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タイムアウトワールドワイドから「2022年ベスト映画23(今のところ)」が発表された。ここでは1位から5位までのレビューとランクインした日本映画2本を紹介する。
大型新作映画のスケジュールは少し(いや、かなり)遅れがあるなど、今年も映画界は、通常通りには行かなかった。しかし、新型コロナウイルスの影響がありながらも、観客を楽しませ、ときに衝撃を与える作品が登場したことは事実だ。
映画「パラレル・マザー」や「リコリス・ピザ」のような映画賞受賞作から、イギリス人シェフのスリラー「ボイリング・ポイント」のような名作インディーズ映画、「RRR」「トップガン」のような大作映画まで、盛りだくさん。ここでは、今のところの「ベスト・オブ・ザ・イヤー」を紹介しよう。
1位 リコリス・ピザ
ポール・トーマス・アンダーソンが監督した、彼の作品の中で最も陽気でノスタルジックな作品。1970年代のサンフェルナンド・バレーを舞台に、将来が見えていない20代の女性の心をティーンエイジャーがつかもうとする恋模様を中心に描く。同じ青春映画である「ポーキーズ」にはまったく反映されていなかったティーンエイジャーの視線がうまい具合に描かれている。
それを支えているのが、フィリップ・シーモアの息子であるクーパー・ホフマンとアラナ・ハイムという本作でデビューした「新人俳優」たちや、ハリウッドのプロデューサーで脳卒中持ちのジョン・ピーターズ役を演じたブラッドリー・クーパーだ。神がかったカメラワークといえるだろう。
タイムアウトレビューでの一言:「ポール・トーマス・アンダーソンの甘い青春小説は、自由奔放で最高に楽しい」
日本では2022年7月1日に公開
2位 トップガン マーヴェリック
ほぼ完璧な超大作の登場を、誰が予期していただろうか? 当初は2年前に公開される予定だった「トップガン」の続編。しかし一連のやむを得ない遅れは、みじんも影響していない。今作は、2022年に公開された中で、間違いなく最もスリルのある映画といえる。
トム・クルーズ演じるエースパイロットは、心も魂も、さらにあらゆる物理法則を無視した戦闘機操縦も披露する。そう、そうした法則はいわゆる 「レガシー続編」をハリウッドの中途半端な換金映画よりはるかに優れたものに作り変えるために、早々に(そして文字通りに)捨てられたのだ。
タイムアウトレビューでの一言:「トム・クルーズは、オリジナルを余裕で超え、見る人にスリルを与える続編を送り出した」
日本では2022年5月27日に公開
3位 ザ・ノースマン(原題)
「ストリーミング時代における、『銀幕』的な雄たけび」。2022年4月、ロバート・エガースの見事な血みどろのバイキング大作が映画館で公開された際、タイムアウトではかなり辛口な評価を下した。 その気持ちは変わらない。というのも本作は、ストリーミングがますます主流となるこの時代でも、最も壮大で大胆な作品を観るには、可能な限り大きなスクリーンがある場所がベストだということを思い出させてくれたからだ。 その場所とは、もちろん自宅の居間ではない。あなたがIMAXのある映画館住まいであれば別だが……。
タイムアウトレビューでの一言:「ロバート・エガースと彼の狂気、輝き、暴力、催眠術、そしてトリッピーなバイキングの大作の誕生を、オーディン(北欧神話の神)に感謝しよう」
日本では2023年1月公開予定
4位 パラレル・マザーズ
監督ペドロ・アルモドバルは、スペインの内戦のトラウマを痛烈に描くこの作品に真剣に取り組んでいる。ただし、軽妙なタッチとメロドラマ的な楽しさはその犠牲にはなっていない。ペネロペ・クルスふんするのは、産科病棟で人違いに巻き込まれた新米ママ。
彼女自身の素晴らしいキャリアの中でも最高の出来栄えで、星くずのように全てを照らしている。本作で、彼女は2度目のオスカー像を手にしたかったはずだ。
タイムアウトレビューでの一言:「ペドロ・アルモドバルの世界に入るのは、たとえ痛みや厳しい教訓に直面しても、楽しいものだ」
日本では2022年11月3日(木・祝)から公開
5位 わたしは最悪。
オスロで数年にわたって繰り広げられるミレニアル世代の人生を、感動的かつ独創的に描いた作品。ノルウェー人俳優のレナーテ・レインスヴェが主演を務めた。彼女が演じる医学生から作家に転身した「最悪ではない」主人公は、若者時代の不安や混乱を完璧に表現している。
相反する欲望が交錯し、方向性を見失い、感情をむき出しにする瞬間には、限りない親近感を抱かせる。凍てついた街を駆け抜ける彼女の姿は、おそらく今年の映画で最も印象的な瞬間だろう。
タイムアウトレビューでの一言:「死生観への問いを、セックスや社会的気まずさ、仕事上の失敗、投げやりな面白さなど、面白くて生き生きとしたシーンと結びつけることができる映画は、豊かなものだ」
日本では2022年7月1日公開
以下ランク入りした日本映画
12位 竜とそばかすの姫
映画監督の細田守が「美女と野獣」をアニメ風にアレンジした作品。イットガール、悲嘆にくれる高校生、サイバー・ドラゴンがぶつかり合っている。ノリノリの曲、目を見張る美しい映像、そしてアイデアと、デジタルネイティブの生活と、Z世代を助けるために孤独な生活を送る旧世代の人々を描いたこのアニメは、豊かな発想に満ちている。
映画「ハウルの動く城」で監督をクビになり、挫折を味わって以来、日本のアニメーション界の巨匠は大きく成長している。
タイムアウトレビューでの一言:「スタジオジブリとスタジオ地図は、もう同列で語っていいだろう。この作品が絶対的に我々を楽しませてくれる作品であるわけだから」
日本では2022年7月16日公開
15位 偶然と想像
2021年に公開された映画「ドライブ・マイ・カー」で監督の濱口竜介は、欧米のオーディエンスの人気を獲得してブレイク。アカデミー賞で国際長編映画賞を獲得し、作品賞にもノミネートされた。 そんな彼の次の作品が、この「偶然と想像」だ。緩やかにつながった人間関係を描写した、30分ほどのショートストーリー3部作で、波風こそ立たなかったが騒ぎになるだけの価値はある。
作品ごとに女性の異なる視点が表現されているが、それぞれが深い心の痛みと混乱を抱えていて、感情的に危険な方向へ向かう。3つの物語が相まって、魅力的なスローシネマを形成している。
タイムアウトレビューでの一言:「脚本家兼演出家の最大の才能は、一瞬一瞬から強烈な感情を引き出すことだ」
日本では2021年12月17日公開
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