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新作102点を一挙公開「横尾忠則 寒山百得」展が開幕

「寒山拾得」を変幻自在の画風とモチーフでパワフルに描く

Mari Hiratsuka
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横尾忠則 寒山百得
Photo: Kisa Toyoshima「横尾忠則 寒山百得」展; Tadanori Yokoo: 100 Takes on Hanshan and Shide
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上野の「東京国立博物館 表慶館」で、「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)」展がスタートした。同館で現存作家の個展を開催するのは史上初。横尾が本展のために描き上げた新作102点が公開されている。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima「横尾忠則 寒山百得」展

横尾忠則は、1936年兵庫県西脇市生まれ。高校卒業後、神戸でグラフィックデザイナーとして勤務した後、上京。唐十郎や寺山修司らの舞台ポスターを数多く手がけ、日本宣伝美術会(日宣美)に出展・受賞を重ねて、グラフィックデザイナー、イラストレーターとして脚光を浴びる。1980年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で観た大規模なピカソ展をきっかけに「画家宣言」を発表。さまざまな手法と様式を駆使し、多様なテーマを描き続け、国際的にも高く評価されている。

「寒山拾得図」をモチーフに描く新シリーズ

本展で横尾がモチーフにした「寒山拾得(かんざんじっとく)」とは、中国の唐代に生きたとされる、2人の伝説的な詩僧(しそう)のこと。寒山は手に巻物を、拾得はほうきを持ち、俗世を離れたその姿やふるまいは禅宗における悟りの境地「風狂(ふうきょう)」を体現する存在である。また、中国の知識階級である文人たちが憧れ、古来より美術や文学の主題となってきた。

今回、表慶館に隣接する本館では、特集「東京国立博物館の寒山拾得図」が開催され、国宝や重要文化財などの作品群が展示されている(本展のチケットで無料で鑑賞可能)。数百年にわたる寒山拾得図の変遷を先に知り、横尾作品の世界を楽しむと、そのユニークさがより体感できるかもしれない。

河鍋暁斎「豊干禅師」
Photo:Kisa Toyoshima本館特別 1室 河鍋暁斎「豊干禅師」

横尾は、森鷗外が寒山拾得をテーマに著した短編を読んで興味を持ち、2019年から独自に解釈した絵画を2019年から制作を始めた。2020年に国立新美術館で開催された展示では、曾我蕭白(そが・しょうはく)の寒山拾得図をモチーフに「寒山拾得2020」を発表。2021年の大規模個展でも新作を発表している。 その後、2021年9月から2023年2月末までのわずか1年半、そして会期直前の6月末に完成した作品も加え、102点もの新作を描き上げたのだ。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima展示風景

横尾が感じ描いた「今」から私たちが受け取るもの

展示室内に並ぶ作品は、ほとんどがF100号(162x130センチ)もしくはF150号(227.3×181.8センチ)と大型のキャンバスに描かれている。四方から絵画が迫ってくるような、大迫力の空間に圧倒されるだろう。

作品は全てアクリルケースなどのカバーがなく、すぐ間近でその筆跡や絵具の重なりを鑑賞できる。現代作家の新作展示という、非常に貴重な機会ならではだ。印象派やキュビズムのような技法に、ゴッホやマネ、モネの作品を想起させる画題と、時代もテーマも変幻自在である。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima横尾忠則 寒山百得

作品名として描いた日付がつけられ、ほぼ時系列で並んでいる。その時々の世の中の話題やニュース、横尾が関心を持っていたテーマの変遷が見てとれて、とても興味深い。と同時に、現在86歳の横尾が1年半の長きにわたり、数日おきにこの大型作品を描き続けていた、という事実にも非常に驚かされた。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima横尾忠則 寒山百得

展示室には、横尾が2022年に発表した小説「原郷の森」から引用した一節が掲げられているものの、横尾の意向で、作品を解説するテキストは一切ない。作品や展示全体に身を置き、自由に感じ、考えてみてほしい。

展覧会限定グッズも多数登場

館内に設けられた特設ショップでは、公式図録のほか、本展のために企画・制作された貴重なグッズが多数販売されている。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshimaグッズ売り場

多くの作品に登場したトイレットペーパーや、「BEAMS」とコラボレーションしたブランケット、「HOiSUM」の靴下、作品が全面にプリントされA4サイズが収納できるフラットトートなど、ファンにはたまらないアイテムが並んでいる。「横尾忠則 寒山百得展」は、東京国立博物館・表慶館で、12月3日(日)まで開催。

横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima
横尾忠則 寒山百得
Photo:Kisa Toyoshima

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