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2022年11月1日、間もなく創業100年を迎える「築地玉寿司」が、創業の地「築地玉寿司 築地本店」の2階に完全予約制の新店「鮨 本店上ル」をオープンした。
「鮨 本店上ル」は、首都圏を中心に札幌・名古屋含めた31店舗を展開する「築地玉寿司」の2代目店主・中野里ことをイメージした新業態だ。ことは、東京大空襲で店を焼失するも戦後の焼け野原から再建し、まもなく100年を迎える「築地玉寿司」の礎を築いた女性。これまで宴会場として使われていた「築地玉寿司 築地本店」の2階を、「築地玉寿司」の原点とも呼ぶべき「ことの思い」が詰まった、カウンター19席の寿司店にリニューアルした。
また同店では、男性の職人は頭を丸めている。これは、「鮨 本店上ル」ならではの特徴だ。
初代店主の思いを胸に焼け跡から復興
「築地玉寿司」の前身である「玉寿司」は、初代・中野里栄蔵が1924(大正13)年に創業。順調に繁盛するが、終戦の年の1945(昭和20)年、栄蔵は病気の末に息を引き取った。さらにその年の3月には東京大空襲に見舞われ、店も住居も焼失するが、戦後、妻のことが「玉寿司」を引き継いだ。栄蔵の最期の言葉「玉寿司を頼む」という想い胸に、2代目として再建を強く決意。4人の子どもを抱えながらの再建は苦難の連続だったが、1965(昭和40)年に3代目・孝正に受け継ぐまで気丈にのれんを守り続けた。
「鮨 本店上ル」には、ことの思いを大切に受け継ごうという思いが込められている。内装は、ことが活躍した戦後の寿司店をイメージし、高級寿司店の代名詞にもなっている白木の一枚板はあえて使わず、カウンターにはラフな木材を使用。どこか懐かしく、温かみのある雰囲気の店舗に仕上げた。
メニューは、「店主おまかせ極みコース」(1万6,500円、
シャリには「築地玉寿司」のほかの店舗でも使っている横井醸造の赤酢に、希少なブランドすし酢である「與兵衛」をブレンドし、「鮨 本店上ル」のみで使われるすし酢を作った。マグロの漬けや煮穴子、小肌といった代表的な江戸前にぎりを、「白子すり流し」「鮑お造り」など、厳選素材にひと手間を加えた一品料理とともに提供する。
「もったいない」を生かしたつまみ
冷蔵庫もなかった時代の生活の知恵である「発酵」に着目し、自家製の自然発酵調味料「醤(ひしお)」を使用した料理を提供するのも同店の特徴だ。「卵黄醤漬け」は、鮮やかな黄身色と豊かなコクがある「茜美人」の卵黄をシャリに乗せ、海苔で巻いて味わう。「鮑お造り」は、肝と醤を和えた醤油を添えて提供。穂紫蘇との相性も良く、すぐにでも日本酒の追加オーダーがしたくなる。
箸休めには、「もったいない」が口癖だった2代目の精神を受け継ぎ、魚の骨、皮や通常使われない部位を使っておいしく仕立てたつまみの提供も予定。デザートは、戦後の混乱期に店で販売していた手作りの干し芋を現代風にアレンジしたものを用意している。
銀座の寿司屋でお任せを食すのはなかなか勇気がいるが、ほんの少し歩けば、明朗会計かつリーズナブルに質の高い寿司が楽しめる。覚えておいて損はない一軒だ。
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