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大阪がアート一色に、「Study 大阪関西国際芸術祭」を見逃せない5つの理由

世界最大級のアートフェスティバル開催に向けてのプレイベント

編集:
Genya Aoki
テキスト::
Yoko Fukushima
「Study 大阪関西国際芸術祭」
落合陽一『Re-Digitalization of Waves』(c)Yoichi Ochiai
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「食い倒れの街」と称されるように、食文化の都として名高い大阪。「芸術の街」のイメージは希薄だが、今まさに国際芸術都市へ変容を遂げようとしている。

2025年には日本国際博覧会(大阪・関西万博)を控える大阪府と大阪市は、2800万人の来場者を見込むこのイベントを一過性で終わらせるつもりはない。次なるステップとして、ソーシャルインパクト(文化芸術経済活性化や社会課題の顕在化、SDGs など)をテーマとした、世界最大級のアートフェスティバル『大阪関西国際芸術祭(仮)』の開催を目指している。

その実現可能性を「STUDYする」イベントとして、2022年1月28日(金)~ 2月13日(日)の17日間、アートを生かした社会問題の解決に取り組む社会的企業、アートローグの主催で『Study:大阪関西国際芸術祭』が開催される。一体どのようなイベントなのか。ここでは、同芸術で体験するべき特徴的な5つのポイントを紹介しよう。

1.  大阪の「キタ」から「ミナミ」までアートで巡る

『Study:大阪関西国際芸術祭』
kioku手芸館「たんす」(画像提供:アートローグ)

同イベントは、市内6カ所で開かれる芸術祭だ。会場は、大阪の玄関口である大阪駅直結のグランフロント大阪の北館1階ナレッジプラザ、うめきた広場、うめきたSHIPホール、商人の街として栄えてきた本町、船場エリアの船場エクセルビル、ドヤ街としても有名な西成地区の釜ヶ崎芸術大学とkioku手芸館「たんす」で、大阪の街を南北にまたがっている。

アートを巡りながら、洗練された都市空間の「キタ」、庶民のエネルギーあふれる「ミナミ」の魅力に触れるよい機会にもなるだろう。メトロに乗って縦断し、大阪の多様性を感じてみてほしい。

2.  一流の大作に圧倒される

参加する19組のアーティストは、国際的な活動に注目が集まるメディアアーティストからアカデミックなキャリアを持つ研究者、今をときめく気鋭の才能まで、多彩な顔ぶれが集結。どの作品も見応えがあるが、ここでは、特に存在感を放つ作品に注目してみたい。

「Study 大阪関西国際芸術祭」
奥中章人『INTER-WORLD/SPHERE: Cocooner (インターワールド/スフィア:コクーナー)』 (画像提供:アートローグ)

うめきた広場に鎮座するのは、奥中章人(おくなか・あきひと)が手がけた約10メートルの巨大彫刻、虹彩に輝く楕円(だえん)球型の風船作品『INTER-WORLD/SPHERE: Cocooner 』だ。光の状態や見る角度で、色合いの変化が体験できる。風が吹くと空気の流れに反応して作品全体が揺れ動くのは、野外アートならではの醍醐味(だいごみ)だろう。

「Study 大阪関西国際芸術祭」
落合陽一『Re-Digitalization of Waves』(c)Yoichi Ochiai

船場エクセルビルでは、新進気鋭のメディアアーティスト落合陽一がデジタルと物質化の輪廻(りんね)転生を表現した『Re-Digitalization of Waves』を展示している。3Dデータから彫刻が制作され、その彫刻を動きのあるNFTに再デジタル化するという新しいアートのスタイルである。ぜひ自分の体で体験してほしい。

3. 「ソーシャルグッド」をアートから考える

「Study 大阪関西国際芸術祭」
ウーカシュ・スロヴィエツ『ヤコブの階段』2020年

この芸術祭の会場の一つである釜ヶ崎芸術大学は、「町の学校」として地域の人々をアートでつなげてきた。社会から孤立している人たちに寄り添い、コミュニティーを築き上げてきたウーカシュ・スロヴィエツが描く『ヤコブの階段』は、コロナ禍で観光客が途絶えたクラクフの宿泊施設にホームレスの人々を招き入れたというプロジェクトアートだ。新たな「平等な世界」へのヒントが広がっているかもしれない。

「Study 大阪関西国際芸術祭」
淀川テクニック『真庭のシシ』(©︎淀川テクニック Courtesy of YUKARI ART)

グランフロント大阪では、地域の一般家庭から排出されたゴミが「巨大なイノシシ」の形を成した『真庭のシシ』を展示している。作者は、淀川の河川敷を拠点に漂流物やゴミでさまざまな造形物を作り出すアーティスト、淀川テクニックだ。岡山県真庭市からの依頼で制作し、作品の色彩はSDGsをイメージしている。

社会問題とアートは、今や切っても切り離せない。作品が放つ警鐘と未来への可能性をぜひ感じとってみてほしい。

4. 好きなアートを独り占めできる

「Study 大阪関西国際芸術祭」
アートフェア会場 イメージパース(画像提供:アートローグ)

同イベントでは、芸術祭の正式プログラムとしては国内初となる「アートフェア」を実施する。これはさまざまなアートギャラリーが一同に集まり、作品を展示販売する催しだ。

日本で現代美術の基盤となる潮流を創出してきた小山登美夫ギャラリーのようなトップギャラリーから、アール・ブリュットの団体など20の個性豊かなギャラリーが出展する。芸術祭の新たな資金調達の試みとして、芸術祭に参加しているアーティストの作品の一部を購入できる。

「アートフェア」は多くの人が体験できるように、人の行き来の多いグランフロント大阪のナレッジプラザで開催。気取らない空間の中で、お気に入りの一枚を探してみよう。

5. 話題にしたい「問い」が並ぶ

「Study 大阪関西国際芸術祭」
『大阪関西国際芸術祭(仮)』全14種類のチラシ

この芸術祭では「アート×ヒト×社会の関係をSTUDYする芸術祭」をテーマに、『大阪関西国際芸術祭(仮)』に向け、アーティストやギャラリー、企業団体などの集合知を用いて、開催の意義や実現可能性にとどまらず、人や社会とアートとの関係性などをオムニバス的に模索していく。

このテーマに呼応する14の問いを記したポスターとチラシが、大阪メトロの駅108カ所に掲示されている。問いを立てたのは、アートディレクターの後智仁(うしろ・ともひと)とコピーライターの斉藤賢司のクリエーターコンビ。一見シンプルな問いに見えるが、思わずじっくり考えてしまうような奥深さを感じさせる。     

これらの問いをぜひ、生活の中でも話題にしてみてほしい。いつの間にか観賞者ではなく、参加者の目線で芸術祭を楽しめるだろう。

また、大阪では2月2日(水)、構想から40年をかけた一大プロジェクトである大阪中之島美術館が開館する。グランフロント大阪では『サンワカンパニー アートアワード(sanwacompany Art Award)』のグランプリ展、さらに周辺のギャラリーが同時に展覧会を行う『フェスタアート』など、これからの大阪の街はアート一色に染まる。

アートの楽しみを凝縮させた『Study:大阪関西国際芸術祭』で、新しいアートとの関わり方を発見するのもよし、アートを通して新たに大阪の魅力に気付くのもよし。まずは足を運んでみよう。

Study:大阪関西国際芸術祭の詳細はこちら

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