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坂本龍一と高谷史郎(ダムタイプ)のコラボレーションによる日本初上演の舞台作品「TIME」が、「新国立劇場」(中劇場)にて開幕した。奇しくも坂本の一周忌に当たる2024年3月28日が初日となった。
この作品は、坂本龍一が生前全曲を書き下ろし、高谷史郎とコンセプトを考案、2017年から製作期間約4年をかけて創作されたものだ。
ダンサーの田中泯、石原淋のパフォーマンスに、笙奏者の宮田まゆみが繰り広げる、時をテーマにしたシアターピースである。
2021年、坂本がアソシエイト・アーティストを務めた世界最大級の舞台芸術の祭典「ホランド・フェスティバル」((オランダ・アムステルダム))で世界初演され、満場のスタンディング・オベーションで迎えられた。
暗闇の中、雨音だけが響くプロローグ。光と水が交錯し、水面が揺らぐ舞台に、宮田による笙の音が凛として響く。そのバックでは、スクリーンの映像やインスタレーション、ビジュアルアートが神々しく融合していく。
いくつもの「夢」が幻出するなか、田中が音もなく舞台上に現れると、「こんな夢を見た」で始まる「夢十夜」((第一夜))「邯鄲」「胡蝶の夢」を語り始める。時をテーマにした夏目漱石の作品だ。かたわらで、夢見るように横たわる石原淋は、死の淵で100年の時が過ぎるのを待っている。
田中、石原によるパフォーマンスに、息をひそめて見入る。舞台に現れるパフォーマーは、幻想のように儚(はかな)いが、彼らの身体は、饒舌に時の隔たりを物語る。
「人類で初めて水を見た人になってみて」と坂本からの言葉を受けた田中のピュアな水との戯れ。
「時間の流れに翻弄されるわれわれは、時の仕業に対して、一緒に歩くのではなくて一度立ち止まって、時間を感じ取る必要がある」と田中は作品のテーマについて考察する。
宮田は、「坂本さんの音楽の流れと高谷さんの舞台の空間、田中泯さんの存在、その中に居られることが私にとって大きな喜びです」と舞台に立つことの幸せを噛み締める。
石原は、「坂本さんが、きっとどこかで観ていてくれるはず」と坂本へのオマージュとして舞うことに意欲をみせる。
高谷は、初日を迎えるにあたり、「人生も舞台も一期一会。坂本龍一さんが残してくださった素晴らしい音楽、哲学、この舞台に多くの人が会いにきてくださいますように」とコメントを残した。
衣裳デザインにソニア・パーク(ARTS&SCIENCE)、音響エンジニアにZAKら気鋭のクリエイターに支えられて粛々と進む静寂閑雅な物語。
耳に聞こえるのは、まるで、最後の時を悟った坂本自らに創ったレクイエム。「TIME」に通底する何かに触れられる、その「何か」の解を見つけるために、厳かなるその音符を共有してみてほしい。
東京公演は4月14日(日)まで、新国立劇場(中劇場)で上演。京都公演は、4月27日〜28日「京都・ロームシアター京都」(メインホール)」で開催。チケットは、公式ウェブサイトに表記されている各チケットサイトで購入できる。
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