[title]
国内最大規模のセクシュアルマイノリティー・LGBTQ+の人々への理解を促す「Tokyo Pride 2025」の「Pride Festival」が、代々木公園イベント広場&野外ステージで2025年6月7日、8日(日)に開催された。
「Tokyo Pride 2025」は、名称を「東京レインボープライド」から改めるとともに、開催時期を4月末から、世界的にプライド月間として知られる2025年6月に移して開催。代々木公園で行われるイベントだけではなく、渋谷を中心とした都内各地で1カ月間、さまざまな催し物が開かれている。
本記事では、Pride Festivalのにぎわいをいち早くレポート。行けなかった人も場内の雰囲気を味わってほしい。

最高気温は29.5度、湿度は75パーセントと、平年と比べて気温が高く、蒸し暑さに見舞われたPride Festival初日。しかし、例年通り多くの人が来場し、盛り上がりを見せた。
筆者は日本語しか話せないため詳しい話を聞けなかったが、写真に写る彼らが掲げているのは、他者に対して性的欲求を抱かない「Asexual(アセクシャル)」の黒と紫色のフラッグや、ピンクと水色の「トランスジェンダー」のフラッグ、ピンク・黄色・水色3色の「全性愛」という性別を問わない性的指向の「Pansexual(パンセクシュアル)」のフラッグと、LGBTQ+の中でもマイノリティー性の高いものだった。


並木通りに設置された暑さ対策用のミストシャワーに立ち止まる人々の姿も見られた。飲食ブースには30の店が軒を連ね、新宿二丁目の老舗店「アラマスカフェ」も出展していた。



飲食ブースの木陰で休む親子は、2歳の娘にかき氷を食べさせながら涼を取っていた。夫と娘とともに来たユッキーは、トランスジェンダー男性の幼なじみがいるという。「娘には、さまざまなセクシュアリティを持つ人を見てもらい、偏見を持たずに育っていってほしい」と教えてくれた。


ブースには、200に近い大小様々な企業や団体が出展。RED-11のプライベートケアクリニック東京のブースには、男性同性間性的接触者(MSM : Men who have Sex with Men)の間で、認知度が高いSASUKEの姿もあった。
SASUKEは、ゲイクラブのステージで踊るダンサー・ゴーゴーボーイとしても知られた存在。彼のことを知らなくても、新宿三丁目駅構内で、白いテディベアを抱えた男性の広告を見たことがある人もいるはずだ。

GREEN、BLUEのブースは、さまざまな当事者の自助団体が軒を連ねる。GREEN-32のFTMマガジンLapHのブースでは、FTM(トランスジェンダー男性)のミニコミ誌を販売していた。


GREEN-37のNPO法人にじいろ学校では、LGBT以外の性的マイノリティーの認知向上活動や、他者に恋愛感情持たない、あるいは恋愛的関係を望まない「Aromantic, Aro(Aロマンティック)」と、「Asexual, Ace(アセクシュアル)」を略した「Aro/Ace(アロエース)」の人々の交流会などを行っていた。ブースでは、それらのセクシュアリティの意匠を元にしたグッズが売られていた。

RED-18のHIV感染症に特化した製薬会社・ヴィーブヘルスケアのブースでは、おみくじを使ってHIVの啓発を行っていた。引いたおみくじには、今日からできるHIV啓発のアクションが書かれている。

また、企業ブースでは、ボディペイントを施したり、カップルのフォトブースなど、それぞれの企業・団体の持ち味を活かして性の多様性を考えられるスポットが登場。Tokyo Prideに彩りを与えていた。



会場内で、柴犬を抱えて歩く男性カップルが目に入り、思わず声をかけた。同イベントには、コロナ禍前に訪れたというボジャは、「以前は、もう少し男性のほうが多かった印象がある。今は女性や、アライ(Ally、性的少数者に対して理解や支援の意思を持つ人)が増えた気がする」と教えてくれた。

