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創業136年、福岡の老舗家具メーカー「杉工場」が神楽坂にショールームを開店

「当たり前にそこにあるもの」を追求、かつて使われていた家具の復刻も手がける

編集:
Genya Aoki
寄稿::
Michikusa Okutani
杉工場
Photo: Michikusa Okuno店を営む杉明乃(左)、良子(右)
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神楽坂上の知る人ぞ知るモダン古民家「一水寮」。登録有形文化財である建物を中心に、コアなショップやギャラリーが潜む注目のエリアに2022年11月25日、新たな店が加わった。家具メーカー「杉工場」のショールームだ。

同社は1886(明治19)年、福岡県うきは市吉井町で創業、たんすなどの家具作りから始まり、学校の生徒用机、椅子、跳び箱などの備品を手がけて全国へ納品するようになった老舗である。

こども ビームス」のオリジナルデスクの製作など勉強机で知られているが、家庭用の机、本棚、椅子といったそのほかの製品も取り扱っている。「こどもから、大人になっても、それでも あたりまえに、そこにあるもの」を理念とし、どの品も自社工場で一括生産、天然木の肌合いを生かし、木とじかに触れ合えるよう、ウレタン塗装などはせずにオイル仕上げ(自然塗装)が基本。さらに金具類を極力排すことで耐久性を高めたり、香りが良く防虫効果のあるヒノキを引き戸の中に使ったりしている。見えない部分にまで職人技が込められた一生ものばかりだ。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno

定番商品は、いずれも郷愁感と若々しい創造性が巧みに同居している。必要とあればサイズや数が自由に揃えられるのも魅力だ。使い込んだ時の経年変化も楽しい。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno

こういった家具の魅力は、実際に触れたり座ってみなければ伝わらない部分が多い。杉工場が東京にショールームを持つに至った理由もそこにある。「杉工場 神楽坂店」があるのは、一水寮の裏手にある元アパートをリノベーションした「柿の木荘」の1階。東京進出を考えていた折、タイミングが合って「ご縁」とばかりに決断した。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno店を営む杉明乃(左)、良子(右)

ショールームを営むのは杉良子・明乃の母娘。青山なども検討したが、神楽坂の同地は、吉井町をほうふつさせるような落ち着いた雰囲気がいいという。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno吉井町の工場の土と一水寮の庭の土を合わせた土壁

内装と庭は、同郷のアーティストである杉謙太郎によるもの。店内はニュートラルな土間スペースと、生活感のある板の間スペースに分かれ、家具を異なった目線で吟味できる。入り口正面で目を惹くひび割れた土壁は、本社のある吉井町の工場の土と一水寮の庭の土を合わせたもの。この地に根を張ろうという決意がうかがえる。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno「復刻」シリーズの丸いす

同店で注目してほしいのは、かつて身の回りで使われていた家具の「復刻」シリーズ。杉工場の食堂で使われていた丸いす「食堂椅子-ナラ」(1万7,600円、以下全て税込み)や、福岡名物の屋台で使われる横長の腰かけ「屋台椅子-ヒノキ」(2万8,600円)などを復刻したものが並ぶ。当時の背景を探り、材や仕上げを分析検証。数ミリ単位の繊細な調整を繰り返して誕生した椅子は見た目も美しく、洗練された存在感がある。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno折りたたみ式作業用テーブル

新作家具も多いが、やはり懐かしい手触りを残すものが多い。テーブル幅を広げることができる折りたたみ式作業用テーブルなどもその一つ。メカニックな構造と木製の温もりが独特の風合いを生み出しているだけでなく、軽量化にも成功している。

杉工場
Photo: Michikusa Okuno

商品はその場で持ち帰れず、注文後、早くて数日で吉井町の工場から届けられる。さらに、全ての商品はより持ち主が使いやすいように微調節ができるのもうれしい。

「一生ものですから何度でも足を運んで、ゆっくり納得のいく家具選びをしてください」と店主の杉は来店を促す。神楽坂散策の折はもちろん、家具やアンティーク好きならぜひ足を運んでみてほしい。

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