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社会の「共有地」を生み出すアートの祭典「シアターコモンズ」が開催

小泉明郎、サエボーグ、佐藤朋子、中村佑子ら、さまざまなアーティストが参加

Honoka Yamasaki
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Honoka Yamasaki
シアターコモンズ
Photo:「火を運ぶプロメテウス」©️Meiro Koizumi
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演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すパフォーミングアーツの祭典「シアターコモンズ'23」が、2023年2月23日(木・祝)〜3月5日(日)にプログラムを発足。日常生活や都市空間の中にある「演技」の存在意義とは何か。ジャンルを超越したアーティストたちが集結し、新しい体験を与える。

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画像提供:シアターコモンズ

第7回を迎える今年は「Rebooting Touch 触覚の再起動」をテーマに、相馬千秋がキュレーションを担当。コロナ禍で「触れられない時代」から次のフェーズに進もうとしている一方で、ロシアによるウクライナ侵攻やインフレーションなど、不確実な世の中でどのように生き残るかも課題として残っている。そんな「触れられない時代」に触れられる方法を求めて、触覚の可能性を改めて考え直す機会となるだろう。

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Photo:「火を運ぶプロメテウス」©️Meiro Koizumi

参加アーティストの小泉明郎は、VR演劇「縛られたプロメテウス」(2019年)、VR彫刻「解放されたプロメテウス」(2021年)に続くプロメテウス3部作の最終章「火を運ぶプロメテウス」を発表する予定だ。

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Photo: Kayo Yamashita

雌豚や害虫を玩具的にデフォルメしたボディースーツに身を包むサエボーグは、家畜動物として、ジェンダー・年代・言語を超えたコミュニケーションを行う。今回は新作の「ソウルトピア」を披露。初のメタバースならぬ「サエバース」に挑む。サエボーグの着ぐるみであるインフレータブル構造のラテックスは、着用すると感覚が変わり、不自由な身体になるというところが特徴だ。今回は、これらの着ぐるみのアバターに参加者自身が変身してもらう。

サエボーグは「実際のラテックスの着心地とは違いますが、VR未経験者は3歳児のような状態になる、という意味でとても似ています。この不自由な状況を動物としての視点で捉え直し、『誰かから助けてもらうこと、誰かと何かをシェアすること』の喜びを意識しながら楽しんでくださると幸いです。なりきればなりきるほど楽しくなるので、どうか自分のハートを解放して参加いただけることを心待ちにしております。みんなで一緒に叫ぼう、ブー!ブー!」とコメントを残した。

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画像提供:シアターコモンズ

映画監督・作家の中村佑子も忘れてはならない。今回は、エッセイを書くように映像をつづる映像表現と散文表現を開拓する「シネエッセイ」制作のワークショップを展開する。中村は、シネエッセイについてこのような独自の見解を示している。

「シネエッセイとは映像でつづる随想だが、優れて現代的なものだと感じている。戦争があり疫病があり、グローバリズムの広がりの中で新自由主義社会がますます拡大再生産を続けている今、内面的なひらめきやかがやきの瞬間を見つめるまなざしが開放をもたらすはずだと思うからだ。小さな予兆や、目を凝らさなければ消えてなくなってしまうような光の明滅は、個人の中にこそ存在する。その動きに敏感に反応することが、シネエッセイのまなざしだと思っている」

さらに、ワークショップ参加者に向けて「何がテーマなのか、何が対象物として写っているのかと問われることのない、自由で安心できる場所で作ることに向き合ってもらいたいと思っている。

言葉にすることとは、反語的に言葉にならない不文分な領域を見つめること。その行為は、自分を守るとりでにもなるはずだ。それぞれが切実な思いを抱えていて、何か作りたいと思っている23人が集まった。彼/彼女らの内面の旅に、これから短い期間付き合うのだが、もうすでにとてもわくわくしている」とコメントした。

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シアターコモンズ ’22(Photo:佐藤駿)

レクチャーの形を用いた「語り」の手法を実践する佐藤朋子は、複数年にわたり、現在の東京や東京の歴史を毎年違う角度からみていくプロジェクト「オバケ東京のためのインデックス」を展開している。戦後活躍した美術家である岡本太郎が1960年代に提案した「オバケ東京」論を出発点に「もう一つの東京」を想像する。

シアターコモンズ
シアターコモンズ ’22(Photo:佐藤駿)

佐藤は「シアターコモンズの参加3年目になる今年は、港区・赤坂にある『草月会館』でかつて運営されていた『草月アートセンター』の歴史とともに、戦前・戦後の言葉たちに集まってもらいながら会を開きます。過去2年間は私が1人でレクチャーパフォーマンスという講義形式の語りのパフォーマンスを発表してきましたが、今回はいけばな草月流の皆さまに協力してもらい、新しい体験をつくっています」と、これまでにないスタイルを提案することを明らかにした。

さらに、オンラインで参加できる「コモンズ・フォーラム#1〜3」は、同時代に生きるアーティストたちをゲストに招き、独自の視点から1つのテーマを深掘りする。トーク内容は、メタバース時代の芸術表現の可能性から、西洋と東洋における「World(世界)」を比較して検討する東洋思想の世界観までさまざまだ。

プログラムごとに日程が異なるため、事前に残席情報を確認しておこう。

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