ニュース

東京で初、麻布台ヒルズでニューヨークで活動する松山智一の個展が開催

5月11日まで、「麻布台ヒルズ ギャラリー」で

テキスト
Chikaru Yoshioka
松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima | 展示風景
広告

麻布台ヒルズ ギャラリー」で、世界が注目する次世代のアーティストの一人であり、ニューヨークを拠点に活動する松山智一の東京での初個展「松山智一展 FIRST LAST」が2025年5月11日(日)まで開催されている。空間に広がるダイナミックな絵画や大迫力の立体作品など、最新作を含めた作品群約40点を通して、壮大なスケールの作品世界を体感できるだろう。

海外でしか観られなかった作品が東京に集結

岐阜県生まれの松山は、クリスチャンの両親の下で幼少期をアメリカで過ごし、25歳で再び渡米。アメリカでアーティストとしてのキャリアをスタートさせ、20年以上ニューヨークを拠点に活動する。これまで絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを制作し、上海やベネチア、ロンドンなどで作品を発表してきた。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima松山智一
松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima展示風景

日本での「クリスチャン」、社会においての「美術家」、アメリカでの「移民」といった特異なマイノリティーとしての背景を持つ松山。それらの独自の視点から世界を捉え直し、松山はグローバルな現代社会のリアリティーを壮観な絵画や迫力の彫刻で伝えている。本展では、これまで海外でしか観られなかった作品が一堂に集結した。

さまざまな要素が一枚の絵の中で共鳴

全ての作品は、東洋と西洋の伝統的絵画や、雑誌や建築の資料から引用されている。その中で情報を編集し、松山による現代アートの手法でサンプリング。無数の色で現代の情報化社会の姿を映し出す。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima展示風景
松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima展示風景

一枚の絵画を細かに観察すると、情報量はとてつもない。キリスト教を主題としたルネサンス期や近世の絵画、狩野派などの日本の伝統的絵画、ポテトチップスなどの大量消費される現代的な日常品やハイカルチャーなど、さまざまな要素がキャンバス上で共鳴している。フィクションなのか、リアルなのか。その境界線は弱く、仮想現実のようだ。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima『Hello Open Arms』の展示風景
松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima3Dスキャンでモノ化された制作する松山の腕

タイトルからオープンな印象を与える作品『Hello Open Arms』。その言葉は、アメリカで銃を所持してよいという意味を持ち、奥にレイヤーが潜む作品だ。周辺には、3Dスキャンでモノ化された、ニューヨークのスタジオに置かれてあるオブジェクトや、作品制作する自身の腕が配されている。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima『Broken Kaleidoscope』の展示風景

花柄の壁に、天井からも彫刻がぶら下がる『Broken Kaleidoscope』は、没入型の作品だ。Amazonなどで購入した中国産の西洋風陶器を3Dスキャンで巨大化することで、新しい作品として提示。流動的な東洋・西洋文化や、その文化の行末先などを暗示している。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima『The Fall High』の展示風景

狩野山雪の鳥の表現が引用された絵画『The Fall High』は、日本と西洋的な感覚が合わさり、解放感のあるノマディックな雰囲気を持つ。文化や政治的背景が端的に象徴される騎馬像は、アメリカ原住民との戦いの光景や、日本の騎馬武者象など、あらゆる世界で描かれてきた。松山は、このテーマを現代アートというグローバルな言語で捉え直している。

巨大な屋外作品も登場

麻布台ヒルズ」の中央広場には、巨大なパブリックアートも登場。松山は「街全体がミュージアム」となることを目指し、巨大なインスタレーション作品を、美術館という閉じた空間から解き放った。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima屋外のパブリックアート
松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima限定アイテムのコート

また、ファッション、フード、音楽といった多岐にわたるジャンルで日本国内のクリエーターと協働。「アート×ファッション」では、ファッションブランド「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」のデザインと、松山の多面的なイメージが融合したコートとTシャツが限定アイテムとして展示販売されている。日常に新たなインスピレーションをもたらす、特別なデザインだ。

話題の11万円の「うまい棒」は一日で完売

松山は「うまい棒」とコラボレーションし、コンセプチュアルな作品として観賞用の「げんだいびじゅつ味」もリリースした。特別な加工はなく、あるのはコンセプトのみ。価格は11万円(税込)だ。50個限定で、販売から一日で完売したという。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima「げんだいびじゅつ味」のうまい棒

国民的な安価の駄菓子にアートの概念を用いて、新たな価値を創出できるのかという問いを投げかけた、まさしく現代アートな作品だ。

松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima展示風景

ポップで鮮やかな色彩世界を放ちながら、あらゆる手法で社会に問いを投げかける本展。世界が注目する現代美術家による新たな目線を読み解くことで、作品鑑賞により一層面白みを感じられるだろう。

関連記事

松山智一展 FIRST LAST

六本木で「ラーメンどんぶり展」が開催、ユニークなアーティストラーメンどんぶりも

ヤノベケンジの宇宙猫島が登場、「ハイパーミュージアム」が飯能にオープン

六本木でスタートした手塚治虫「火の鳥展」に行ってきた

神秘的な抽象絵画世界へ、ヒルマ・アフ・クリントの展覧会がアジア初上陸

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース
    広告