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酒とジャズセッションの夜、第2回Tokyo Beats & Brewsレポート

まさかの飛び入りゲストで菊地成孔が登場

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Photo: Keisuke Tanigawa
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テキスト:大石始

2023年11月に恵比寿の「タイムアウトカフェ&ダイナー(Time Out Cafe & Diner)」で始まったイベント「Tokyo Beats & Brews」。2024年2月8日、東京のジャズシーンとバーカルチャーを紹介することをテーマとする本イベントの第2回目が開催された。前回に続き、Tokyo Beats & Brewsならではのシーンが繰り広げられた、この夜の模様をレポートしよう。

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Photo: Keisuke Tanigawa

エントランスを抜けると、まず待ち受けていたのが日本酒の升が積み上げられたブースだ。前回は渋谷「ザ ベルウッド(The Bellwood)」の鈴木敦が監修したカクテルが好評を博したが、今回は文本酒造(高知県四万十町)とのコラボレーションにより、日本酒の利き酒セットが販売された。

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Photo: Keisuke Tanigawa
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Photo: Keisuke Tanigawa

並んでいたのは純米大吟醸の「“SHIMANTO” BLUEラベル」、にごり酒の「霧の里」、清酒の「HANAYAGI」という3種類。いずれも東京ではなかなか呑むことができない逸品である。

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Photo: Keisuke Tanigawa

また、この日は文本酒造が日本酒醸造に使用しているブランド米「仁井田米」のおにぎりも販売。おにぎりを食べながらジャズのライブを観るというのは、ひょっとしたらTokyo Beats & Brewsでしかできない体験かもしれない。タイムアウトカフェ&ダイナーは開演20分前の段階で満席。多くの観客が日本酒をゆったり楽しんでおり、仕事終わりに一杯やりにきたようなリラックスしたムードが流れている。

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Photo: Keisuke TanigawaYuki Atori
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Photo: Keisuke Tanigawa秋元修

19時半ちょうど、Tokyo Beats & BrewsのレジデントミュージシャンであるYuki Atori(ベース)と秋元修(ドラムス)の2人が現れた。このイベントではAtoriと秋元がレギュラー出演し、その日だけのセッションを繰り広げることがテーマにもなっている。

この日のオープニングナンバーはチャーリー・パーカー作の「Donna Lee」。ジャコ・パストリアスの名演でも知られるスタンダードだが、2人はそのジャコのバージョンを元にしながらセッションを展開していく。Atoriは五弦ベースを手にテクニカルなフレーズを連発。秋元はそのフレーズに笑顔で反応しながら、変則的なプレイを披露する。

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Photo: Keisuke Tanigawa

ただし、そのセッションは決してストイックなものではなく、音遊びのような楽しさが満ちあふれている。通常のジャズクラブとは異なるタイムアウトカフェのカジュアルなムードが、そうしたセッションを柔らかく包み込んでいる。

続いて披露されたジャズスタンダードの「Oleo」が終わると、Atoriがマイクを握った。「前回よりもお客さんが増えてちょっと緊張してます(笑)」と笑うAtoriは、この日のライブの2日後が誕生日。ちょうど30歳になるとのことで、この日が20代最後のライブとなるのだという。

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Photo: Keisuke Tanigawa

3曲目はジョン・コルトレーンの名曲「Giant Steps」。ただし、7/8拍子による変則的なカバーだ。複雑なリズムを余裕綽々で演奏する2人。その恐るべき演奏力に、観客も釘づけになっている。

ここで、まさかの飛び入りゲストが登場する。Atoriと秋元がリズム隊を務めるバンド、ラディカルな意志のスタイルズを率いる菊地成孔がサックスを片手に現れると、観客からどよめきが巻き起こった。

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Photo: Keisuke Tanigawa突如現れた菊地成孔

Xの投稿によると「ちょうど渋谷にいたんで寄ってみた」そうだが、ここから濃密なセッションが始まった。3人のセッションはジャズという共通言語のもと、アンビエント的な広がりを持つものでもあった。菊地の演奏に瞬時に反応すべく、Atoriは常に菊地の表情を見つめている。

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Photo: Keisuke Tanigawa菊地成孔

思わぬセッションで会場の熱が高まる中、一部が終了。しばしの休憩の後、「A Night in Tunisia」で2部が幕を開けた。この日のイベントの直前、Atoriと秋元に取材する機会に恵まれたが、その際秋元は「Atoriくんはある種、ギターっぽいベースを弾くんですよ」と発言している。「A Night in Tunisia」での手数が多いベースプレイはまさにギター的。アイデアあふれるプレイには驚かされるばかりだ。

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Photo: Keisuke Tanigawa

ここで再び菊地成孔が登場。次に何をやるかステージ上で打ち合わせをしているところを見ると、本当に事前に決まっていたセッションではないのだろう。

だが、ラディカルな意志のスタイルズで活動をともにしてきた3人だけあって、まるでリハーサルを重ねたかのような演奏が繰り広げられる。

ころころと表情を変えるAtoriのベース、野生動物のように躍動する秋元のドラム、そして2人の演奏に時に呼応し、時にはみ出していく菊地のサックス。アンビエント的なインプロヴィゼーションから始まり、チェット・ベイカーらの名演でも知られるスタンダード「You Don't Know What Love Is」へ。鳥肌ものの展開が続く。

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Photo: Keisuke Tanigawa

ラストはアンコールの代わりに、チャーリー・パーカーの「Mohowk」。菊地はサックスを置くと、マイクに向かってスキャットを披露した。アイコンタクトによってどんどん演奏が変わっていく様は、飛び入りのセッションというよりも鍛錬を重ねたトリオによるスリリングなライブという感じだ。

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Photo: Keisuke Tanigawa

ライブ前のインタビュー時、Atoriと秋元はTokyo Beats & Brewsの今後の展望として、ゲストを迎えたバンド的な発展の可能性を示唆していたが、本人たちでさえ最初のゲストが菊地成孔になるとは思わなかっただろう。 

これほどまでに濃密なライブが観られるとは。正直、ちょっとした驚きであった。しかも、高知のおいしい酒を呑みながら。Tokyo Beats & Brews、東京の夜の遊びとしてはかなり贅沢な部類に入るのではないだろうか。

次回の開催は5月を予定。詳細はLINE公式オープンチャットをチェックしよう。

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