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日本を代表し、世界でも大人気の食べ物「ラーメン」。そのラーメンの器である「どんぶり」にスポットライトを当て、デザインの視点から調査・分析した展覧会「ラーメンどんぶり展」が、「トゥーワン トゥーワン デザインサイト(21_21DESIGN SIGHT)」で2025年6月15日(日)まで開催。
クリエーターによるオリジナルの「アーティストラーメンどんぶり」も40点登場し、ラーメンを切り口に、あらゆる視点からデザインの世界を楽しめるだろう。
在り方が多様な現代のラーメン
岐阜県東濃地方のうち、土岐市、多治見市、瑞浪市、可児市にまたがる地域で製作される陶磁器「美濃焼」。多様な焼き物の産地であるこの地域では、日本のラーメンどんぶりの9割が作られている。


本展は、ラーメンどんぶりを切り口に、美濃焼を知るプロジェクトの一環だ。過去にロサンゼルスやサンパウロ、多治見で開催された展示の拡大バージョンとして実現した。
ラーメンにまつわる事柄を細かくかみ砕く本展の冒頭では、ラーメンが登場するあらゆる漫画の一コマや、ラーメン史の年表が登場。まず、ラーメン自体を俯瞰(ふかん)し、理解を深める。

現代のラーメンは、世界中に存在する即席麺から、ミシュランの星を獲得するラーメン店、宇宙食のラーメンまで、その在り方が実に多様だ。漫画『美味しんぼ』からの「ラーメンという下劣なものを私に食べろと言うのか」などといったセリフで、社会の世相からラーメンの立ち位置を捉える。
ラーメンをデザインの視点で解剖
次に、ラーメンとは何かを、外側から内側へとデザインの視点でじっくりと解剖していく。

どんぶりの白さや、手にしっとり吸い付くようなマットな触感、たたくと奏でる澄んだ高音。また、ラーメンを食べ始める時の温度や、食べ終えるまでの好ましい時間なども徹底的に解析。併せて、どんぶりを作る際の道具、制作過程なども紹介する。

ラーメンどんぶりコレクターの加賀保行が集めた、日本全国の店舗オリジナルどんぶりもずらりと陳列。そのバリエーションの豊かさは見応えがあるだろう。
必見の「アーティストラーメンどんぶり」
注目は、アーティスト、デザイナー、建築家、イラストレーター、料理研究家たち40人がデザインした、オリジナルの「アーティストラーメンどんぶり」。糸井重里、竹中直人、田名網敬一、束芋、皆川明、ヒグチユウコ、深澤直人、横尾忠則らが名を連ねる。


ラーメンに対する考えや思い出、食べ進めることで見えてくる意図など、コメントとともにどんぶりが展示されている。


具材がいらない深澤の「素ラーメン用どんぶり」、自由に作っていいと言われたため自由自在にデザインした竹中、いつか作ってみたいと思っていたどんぶりを手がけたヒグチ。田名網は、昼に必ずラーメンを食べていたが、ある日黒いクモがどんぶりに沈没し、それ以来ラーメンが食べられなくなったという。それぞれの制作背景は絶妙に面白い。

一つ一つのどんぶりは360度回転して展示されているので、ラーメン屋にあるような赤い椅子に座り、じっくりと堪能できる。自身の、ラーメン店での思い出もよみがえるかもしれない。各どんぶりは、3月下旬から同館のショップで販売を予定している。
産地の土やリサイクル手法にも注目
美濃の伝統的な技法を使ったラーメンどんぶりや、焼き物の根本であり、無限のバリエーションを生み出す「土」にも注目する。不要になった器を回収後に粉砕・原料化する美濃で取り組む、リサイクル開発プロジェクトも紹介。「土のデザイン」の未来の可能性を示している。


分析から未来の可能性まで、どんぶり漬けになった後には、理想のどんぶりが頭に描かれてるかもしれない。そんな鑑賞者のために、どんぶりを紙に自由にデザインし、投稿するというワークショップ「丼自慢」企画も登場。会期中、選出作品は一定期間、壁面に展示される。

慣れ親しんだ日常の世界を、デザインの視点から新たな角度で見られる本展。身近なものがどのような要素で成り立ち、いかにして人やデザインが関わってるのかを発見できるだろう。その面白さを味わってほしい。
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