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2024年4月19日(※初日は強風により開催中止)~21日、「代々木公園イベント広場」で「東京レインボープライド2024」が開催。プライド30周年を迎えた今年は、歴代の参加者に敬意を払いながらも現状の課題を認識し、歩みを次世代へつなぐための試みが随所に準備されていた。
本記事では、日本のLGBTQ+活動におけるレジェンド、南定四郎のコメントとともに会場の様子をレポートする。
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「あの光景は今も忘れられない」、南定四郎が振り返る「第1回プライドパレード」
1994年8月、東京で開催された日本初のプライドパレード「第1回東京レズビアン&ゲイパレード」は、日本のプライド史にとっての偉大な一歩となった。
「初めてのパレードで一歩目を踏み出した時は、こんなにも賛同の輪が広がるとは予想していませんでした。30年を迎えられて大変うれしく思います」と喜びの言葉を寄せるのは、ゲイ・アクティビストであり「第1回レズビアン・ゲイ・パレード」代表を務めた南定四郎(92歳)。日本におけるLGBTQ+運動のパイオニアだ。
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当時、主催団体代表として開催に向けて尽力した南。スタート地点の「新宿中央公園」に集まった参加者はわずか200人ほどだったが、パレードが進むうちに続々と仲間が加わったという。
「私は先頭で横断幕を掲げていましたが、参加者の規模が2倍、3倍と膨れ上がり、「ラフォーレ原宿」の交差点に差し掛かった頃には列の最後尾が見えないほどに。感激のあまり涙が出ました。沿道には手を振って応援してくれる人も。あの時の光景は今も忘れられません」と振り返る。
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2012年、特定非営利活動法人東京レインボープライドが主体となり、代々木公園イベント広場で「プライドパレード&プライドフェスティバル」を開催。LGBTQ+ならびにその支援者であるアライ(ally=仲間や同盟を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)と「“性”と“生”の多様性」を祝福し、つながる「場」を提供しながら、今や国内外から注目を集めるLGBTQ+イベントへと成長した。
プライドの30年は、自分らしく生きる社会の実現に向けて諦めずに声を上げ続けてきた30年でもある。近年、パートナーシップ制度を導入する自治体が増加するなど少しずつ前進はしているものの、婚姻の平等のための法整備や、ジェンダーギャップ指数から見える男女格差、昨今のトランスジェンダーヘイトなどまだまだ課題は山積みとなっている。
東京レインボープライドは、具体的な課題解決に向けて、パレードへの参加以外でも社会変革のアクションに関わる選択肢と機会を今まで以上に増やしていくという。その一つが記念冊子「PRIDE 30th」の制作だ。
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PRIDE 30thは、日本のプライドパレード30年の歴史や活動記録、歴代関係者のインタビューをまとめた一冊。一人でも多くの人にプライドの歩みを知ってもらい、目の前の課題を「自分ごと」として捉えてほしい、そして実現すべき未来の在り方をともに考えるきっかけにしてほしいという思いが込められている。
刊行費用を募るためのクラウドファンディングは、2024年4月26日に終了。目標金額を越え、219万5,412円の支援総額に達した。
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30年の歴史を振り返り、思いを次世代へつなぐ
東京レインボープライド2024では、30年の歴史を振り返りながら、現状の課題を見つめ直し、このムーブメントを次世代へ継承するためのさまざまなコンテンツが用意された。
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「従来、パレードの出発地点だったけやき並木にも『過去・現在・未来』をテーマにさまざまな工夫を凝らしています」と、広報事務局の担当者は明かす。
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けやき並木通りの起点に設けられた特別ブース「JAPAN PRIDE 30th」では、過去の活動への理解を深めることを目的に、全国のプライドパレードの年表やパレードの始まりを描いた漫画などのパネル展示や、1994年の第1回レズビアン・ゲイ・パレードを記録した貴重な映像が上映された。
寄せ書きボードには「私とパレード」をテーマに思い思いのメッセージが寄せられ、一部は記念冊子にも掲載される予定だという。
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「南さんをはじめ、勇気ある人々の行動が日本全国のプライドパレード、そして支援者へと派生していきました。JAPAN PRIDE 30thに続くのは、全国のプライドネットワーク、そして協賛企業・団体のブースです。30年という節目において、ここは一つの象徴となるエリアではないでしょうか」(TRP広報担当)
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その先には、プライドの思いを次世代へとつなげるためのステージ「レインボーステージ」が新設された。主に子どもやファミリー層、ユースをターゲットに、絵本の読み聞かせや体操、ユース世代に人気の高いアーティストによるステージプログラム、粘土細工教室やメイク体験コーナーなどのプログラムを展開。エリア内にはキッズスペースも設けられ、親子でステージを楽しむ光景も見られた。
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「東京レインボープライドに関わってきた全ての人に感謝と敬意を払い、未来に向けて若い世代と一緒に考えていく。同時に、今、直面する問題を社会に投げかけていく。これが私たちが今できることだと考えています」(TRP広報担当)
性の在り方にかかわらず、全ての人が平等に結婚を選択できる社会を目指す「結婚の自由をすべての人に - Marriage for All Japan - Marriage for All Japan」のブースでは、同性婚の実現を求めて国会議員に手紙を書けるコーナーが用意された。
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また、街頭の選挙ポスターにスマートフォンをかざすだけで、同性婚の法制化に賛成している選挙候補者を見分けられる世界初のARカメラ「PRIDE VISION」を先行公開し、体験会を実施。2024年4月に投開票を控える衆議院議員補欠選挙・東京15区に向けて、4月22日(月)から実用化をスタートさせていく予定だ。
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ダイバーシティーやインクルージョンの社会認識が広まり、多様な性や生き方、幸せの在り方を認め合う社会、そのための制度づくりを多くの人が望んでいる。誰もが差別や偏見にさらされることなく、自分らしく生きることができる未来の実現のためには、世代を超えてともに考え、歩む姿勢が求められるだろう。次の30年に向けて、東京レインボープライドの行進はこれからも続いていく。
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