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1947年の開店以来、銀座中央通りに大きなのれんを掲げ、70余年にわたって銀座の変遷を見つめてきた「とらや 銀座店」。2024年4月11日、複合ビルとして建て替えられた「虎屋銀座ビルディング(Toraya Ginza Building)」の4階に、「トラヤ ギンザ(TORAYA GINZA)」として新たなスタートを切った。
内装デザインは、「とらや 京都一条店」や「とらや 赤坂店」を手がけた建築家の内藤廣が担当。入り口には物販のショーケースがあり、その奥に喫茶スペースを設けた。
喫茶スペースには、目の前で職人の手技を楽しみながら出来たての和菓子が楽しめるカウンター席のほか、2室の個室(カウンター共に予約制)と、ゆったりとしたソファ席、さらにはテラス席も用意している。
内装のテーマは「素材の確かさと豊かな静寂」。これが、あえて4階を選んだ理由でもある。以前、銀座中央通りにあった入り口は、すずらん通りに移動した。
内藤の「新たな素材を使いたい」という希望のもと、天気や時間帯によって表情を変える、いぶし銀の落ち着いた色合いが味わい深い瓦タイルを内装材として使用。鏡面仕上げの壁も、銀座という立地にふさわしい、モダンかつ落ち着いた雰囲気を演出している。
床や天井には吸音素材を使用。テラス席と室内席を隔てるドアを閉めると、店内は一気に静寂に包まれ、その威力を実感した。
広々としたテラス席は、銀座にいながら自然を感じてほしいと、青々とした植栽と陽光を受けてキラキラと輝く水盤を配した。
中央には、「そら植物園」の代表を務めるプラントハンターの西畠清順がプロデュースした、樹齢100年を超えるという「羅漢槇(らかんまき)」が圧倒的な存在感で鎮座している。水盤の波紋が壁に映り、ゆらゆらと動く様子はなんとも風流で、和歌の一つでも詠みたくなる。
目の前で作られるフレッシュな和菓子
そんな同店でハイライトとなるのが、予約制のカウンター席(席料330円、以下全て税込み)だ。わずか4席の特等席では、トラヤ ギンザでのみ提供する、出来たてならではのおいしさを追求した2種の和菓子を用意している(テイクアウト不可)。
通年で提供するのは、「焼きたて『夜半(よわ)の月』」(飲み物付き1,958円から)。曇り空にうっすらと浮かぶ満月をイメージした焼菓子で、小倉あんを挟んだ、いわば、「とらや」特製のどら焼きだ。これは1994年の登場以来、「とらや パリ店」で愛されている商品。これを、「トラヤ ギンザ」では、注文が入ってから、銅板で1枚ずつ生地を焼き、焼きたてを提供する。
側面は、バーナーであぶるカリッとした食感がたまらない。生地は、出来たてを提供するというトラヤ ギンザでの提供スタイルに合わせ、国産の小麦2種を配合。良質な卵やはちみつの存在を感じさせる、甘やかな香りも胃袋を刺激する。
日本の旬の食材を和菓子に昇華した、季節限定のアイテムも用意。5月中旬までは、イチゴを使った「『馨(かおる)』きんとん製 御膳餡入」(飲み物付き2,090円から)を提供する。
果実本来の味わいを存分に味わってほしいと、「あまおう」を、生のもの、セミドライ、ピューレと3つの調理法で加工。これにレモン果汁を加え、白あんと合わせてそぼろ状にしたもので、こしあんを包み、きんとんに仕立てた。あえて芯のこしあんを練り切りで包んでおらず、イチゴとこしあんがダイレクトに対峙。いちごとこし餡の相性の良さを再認識する。
ペアリングの飲み物は、スタッフのおすすめに従い、紅茶をオーダーしてみた。和菓子に紅茶を合わせるのは初めてだが、なるほどこの和菓子には紅茶がいい。
物販も、定番のようかんや季節の生菓子のほか、同店の限定商品「ちぐさかん」(9個入り2,484円)を用意している。世代や国境を越えて、あらゆる人にようかんを楽しんでもらいたいという思いで作った、シャリっとした食感も楽しい、一口サイズのようかんの詰め合わせだ。
とらやが誇るようかんに、果物やスパイスなどの味わいを加えたもので、通年販売のセットと季節限定のセット2種類がラインアップ。通年販売はあずき、抹茶、山椒の3種を組み合わせた。
6月下旬までの提供となる季節限定セットは、ラズベリー、ライム、パッションフルーツの3つのフレーバーが詰まっている。一見、パート・ド・フリュイ(果物のピュレを固めたゼリー)のように見えるが、ここはさすがとらやだけあって、由緒正しきようかんに仕上がっており、外国人向けの和菓子にもぴったり。 新たな銀座土産として注目を浴びそうだ。
なお、虎屋銀座ビルの1階から3階には「バレンシアガ」が、5階には陶芸作品の展示などが楽しめる「銀座 黒田陶苑」が入居している。
4月20日(土)には、11階に仏ミシュラン3つ星に輝く小林圭シェフととらやによるファインダイニング「エスプリ セー ケイ ギンザ(ESPRIT C. KEI GINZA)」が、12階には1586年創業のフランスのクリスタルメゾン「サンルイ(Saint-Louis)」と、小林が織り成す新しいスタイルのバー「サンルイ・バー・バイ・ケイ(ST LOUIS BAR by KEI)」がそれぞれオープンする。
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