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六本木から鴨川へ、スーパー・デラックスの軌跡

代表のマイク・クベックにインタビュー

テキスト:
Kosuke Hori
Editorial Assistant
鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE
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唯一無二の文化拠点として機能していた六本木「スーパー・デラックス」。ビルの老朽化で2019年に閉店した際は、カッティングエッジなミュージックラバーたちからの惜しむ声が相次いでいたのを記憶している。3年という歳月を経て千葉は鴨川という土地へ移転し、「鴨川 スーパーナチュラルデラックス」としてリスタートを切ったのはなぜか。

2022年12月17日(土)〜18日(日)、国内外のアーティストが出演する2Daysイベント「SuperDeluxe presents: SupernaturalDeluxe Vol.3」を開催するに当たって、スーパー・デラックス代表のマイク・クベックにメールインタビューを行った。これから足を運ぶ人の参考になれば幸いだ。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
画像提供:鴨川 スーパーナチュラルデラックス

ー六本木から鴨川に移転するまでに3年という時間を要したのはなぜでしょうか?

2019年、スーパー・デラックスの閉店後、移転してすぐに活動を続けることは最初から考えていなかったです。2002年から17年間、国内外の素晴らしいアーティストにたくさん出会って一緒に仕事ができ、おかげさまで新しい体験もいろいろできました。移転するならアーティスト、お客さん、自分にとって別の新しいディメンションを探れる場所にしたいと思っていたので、閉店後の約1年間はその可能性を感じる場所を探していたのです。

2019年末に南房総方面に絞っていましたが、再稼働したいと思っていても世の中はなかなかそれが許されない状況でした。2020〜2021年はとても不思議な2年間で、ある意味大きなブランクだったと感じます。コロナ禍や大家さんの事情などいろいろあったので、活動開始までかなり時間がかかりました。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
画像提供:鴨川 スーパーナチュラルデラックス

ー初コンサートはジム・オルークと石橋英子でした。特にジム・オルークは六本木時代にもよく出演していたように思います。この2人にこけら落としをお願いすると決めていたのでしょうか?

ジムさんも英子さんも、以前からスーパー・デラックスで本当にさまざまな形で出演していただきました。閉店後の3年間は世の中のニュースやSNSなどは無視して、イベントやコンサートにもほとんど行かなかったのですが、ジムさんと英子さんとはその間も連絡を取り合っていました。

しかし、なかなかお会いできるチャンスがなかったので、スケジュールさえ合えば、スーパーナチュラルデラックスで最初に演奏していただきたいと思っていました。新しい環境を一早く体験してほしかったし、それについての率直な意見も聞きたかったのです。幸いなことにとても気に入っていただき、9月の初コンサートの直後に12月17日、18日の「SupernaturalDeluxe Vol.3」への出演が決まりました。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE

ー六本木時代から共通して、アンビエントやエクスペリメンタル、即興演奏などの傾向は続くのでしょうか?

以前からもそうですが、新しい表現・体験との出合いを大切にしたいので、方向性を特に決めているというわけではないのですが、そういうジャンルは相変わらず好きですね。せっかく造り酒屋だった登録有形文化財の建物を貸していただいているので、その特徴を生かしていろいろな人々にさまざまな形での交流ができる場所になったらうれしいと思っています。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE

ー都内からのアクセスや集客もあるとは思うのですが、今後は平日にもイベントを行う予定はあるのでしょうか?

スーパーナチュラルデラックスは「亀田病院」と「鴨川シーワールド」の近くに位置し、都内からのアクセスは意外と悪くないです。公共機関での日帰りも可能ですし、会場から徒歩10分に東京直通の高速バス乗り場があり、コンサートの終演時間も都内まで帰れるように設定しています。今後は音楽以外のイベントも開催する予定ですし、内容によっては平日の開催も考えられますね。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE

ー地元のアーティストとのコラボレーションの予定はあるのでしょうか? 南房総独自の音楽シーンなどがあれば教えてください。

ちょうどコロナ禍が始まる前に南房総に移住してそろそろ3年になりますが、長い自粛生活の間、地元のアーティストや音楽シーンとはまだそれほど交流できていません。音楽に限らず、地元と都会、そして海外とさまざまなコラボレーションを実現したいと考えています。以前からお世話になっているたくさんのアーティストの方々にも、ぜひ鴨川に来ていただきたいです。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE

ー「完成は数年先となるワークインプログレス」と書かれていますが、どのような場所になっていくことを期待していますか? また、別店舗も並行して出店するなどの今後の展望をお聞かせください。

スーパーナチュラルデラックスは、スーパー・デラックスとパーマカルチャーAWAの共同計画です。音楽や舞台芸術などの表現は人間にとってとても大切な要素だと思っているので、コンサートやイベントはこれからも継続していきますが、エンターテインメントだけではなく、観賞、体験、教育も提供できる場所にしたいという目標に向かって運用を考えています。

その目標を実現するためのプロセスをワークショップなどで公開することによって、共感してくれた方々が各自のスタイルでそれぞれの地域に合った形で運営を実行するきっかけになったらうれしいです。

鴨川 スーパーナチュラルデラックス
Photo: TSUYOSHI KAMAIKE

コロナ禍を経て、私たちの生活は大きく変わった。特に音楽に関しては、ここ数年の打撃を受けて、エクスペリメンタルなラインアップを揃えたいわゆる攻めたイベントがなかなかやりづらくなったように思う。そんな今こそ、スーパーナチュラルデラックスのような場が必要なのだろう。東京からもほど近い鴨川に足を運んで、新たな表現に出合ってみては。

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