パートナーとともに散歩がてらやって来たそうだが、愛犬のころころをずっと抱きしめたまま。聞くと「(人が多く)危ないかな」ということだった。



同性パートナーと代理母出産で授かった子どもの3人とスウェーデンに住み、ユーチューブなどで活躍するふたりぱぱのみっつんの姿も見られた。オンラインで活動するみっつんにとって、Tokyo Prideは、人々とリアルで会える貴重な機会だと教えてくれた。15日(日)のユースプライドのステージにも登壇するので、ゲイカップルの子育ての話に興味のある人は、訪ねてみてほしい。

ゲイやトランスジェンダーの映画を数多く手掛ける映画監督の東海林毅(しょうじ・つよし)も、Tokyo Prideはクィアの仲間に会える貴重な場だと語った。

ステージには、セクシャルマイノリティー当事者たちが登場。性別や年齢を問わず女性らしさを育む「乙女塾」の西原さつきも、かわいさ全開のパフォーマンスを繰り広げた。

中でも盛り上がりを見せたのは、障害などさまざまなマイノリティー性を持つパフォーマーやアーティスト集団「まぜこぜ一座」だ。

男性的、女性的、両方の歌声を持つ「両性類」シンガー・悠以も登場。「アナと雪の女王」の挿入歌で、ハンス王子とヒロインのアナのデュエット曲である『とびらを開けて』を一人2役で歌い上げ、まるで2人の歌手が歌っているかと錯覚させる歌い分けをして、客席を湧かせた。

性的なマイノリティーだけでなく、身体的なマイノリティー性を抱えている人々もイベントに参加している。

左の女性は気管切開を行い、喉元に空いた気管切開孔に取り付けるレティナを装着。和風ロリータに身を包む女性は、生まれつきのメラニン色素が欠乏する、先天的な特徴を持つアルビノだという。二人は「多様な人と交流がしたい」と、眩しいほどの笑顔を浮かべながら教えてくれた。
Pride Parade
2024年のパレードの集合場所・整列場所・帰着場所は「国立代々木競技場 第二体育館」だったが、2025年は渋谷駅側の出入り口付近がパレードの集合場所に変更されていた。

Queer Art Exhibition
プライド月間である6月には、初のアート展「Queer Art Exhibition(クィア アート エキシビション)」がプログラムに加わった。展示会場は、「東急プラザ原宿 ハラカド」の3階に位置し、カフェ「ベイビー ザ コーヒー ブリュー」の向かい。会期は、6月6日から18日(火)までだ。

ここでは、LGBTQ+当事者たちが、言葉では表現しづらい感情をそれぞれの視点からつむぎ出した作品が展示されている。参加アーティストは、プロの作家に限らず、趣味で創作活動を行う28人。会場には計34点の作品が並び、その多くは小ぶりながらも、強いメッセージを放つ。

同展では、展示を通じたアーティスト支援の取り組みも行われている。会期中には「推しアーティスト投票」が実施され、最も多くの票を集めたアーティストには賞金10万円が授与される。会場に訪れたら忘れずに投票しよう。社会のマジョリティー的な価値観からこぼれ落ちた場所にこそ存在する、表現の豊かさと多様性を感じ取ってほしい。
Youth Pride
2025年6月14日(土)・15日(日)には「ウィズ ハラジュク ホール(WITH HARAJUKU HALL)」で若い世代の「学ぶ」「働く」「暮らす」「遊ぶ」の4つのテーマを軸に、ステージエリアとブースエリアを設けたある「Youth Pride」が予定されている。


会場に来られない人はYouth Prideの様子をyoutubeでチェックしてみるのも一つだ。今年のテーマは、同じ命、同じ権利を意味する「Same Life, Same Rights」。それぞれの形で、連帯できる方法を模索しよう。
関連記事
『 「Tokyo Pride 2025」でしかできない5つのこと』
『日本初のプライドパレードから30年、目指す未来の実現のために必要なこと』
『LGBTQ+の祭典「Tokyo Pride 2025」が6月に時期を変更して開催』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら