[title]
2022年10月10日、アーティスト活動やパラスポーツの拠点として街のにぎわいを創出する施設「アイルしながわ」が、天王洲アイル駅から徒歩2分の場所にオープンした。同施設は東京都からの移管を受け、「旧東品川清掃作業所」として活用していた行政施設である。20年間ほど清掃事業用途指定を受けていたが解除され、リニューアルして新たな活用が始まった。
外観には、アーティストの吉野ももによる「巡り循る」というダイナミックなアートが描かれている。運河沿いのごみ処理場跡と、埋め立て地から水や土が巡り巡って自然に還ることをイメージしたデザインだ。
「アイルしながわ」という愛称は、公募によって決定した。「アイル」という言葉には、天王洲アイルの「アイル」と、自ら実行に移すことを意味する「I'll」という前向きな響きを掛け合わせているそう。
同施設は「東京2020オリンピック・パラリンピック」のレガシーとして、ブラインドサッカーや車椅子バスケットボールなど、パラスポーツを通じて多様な人が集える場を創出する。また、アーティストの活動の拠点となる場を作り、どんな人々も共生できる地域の核となるような場を目指す。当面は暫定活用する予定で、終了時期は未定だ。
「アートになる島、ハートになる島」がコンセプトとなっている天王洲アイルでは、街のあちこちで公募アーティストの大型壁面アートや立体アートを楽しめる「TENNOZ ART FESTIVAL 2022」が12月31日(土)まで開催中だが、アイルしながわ内にも2022年の受賞作品が点在しているので、ぜひじっくり鑑賞してみてほしい。
同フェスティバルは今年で4回目の開催となり、既存の12作品のほか、新たに8カ所に25作品が追加された。そのうち6点を館内で鑑賞することができる。作品は開催後も展示される予定だ。
館内の中央にあり、キャッチーなグラウンドが目を引く「チームがんばりくん」(岡美咲、奥田琴乃)の作品「playground」は、今年の「審査員賞」に選ばれたアートだ。この施設のキーワードとなっている「スポーツ」をテーマにしながらも、描かれているのはグラウンドとボールのみで、人が介在していない。これは、自分だったら景色の中のどこにいるのか、鑑賞者の想像に委ねるためだという。鑑賞するうち、アートの向こう側と行き来するような面白い感覚に浸れるだろう。
パラスポーツのグラウンドの背景に描かれた、日比谷泰一郎が手がけた「Crowds #Tennoz-Isle」は、天王洲アイルを行き交う群衆を観察しながらドローイングし、カラフルな壁画に再構成したアートだ。あえて抽象的な表現に落とし込むことで、頭の中に思い描く群衆のイメージや顔ぶれが1人ひとり異なり、多様性が感じられる作品となっている。
2022年の受賞作品は館内だけに止まらない。アイルしながわから運河に向かう途中には、植栽プランターをキャンバスに見立て、海をモチーフに描いた作品「Planter aquarium」が見えてくる。津田宙と木下未琴が描いた10個のプランターは歩いていくうちに深海から浅瀬をイメージしたデザインに移り変わっていくので、少しずつ変わる色と絵柄を鑑賞しながら散歩しよう。歩くのがより楽しくなるに違いない。
「最優秀賞」を受賞したアートは、そこから徒歩数分ほどでたどり着く「天王洲ファーストタワー」前にある。発表する場所によって少しずつテイストを変えた作品を制作するアーティスト、フカザワユリコが屋外ダストボックスにネコを描いた作品「金色のネコ」だ。近隣に5点ほど点在している。
同作品は、親しみやすさを重視し、小さな子どもの目線を大切に作ったという。通常は素通りしてしまいがちなダストボックスという存在を再認識させ、ポップなデザインが心豊かな気持ちにさせてくれる。こんなダストボックスの前では、ゴミをポイ捨てするという人もグッと減るのではないだろうか。
寺田倉庫の「テラダ アート コンプレックス」を筆頭にアートエリアとして近年、飛躍的な盛り上がりを見せる天王洲アイル。これを機に訪れて、刺激を受けてみては。
関連記事
『アイルしながわ』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックし