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人気アーティストの都内初個展「鈴木康広展 ただ今、発見しています。」が二子玉川ライズで開催中

『ファスナーの船』から『まばたきの葉』まで、夏休みにぴったりの展覧会

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa会場風景
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夏休みに子どもと訪れるのにぴったりの展覧会が、2024年7月20日から「二子玉川ライズ スタジオ & ホール」で開催されている。航行する船が水面に残していく航跡を、ファスナーの金具がスライドして布を開いていく様子に見立てた作品『ファスナーの船』などで高い人気を集めるアーティスト・鈴木康広による都内初の個展「鈴木康広展 ただ今、発見しています。」(主催:Bunkamura)だ。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『イメージの虫眼鏡:ファスナーの船』(2004年〜/2024年)

1979年生まれの鈴木は、2001年に東京造形大学デザイン学科を卒業する。同年、NHKの作品投稿番組「デジタル・スタジアム」に応募した作品『遊具の透視法』がグランプリを受賞すると、その発想の新鮮さが話題となった。夜の公園にたたずむ球体の回転ジャングルジムに、子どもたちが遊んでいる昼間の映像を投影した同作は、回転している時だけ残像現象により遊具がスクリーンと化し、不思議な光景を生み出す作品だ。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『日本列島の地球』(2022年、左)と『上/下』(1997年)

本展でも、「上」という漢字を裏側から見ると「下」に見えるという素朴な発見から生まれた『上/下』や、表裏にそれぞれ開いた眼と閉じた眼がプリントされた葉形の紙を落下させ、空中でくるくると回転して「瞬き」をしているように見せる『まばたきの葉』など、日常に埋もれる認知の不意を突いて爽やかな驚きをもたらす作品が多数並ぶ。同時に、思わず「クスッ」と笑ってしまうような親しげな作風も、鈴木の大きな特徴と言えよう。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『まばたきの葉』(2003年)

1フロアで構成される展示会場の中央に横たわるのは、鈴木の代表作の一つである巨大な『空気の人』だ。輪郭を成す素材の重さが、内部を満たすガスの浮力とちょうど釣り合うように調整された別の『空気の人』も、会場空間の上方で浮遊しているので併せて楽しんでほしい。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『空気の人』(2007年ほか)

そのほか、鈴木のトレードマーク的な『りんごのけん玉』をはじめ、水中で逆さに向けられた天秤(てんびん)が重さではなく「軽さ」を量る『軽さを測る天秤』、判子(はんこ)そのものと押された痕跡である印影との時間・空間的なズレに着目した『ここ/そこ』、水滴が作り出す波紋を木の年輪に見立てた『水の切り株』など、持ち前の独特な視点を楽しめる作品がめじろ押しだ。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『軽さを測る天秤』(2017年)
鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『りんごのけん玉』(2003年)

鈴木自身の筆跡によるコメントが、会場の床など至る所に掲示されていることにも注目したい。足の形を模したメモたちを追いかけるように読めば、まるで鈴木の思考の足跡をたどるような気持ちになるだろう。作品以前の、脳内のみにあるユニークな発想をビジュアライズするべく描かれたスケッチが面白く、スケッチを中心にした作品集も刊行されている鈴木だが、本展の会場を飾る足跡メモもそれに劣らず豊かな連想を与えてくれる。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『足元の展望台』(2014年)に乗る鈴木
鈴木康広展 ただ今、発見しています。
会場風景

駅にある券売機の音声「ただ今、発券しています」を「発見しています」と取り違えたことから名付けられた本展では、新作として『小さな発見機』が世界初公開されている。実際に400円分の硬貨を投入することで、鈴木による作品スケッチがその瞬間の時間とともに記載されたチケットを手に入れることができる体験型の作品だ。

鈴木康広展 ただ今、発見しています。
Photo: Keisuke Tanigawa『小さな発見機』(2024年)

本展の入場料は1,000円、学生700円、小学生は500円。会期は9月1日(日)までなので、夏休みの自由研究のヒントを探すのにもうってつけだろう。話題アーティストの新鮮な視点を楽しんでほしい。

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