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2022年7月22日、足立区千住の「旧板垣家住宅主屋」が国の文化審議会文化財分科会の審議と議決を経て、国登録有形文化財(建造物)として文部科学大臣に答申された。官報告示を経て正式に登録される予定だ。
同建築は、江戸時代に「千住宿」として栄えた旧日光街道に面する洋館付和風住宅である。文化審議会は「千住宿の日光・水戸街道分岐に位置する洋館付二階建て和風住宅。入母屋造りの玄関脇に設けた洋館は、切妻造りフランス瓦葺きで台形出窓が瀟洒。街道沿いの伝統的景観を形成し、現在、料理店として活用(原文ママ)」と評価している。
1938(昭和13)年に東京市議会議員を務めた板垣信春が住宅として建てたもので、当初、彼が新道の建設に注力し実現に導いたことから、板垣家が面する道は地元では「板垣通り」と呼ばれている。大正から昭和初期にかけて、和風住宅の一部に洋風の応接間のついた住宅は全国的に普及したが、旧板垣家住宅にはその典型的な建築様式が見られる。
その後、2020年に当主である板垣稔が当家の相続にあたり、建物を残し活用する他社への売却を希望。幼少の頃から板垣邸を見て育った近藤温思(あつし)が土地と建物を購入し、同年の11月から日本料理店「和食 板垣」を営業している。
建物の内部は、伝統的な日本家屋のたたずまいを生かしつつリノベーションし、現代の職人の表現が融合されたモダンな空間に仕上げている。
格式の高い建物に見られる玄関の格天井(ごうてんじょう)や床の間の違い棚、窓やドアなどの建具の繊細な細工を観察してみると、当主や職人のこだわりが感じられるはずだ。
心穏やかな時間が流れる店内では、句の食材を使用した華やかなメニューを堪能できる。目でも舌でも楽しめる料理を味わいながらゆっくりと意匠を鑑賞し、当時に思いをはせてみるのもいいだろう。
このほか、かき氷カフェの「TSUJI」も隣接している。この夏は情緒あふれる建築を見に、千住へ足を運んでみては。
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