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「火鍋(フォグゥオ)」とは中国語で鍋の総称。中国系の人々はおしなべて鍋料理が好きなようで、年中温暖な気候を保っている台湾においても例外ではない。食べる時期もオールシーズンで、夏場に「今日は暑いから火鍋に行こうぜ」なんてせりふが当たり前に行き交う。
食いしん坊が集まっている台湾では、大陸から持ち込まれた火鍋がバージョンアップされたり、オリジナルの火鍋も豊富にあったりして、旅行ではとても食べ切れない。まだまだ日本では知られざる鍋が潜んでいるのである。
2023年12月8日に高田馬場でプレオープン、12月18日(月)にグランドオープンを迎える「臺所(たいところ)」では、そんな台湾ならではの火鍋を気軽に味わえる。手がけたのは、新宿駅前で台湾人客が列を作る台湾軽食の名店「合作社」だ。もちろん、期待を裏切らない味に仕上がっている。台湾ではスタンダードな「一人鍋の店」をうたっており、同店でも1人用サイズの鍋で供される(別々の鍋が食べられる2人用もあり)。
場所は高田馬場駅から徒歩1分、飲み屋街のただ中にあるスタイリッシュなビルの3階。周囲の飲み屋の雰囲気と適度に距離を置いた店内は、白を基調とするカフェと見まごうしゃれた造りである。メニューを張り巡らせたような台湾料理店とは一線を画している。
台湾製白タイルを壁面に敷き詰め、表示類の文字も本場であつらえたもの。今の台北辺りの街角の息吹をそのまま持ち込んだかのような明るい異界だ。
鍋は4種類あるが、まず味わうべきは「招牌(ジャオパイ=看板商品)」の「石頭鍋」(1,680円、以下全て税込み、小ぶりなご飯付き)。台湾の代表的な鍋料理で、この火鍋店で街があふれかえった時代もあるという。
作り方が独特だ。鍋にまずごま油を入れて肉を炒める。頃合いを見て特製スープを注ぎ、野菜や具材を投入、煮込んだものを中国醤油ベースのつけだれで味わうというもの。炒めた肉を鍋のスープのだしに利用するのがミソで、香ばしいごま油と相まって、普通の鍋とはひと味違ったコクが生まれる。
そのほかに3種類ある鍋は、主役となる素材にそれぞれ特徴がある。「焼酎鶏鍋」(1,980円)は台湾定番の料理酒、米酒(ミィジゥ=米焼酎)を鍋に投入。煮詰みつつ、火を付けアルコール分を飛ばし、鶏肉と具材諸々を加え、鍋を調える。
かすかなほろ苦さとほんのりした甘味が魅力の大人味。こと寒い時期にはもってこいで、体の温まる一品だ。
「沙茶白菜鍋」(1,680円)も台湾の定番調味料、沙茶酱(サーチャージャン)を使った鍋。沙茶酱とはニンニク、エシャロット、唐辛子、干しエビなどを加えた甘辛い調味料である。炒めものなどにもよく使われており、調味料に加えられたさまざまな食材が、独特のコクと風合いを生み出す。
「剝皮辣椒鍋」(1,980円)は、前もって説明がないと手を出しにくい鍋といえるだろう。なにせ、オクラサイズの「剝皮辣椒(ポーピーラージャオ=青唐辛子の漬物)」が主役の鍋なのだ。鍋に丸ごと浮いている唐辛子のビジュアルは、いかにも激辛チックだが、辛さはほぼない。具材としておいしい上に、むしろまろやかなうまみを生み出している。さっぱりした味わいがクセになるので、ぜひ試してみてほしい。
いずれの鍋も天然素材にこだわり、化学調味料不使用(締めの台湾インスタント麺には含まれる)。それゆえ胃もたれ感はなく、品のいい味に仕上がっている。
どの鍋も、下準備は店の台湾人スタッフが行う。あとはそれぞれの客が具材を投入して好きに食べるという方式である。具材は、4種とも共通で、追加もできる。スライスしたばかりの牛肉、豚、チキン、ラム、野菜類に加え、台湾式つみれの貢丸(ゴンワン)、タロ芋団子の芋頭丸(ユートウワン)、鮮度抜群の鴨血(ヤーシェ)、モチモチの米血(ミィシェ)など、台湾通なら名前を聞いただけで頬が緩む品々も豊富に取り揃える。
鍋とは別に「合作社」でも評判の、甜不辣(ティエンブラ=練り物を揚げた天ぷら)」「鹽酥雞(イエンスージー=鶏の唐揚げ)」といった本場式の一品ものも用意。「古早味紅茶(甘い紅茶)」や「梅の台湾緑茶割り」なども楽しく、品揃えに隙がない。
まずは一人で昼から攻めてみよう。味も店の造りも、ありがちな観光地的趣向から一歩飛び出した、「ガチ」な台湾を味わえるだろう。
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