアやモンテネグロが地中海の次のビーチリゾートとして脚光を浴びているように、バルカン半島もすでにあなたの旅のウィッシュリストに載っているかもしれない。しかし、東ヨーロッパへ向かう理由は、海や太陽だけではない。2022年、欧州連合(EU)加盟候補国として承認されたボスニア・ヘルツェゴビナもその一つといえるだろう。
同国首都で長い歴史をもつサラエボは、歩きやすく、博物館やミルジャッカ川にかかる美しい橋があることから、アムステルダムの代わりに訪れる都市としておすすめだ(この街の道は、アムステルダムの運河よりも混んでいない)。旧市街のマーケットでのショッピングや「サラエボ・トンネル博物館」の見学を楽しんだら、温かいチェヴァピ(伝統的な焼きミンチ肉の料理)を食べてみよう。その後はこの国の素晴らしい自然公園、広大な山々、ターコイズブルーの川を散策するのがおすすめだ
どれだけ節約になる?:3品のコース料理は、アムステルダムよりサラエボの方が68%安い。
田舎への旅
考えてみれば、観光都市を体験するためだけに、何時間もかけて移動するのは少しもったいないこと。その都市の中心部から離れ高速道路や脇道を走れば、旅先で新たな一面を体験することができる。2023年は、都会での定番観光の後に、疲れを癒やすための数日間を加えた「フュージョントリップ」がおすすめだ。
日本:東京から埼玉へ
ほかには類を見ない、世界最大級の都市である東京には、都市滞在に必要なものが全てそろっている。しかし、埼玉に数日滞在することも忘れるべきではないだろう。
この県では、森、山、川、伝統的な酒蔵、江戸時代の村など、東京から遠く離れずとも、日本の田舎を味わうことができる。城下町の川越は、桜並木の新河岸川や菓子屋横丁があり、ぜひ訪れてみたい場所といえる。割引パスを使えば、東京から格安で行くことができるのも魅力だ。
どれだけ節約になる?:東京から川越への交通費、川越のいくつかの店での買い物や食事が割引になる「KAWAGOE DISCOUNT PASS」がある。
スペイン:バルセロナからジローナ県へ
スペインのバルセロナで大聖堂や美術館、ベルモットバーを数日観光した後は、北へ。カタルーニャの美しい田園風景が広がるジローナ県で、新鮮な空気を満喫しよう。
このエリアにはオニャール川沿いにある同名の都市だけでなく、魅力的な中世の村々がある。特に県の中心にあり、火山で知られるラ・ガロッチャでは谷や滝、森、そしてさらにとんでもなく美しい景色が楽しめる。
どれだけ節約になる?:ジローナ県の地ビールは、バルセロナより25%も安い。
モロッコ:マラケシュからオウリカ渓谷へ
アフリカ初の公式文化首都であるマラケシュは、休暇を過ごす都市として不動の人気を誇っている。2月は気候も良く、「Marrakech International Storytelling Festival」が開催される時期でもある。ただ、1週間も街で過ごすと、山の新鮮な空気を吸いたくてたまらなくなるはずだ。
山が多いモロッコでは、どの旅行会社でも、オウリカ渓谷やハイアトラス山脈への日帰り旅行や宿泊を格安で手配できる。ベルベル人の小さな村、まばゆいばかりの滝、野花が咲き乱れる渓谷を探索し、スークでストレスを解消しよう。
どれだけ節約になる?:オウリカ渓谷への日帰り旅行(昼食付き)は、わずか12ポンド(約1,920円)だ。
小規模な都市
メキシコシティ、ベルリン、パリの共通点は何だろうか。そう、活気あふれる首都であり、文化の中心地であり、何世紀もの歴史に彩られている街だ。しかし、これらの都市は観光地として居住地として、特にクリエーターやデジタルノマドの間で非常に人気があり、比較的出費がかさむ場所だといえる。2023年は、その影にある都市に注目する時だといえるだろう。規模は小さいかもしれないが、美しさ、歴史、そしてユニークな見どころにあふれている場所はまだあるのだ。
グアダラハラ(メキシコ)
メキシコシティが魅力的な街であることは、誰もが認めるところだ。しかし、同地はデジタルノマドのホットスポットにもなっており、ホテルの部屋から、一杯のルソ・ネグロ(ブラック・ルシアン、メキシコ発祥の「カルーア」を使うカクテル)まで、あらゆるものの価格がかなり上がっている。
2023年、出費を抑えてメキシコの都市を旅したいなら、ハリスコ州都で、植民地時代の面影を残すグアダラハラがおすすめだ。まずは、広大な公園や歴史的な広場など巡り、街の全体像をつかむのがいいだろう。
その後は、活気あるバーでテキーラをひっかけ、2022年にタイムアウトの「世界で最もクールな地区」の一つに選ばれたコロニア・アメリカーナのアンダーグラウンドシーンを探検してみよう。旅の締めくくりは、郊外へ。緑豊かな渓谷、バランカ・デ・オブラトスではハイキングが楽しめる。
どれだけ節約になる?:3品のコース料理は、メキシコシティよりもグアダラハラの方が23%安い。
ドレスデン(ドイツ )
ドイツでもメキシコと同じようなケースがある。この国の揺るぎないエッジのきいた首都ベルリンは、駐在員や観光客の間で定着し、オーバーツーリズムと家賃の高騰という危機に直面している。そこで、ベルリンっ子にゆっくりしてもらうためにも、歴史あるドレスデンに行ってみてはどうだろう。
この街には、バロック様式の建物や壮麗な宮殿(多くは第二次世界大戦の爆撃の後に再建)の中に、ヨーロッパで最も古い博物館がいくつか残っている。さらに、ベルリンよりもずっと美しいものが多く、ブリュールのテラス、「ツヴィンガー宮殿」、街中に広がる庭園、ザクセン・スイスの山々など、行くべきところがたくさんある。ドレスデンは実際に訪れてこそ、その魅力が分かる街だといえるだろう。
どれだけ節約になる?: 月間の交通パスは、ベルリンよりドレスデンの方が26%安い。
マルセイユ(フランス )
TikTokで人気の細長い入り江で、マルセイユを知った人も多いだろう。しかし、フランスで2番目(数え方によっては3番目)のこの大都市の魅力は、青い海だけではない。アーティスティックなブティック、ブイヤベース(マルセイユ名物のシーフードシチュー)以外の料理が味わえるレストラン、クールなパーティーヴェニューも見逃せない。
パリにはエッフェル塔やムーランルージュ、モナリザがあるかもしれないが、マルセイユには本当のビーチがあり、フランスのどこよりも太陽の光が降り注いでいる。
どれだけ節約になる?:マルセイユでは、コーヒーがパリより29%安い。
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