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寒さに震えるぐらいなら南国へ脱出、欧州のバカンスは夏から冬へ

2023トラベルトレンド:光熱費高騰やオーバーツーリズムが牽引する新しい旅のスタイル

Grace Beard
テキスト:
Grace Beard
翻訳::
Time Out Tokyo Editors
Winter travel design
Photograph: Time Out/Shutterstock
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2022年の夏の旅は本当に混沌(こんとん)としていた。パンデミックによる人員削減で航空会社や空港の人員が大幅に不足し、夏休みのラッシュに対応できなかったため、旅行者は空港で果てしない行列に直面。目的地の空港に到着できたとしても、多くの人々はロストバゲージで足止めされ、ようやくたどり着いたビーチや観光地は混雑に見舞われていたということは珍しくなかった。

さらに追い打ちをかけるように 、去年の夏は気候変動に関連した自然災害が続発。ヨーロッパと北アメリカ全域で記録的な干ばつと熱波が起こり、観光地を含む多くの地域で山火事が発生。ヨーロッパの山火事では、2万人以上の死者が出た。

夏の旅行はストレスが多く、不快で、時には危険な目にも遭う。なぜ我々は6月から9月にかけて、予約でいっぱいの格安航空会社のフライトに自ら乗り込むことを続けてしまうのだろうか。

冬は新しい夏

ただ、そうした状況は少しは変わりつつある。夏の気温が壊滅的なレベルまで上昇し続ける中、寒い時期に太陽を求め、ピークシーズンの混雑を避けようとする人々が増えている。基本的には旅行できるのは夏だけという、幼い子どものいる家族でさえ、ほかの選択肢を考えているようだ。

ロンドンに住む美容師で2児の母であるキャサリンもその一人。「これまでは、旅行は学校の夏休みにする必要がありました。でも、パンデミック規制が解除されてからは、完全にカオス状態。だから、今年の休暇はクリスマスにしようとすでに計画しているんです」

トリップアドバイザーのレポートによると、世界の旅行者の3分の2以上が、この冬に旅行を計画しているとのことだ。同社の広報担当者、スカイ・ファーガソンは、次のように解説する。

「2022年12月から2023年2月の旅行計画で最も急増した目的地を見ると、冬の太陽を求めてヨーロッパから脱出するイギリス人の数が明らかに増えています。急成長している上位15都市は全てイギリスから飛行機で7時間以上の距離にあり、そのうち9都市は東南アジアです。ベトナムがマレーシア、タイ、フィリピンと並んで、イギリス人旅行者に絶大な人気を誇っています」

「冬眠ホリデー」が人気

人々は冬に長距離の旅先を選ぶだけでなく、長期間の旅行に出かけるようになっているようだ。英国旅行業協会(ABTA)によるレポート「Travel in 2023」では、2023年の旅行における主要トレンドの一つとして「冬眠旅行」を挙げており、Jet2holidaysやTUIなどの旅行会社では、冬の長期休暇を予約するイギリス人旅行者が、パンデミック前と比較して増加するだろうと予測している。

長期滞在には節約の要素もある。十分安い宿泊施設があれば、遠く離れたビーチで2週間ほど過ごすのも、高騰する暖房費を節約する一つの方法といえるだろう。新年が明けるまで待てば、さらに安くなる。「もし、ホリデーシーズンの休暇を我慢して旅行ができるのなら、1月第1週目に出発する長距離便の運賃はかなり下がる傾向にあります」とKAYAK UKのカントリーマネジャー、エヴァン・デイは教えてくれた。

長い間、賢い旅行者は「ショルダーシーズン」呼ばれる春と秋、特に3月、4月と9月、10月に海外へ行くことを好んできた。しかし、冬に遠くへ出かけることは、通常夏に旅行する人々にとって、ますます人気のある選択肢になりつつあるといえる。

オーバーツーリズムの軽減

そして、冬の旅行が増えることにはもう一つ、「オーバーツーリズムの軽減」という潜在的なメリットがある。この問題は近年、地域社会を破壊し、自然に壊滅的な影響を及ぼしている。夏の間、大量の観光客がどっと押し寄せる人気観光地はその対策に必死だ。

2022年、イタリアではアマルフィ海岸で6月から9月までの間、車の乗り入れに新たな規制が設けらた。南フランスでは、夏場に過密する観光客による国立公園の生態系へのダメージを防ぐため、マルセイユで人気の2カ所の入り江で、訪問者数を大幅に減らすための上限を設けた。

2018年、タイでは最も人気のあるビーチの一つであるマヤベイへのアクセスを無期限に停止せざるを得えない状況が発生。2022年にビーチは再開したものの、同国は手に負えない観光客や大人数のグループを取り締まると報じられている。

観光客を一年の中で均等に分散させることは、オーバーツーリズムの問題に取り組む一つの方法であり、年間を通して地元の観光経済を活性化させることにもつながるかもしれない。

我々は皆、夏の旅行が好きだ。しかし、2022年夏の旅行シーズンには悲惨な経験をした。さらに致命的な熱波は悪化するという予測も出ている。そろそろ「何のためにコストをかけるのか?」を自問した方がいいかもしれない。

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