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寺田倉庫「TOKYO CANAL LINKS」で長谷川愛展が開催

5月6日まで、2021年の新作を含むアート展示

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
長谷川愛
Photo: Keisuke Tanigawa
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天王洲を拠点に現代アート業界をけん引する寺田倉庫が、2017年から展開するアートプロジェクト『TOKYO CANAL LINKS長谷川愛の新作を含む展覧会を開催中。

『私はイルカを産みたい…』(2013年)
『私はイルカを産みたい…』(2013年)

長谷川は、バイオアートやスペキュラティブ・デザインなどの手法で、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに作品制作を行うアーティストだ。これまでには、人間の女性がイルカの子どもの代理出産を試みる映像作品『私はイルカを産みたい…』(2011-2013年)や、実在する同性カップルの遺伝情報から二人の子どもの姿、性格などを予測し「家族写真」を撮影するプロジェクト『(不)可能な子供』(2015年)など、「生」を巡る作品を発表してきた。今回の展示では過去作品に加え、現在リサーチ中の「死」にまつわるプロジェクトの新作展示が行われている。

死生学とテクノロジー 

今回展示されている新作は『富士山噴火茶室』『技術死生学 思索能試作』『供養絵額2.0』(全て2021年)、『極限環境ラボホテル』(2012-2021年)の4点。能、茶室、はたまたラブホテルなど、日本を感じるモチーフが多い。

『極限環境ラボホテル』(2021年)
『極限環境ラボホテル』(2021年)

これについて長谷川は、「新型コロナウイルスの影響で動きづらくなったなか、ヨーロッパで派生したスペキュラティブ・デザインがそれぞれのローカルの国でどうあり得るのか。日本の文化と状況に注目している」と踏まえ、次のように話した。

「テクノタナトロジー(Techno-thanatology)という分野の学問があります。例えば現在、ディープフェイクや機械学習、CG、VRなど死者を甦らせる技術があり、私たちの持つ死生観に変化が起きているのではないでしょうか。『技術死生学 思索能試作』(2021年)では、日本の死生観を最も表しているとされる能の楽曲から5曲を選び、SFとして観ることを提示しています」

『技術死生学 思索能試作』(2021年)
『技術死生学 思索能試作』(2021年)

災害大国、日本の富士山をモチーフに

また『富士山噴火茶室』(2021年)では、噴火の可能性を常に持ちながらも平和な日本の象徴として表される富士山をモチーフに、そのリスクについて討論するための茶道具を用いた茶席を制作。固定観念を解放し自由になれるアートの役割の上で、日本において重要な災害への向き合い方を問いかけている。

「富士山の噴火は東京にとっての大きな危機ですが、見ないふりをせず、単に怖がるだけではなく、前向きな災害後のイメージを」と、長谷川は語った。インスタレーション作品では、実際に茶室内で茶人の松村宗亮が行う『お茶会体験イベント』も予定している。

『富士山噴火茶室』(2021年)
『富士山噴火茶室』(2021年)
『富士山噴火茶室』(2021年)
『富士山噴火茶室』(2021年)

会場はテラダ アート コンプレックスTERRADA ART COMPLEX)で会期は5月6日(木)まで。入場は要予約制のため、事前に公式ウェブサイトから登録を済ませておこう。

長谷川 愛 展『4th Annunciation』の詳細はこちら

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