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鮮やかな花のようなラッフルドレスで知られる「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」のデザイナー小泉智貴。自身初のアート作品による個展が、天王洲の寺田アートコンプレックス内にある「ユキコミズタニ(YUKIKOMIZUTANI)」で、2023年12月9日からスタートした。
「TOMO KOIZUMI」のドレスは主にオートクチュールの一点もので、一目見たら忘れられない唯一無二のデザインが魅力。ミュージシャンのビョークやサム・スミスなど、名だたるアーティストらから絶大な支持を集め、芸術性の高さからすでにニューヨークの「メトロポリタン美術館」などにも収蔵されている。
小泉は1988年、千葉県生まれ。幼少期にイギリス出身のファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノによる「クリスチャンディオール」のオートクチュールコレクションと出会い、14歳から独学で服作りを始める。
千葉大学教育学部に在学中の2011年に自身のブランドを立ち上げ、2019年、初めてのファッションショーをニューヨークで開催。2020年、若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的とした「LVMHプライズ(LVMH Prize for Young Fashion Designers)」優勝者の1人に選出され、2021年には毎日ファッション大賞を受賞。同年に開催された東京オリンピック開会式で、国歌斉唱の衣装を担当したことも記憶に新しい。
本展は、今年9月行われた2024年春夏パリ ファッション ウイークでのプレゼンテーション「Dress as a painting, Painting as a dress」の作品群を再構築。モデルたちがまとっていた色とりどりのラッフルのドレスがホワイトキューブの空間に浮遊し、「ファッションとアートの境界線」というテーマのインスタレーション作品へと変貌させた。
小泉はコロナ禍で移動が制限された頃、日本へ帰国して改めて内省の時間を過ごす中でアート作品の制作を本格化させたという。本展ではブランドのアイコンとも言えるラッフルの白い生地が、色とりどりの油絵具やアクリルラッカースプレーでペイントされている。
壁に広げて掛けられた作品群は、大型の絵画のようでもあり、フリルの立体感と相まって鑑賞者により強い印象を残すだろう。また、「原風景」「Strawberry Shake」「夜の地面」など、詩的なタイトルを知った後に改めて眺めると、作品の見え方が変化する感覚があるかもしれない。
使われている生地そのものも、これまでの「Tomo Koizumi」の多くのドレスに用いられてきたポリエステルオーガンジーだけではなく、絵画のキャンバスに使われるコットンもあり、より絵画に近しい新たな表現へのチャレンジがうかがえた。
今後しばらくはコレクションの発表を行わず、アート作品の創作活動が中心になるという小泉は、個展の開催を前に、「アートとして扱えるファッションを作りたいと思い続けて、ここまでやってきた。境界を超えて、アートとファッションどちらの領域でも活動することができれば、2つの業界の橋渡しにもなれるのではないかと思っています」と語っている。
会期中には、小泉本人によるパフォーマンスも開催予定だ。会場で直接、作品の質感や空間を体感してほしい。なお、本展は2024年2月10日(土)まで開催。12月26日(火)〜2024年1月8日(月・祝日)は、アポイント制のため注意が必要だ。
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