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東京、8月に観るべき邦画の特集上映3選

阿佐ヶ谷・池袋・横浜のミニシアターで名監督の世界に浸る

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Time Out Tokyo Editors
映画と、からだと、あと何か
『PASSION』 ©︎東京藝術大学大学院映像研究科
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暑い時期は、涼しい映画館で映画の世界に浸ろう。昭和のディープな映画がよみがえる「映画作家・黒木和雄に出逢う夏」、令和の映画を語る上では欠かせない濱口竜介の全作品が映画館で観れる貴重過ぎる特集など2024年8月は時代を超えて愛される名監督の作品が楽しめる。また、8月10日(土)のみだが、塚本晋也が手がけた生々しい戦争作品『野火』と『ほかげ』の2本立ては、夏の時期にこそ観てほしい傑作だ。今年のお盆は、時代を超えて愛される名監督の作品を堪能してみては。 

映画作家・黒木和雄に出逢う夏
映画作家・黒木和雄に出逢う夏

映画作家・黒木和雄に出逢う夏

寺山修司や若松孝二作品といった、非商業的だからこそ魅せることのできるアングラ映画の傑作を数々生み出した配給会社「ATG(日本アート・シアター・ギルド)」。そんな「ATG」を代表する一人である映画作家の黒木和雄の手がけた計7作品が「阿佐ヶ谷ラピュタ」で連続上映中だ。

彼の代表作である、坂本龍馬が暗殺されるまでの3日間を描いた『龍馬暗殺』は、時代劇の荒々しさを描きつつも、青春のエネルギーを感じることのできる作品。教科書には載っていない、戦争と学生運動を経験した彼の表現するパワフルな歴史を、ぜひ映画館で見てほしい。鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』や『夢二』に出演した俳優の原田芳雄や、今なお北野武の『アイウトレイジ』などで活躍する石橋蓮司など、豪華俳優陣も見どころだ。

また、原発の利権で潤う福島を舞台に描かれたサスペンスである『原子力戦争』もおすすめ作品の一つ。原発問題の闇を描きながらも、パリコレモデルであった山口小夜子の妖艶な演技や、どこか不穏な演出が見どころ。実際に、原発でのゲリラ撮影の際に警備員に止められるシーンをそのまま映画に使用するなど、ATG作品ならではの挑戦的な作品となっている。

ほかにも、「戦争レクイエム三部作」の一つである『TOMORROW 明日』に加え、桃井かおりと伊丹十三の主演が話題となった『夕暮れまで』が上映予定だ。スケジュールの詳細は公式ウェブサイトをチェックしてほしい。

【上映作品】 『竜馬暗殺』『原子力戦争』『夕暮れまで』『TOMORROW 明日』

※2024年7月14日〜8月31日/10時30分〜/ラピュタ阿佐ヶ谷/料金は1,400円、60歳以上・学生1,200円

映画と、からだと、あと何か
『ハッピーアワー』 ©2015 KWCP

 映画と、からだと、あと何か

「第80回ヴェネチア国際映画祭」で賞を受賞した最新作『悪は存在しない』など、カンヌ・ベルリンの三大映画祭を制覇した、今一番注目されている映画監督の一人である濱口竜介。彼の初となる著書『他なる映画と』の刊行を記念して、「濱口竜介監督特集上映《映画と、からだと、あと何か》」を全国のミニシアターで順次開催中。8月10日(土)から横浜「シネマ・ジャック&ベティ」での上映がスタートする。

過去にも濱口の作品が特集上映されることはあったが、濱口が学生時代に制作した8mmフィルム作品の『何食わぬ顔』に加え、人が映らない2分のショートフィルム『Walden』、東京藝大大学院卒業制作の『PASSION』など、20年以上におよぶ作品からえりすぐりの16作品が一挙に上映されるのはこれが初めてだ。

もちろん濱口を語る上では欠かせない、カンヌ国際映画祭で日本映画として史上初の脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』や、初の短編映画の『偶然と想像』も上映を予定している。

たわいなく、それでいて巧妙な会話劇の中に、濱口の描く「何か」が常に潜んでいる。ここに至るまでの軌跡を、緻密に描かれた心情描写の連続を、ぜひこの機会に味わってほしい。

下北沢の駅前シネマ「ケーツー」でも、9月6日(金)から特集上映が予定されている。併せてチェックしてほしい。

【上映作品】 『何食わぬ顔(long version)』『PASSION』『永遠に君を愛す』『THE DEPTHS』『親密さ』『なみのおと』『なみのこえ 新地町』『なみのこえ 気仙沼』『うたうひと』『不気味なものの肌に触れる』『ハッピーアワー』『天国はまだ遠い』『寝ても覚めても』『偶然と想像』『ドライブ・マイ・カー』『Walden』

※8月10日〜16日/シネマ・ジャック&ベティ/料金は1,800円、学生1,500円、60歳以上1,200円、高校生以下1,000円 

塚本晋也 が描く「戦争」と「人間」
野火

鬼才・塚本晋也が描く「戦争」と「人間」

『鉄男』や『六月の蛇』など、国内外でカルト的人気を誇る塚本晋也の戦争作品である『ほかげ』『野火』が、池袋の「新文芸坐」で、2本立てで上映。その後に行われる、塚本本人によるトークショーも見逃せない。

大岡昇平の小説を原作とした『野火』は、 第二次世界大戦末期のフィリピンの島をさまよう飢餓状態の日本兵を通して、戦争の恐怖を映し出した作品。塚本が構想から20年の歳月をかけて完成させたもので、彼が小説を読んで感じた「戦争のリアル」を、鮮明で忠実な映像で表現している。

また最新作となる『ほかげ』は、終戦直後の闇市を舞台に、戦争が終わってもなお苦しみながら生き続ける人々の生活を描いた作品。その震えるほど鬼気迫る俳優の演技や音の気迫は、まるで今目の前で起こっていることを見ているかのように感じるだろう。

8月15日は終戦記念日。池袋の「新文芸坐」で、映画監督・塚本晋也が作品を通して表現した「戦争の恐ろしさ」を、映画館ならではの音と映像でより生々しく体感できる。 座席には限りがあるので、早めにチェックをおすすめする。

※8月10日/18時25分〜/新文芸坐/料金は1,900円、60歳以上・22歳以下1,500円

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