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「食べ物の話はほとんどなかった。トニーは、より良い人間になるための方法を学んでいたんだよ」
世界的に有名なレストラン、Momofukuのシェフであるデイビッド・チャンは、2018年6年に他界したアンソニー・ボーディンについてのドキュメンタリー映画『Roadrunner: A Film About Anthony Bourdain』の予告編でこう語っている。
この作品が描いているのは、不良シェフから『キッチン・コンフィデンシャル』の著者になり、テレビ番組『アンソニー世界を喰らう』や『アンソニー世界を駆ける』を通して世界を飛び回る冒険家、そして信じられないほどの人道主義者になったボーディンの人生。
冒頭で紹介したデイヴィッド・チャンの言葉は、シェフから冒険家へと転身したボーディンの公人としての姿を完璧に表現し、彼の短過ぎる人生を描いたこのドキュメンタリーが、涙腺を刺激する作品であることも示している。
ボーディンは皿の上の味よりも、その料理が食卓までにたどり着くまでに経た道のりに興味を持つシェフであり、食事の時間を人とのつながりの入り口として捉えていた旅人、かつ同世代のなかで間違いなく絶大な影響力を与えたメディア人だった。彼はストーリーテリングに長けていて、その果敢な探求心と人の長所を引き出す能力は、我々のの食、旅、そして相互関係についての考え方、書き方、理解の仕方を完全に変えてしまったといえる。彼は、ストリートフードと高級料理を、世界を解き明かす鍵として同等に見るような人だった。
今作の監督を努めたのは、『ミスター・ロジャースのご近所さんになろう』を手がけ、『バックコーラスの歌姫たち』ではアカデミー賞を受賞したモーガン・ネヴィル。アーカイブ映像やホームビデオに加え、ボーデイン自身の声も交え、深く傷ついた冒険家、父親、ストーリーテラーとして生き、人間としての経験の探求をあまりに早く終えてしまった彼の複雑な物語を紡いでいる。
ほろ苦くもあるこの作品では、ボーディンの親しい友人や家族がインタビューに答えている。登場するのは、デイヴィッド・チャンのほか、元妻のオッタヴィア・ブシア、アーティストのデビッド・チョー、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのフロントマンであるジョシュ・ホーム、『パーツ・アンノウン』の監督であるトム・ヴィタール、そして生きているボーディンを最後に見た長年の友人、エリック・リパートなど。
『Roadrunner: A Film About Anthony Bourdain』は、2021年6月11日(金)にトライベッカ映画祭で初公開された後、7月16日(金)からアメリカで劇場公開される。
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