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目を閉じて想像してみよう。ゴージャスな高層ビルが立ち並ぶニューヨークで空を見上げると、そこには花がある。しかも、ハトがくちばしにくわえている一輪の花ではなく、ビルに根を張り、数階分の高さを垂直に成長する本物の植物だ。
ブルックリンを拠点とする建築家、Studio Vuralのセリム・ブーラルが、そうした未来のニューヨークの一風景を思わせるコンセプトデザインを発表した。そこには、花に覆われた21階建て高層ビルが立っている。
このコンセプトのインスピレーションは、ブーラル自身が野菜や果物、花を育てている約92平方メートルの屋上庭園。彼は気に入っている都会の花である、ユリを主役にした大規模な「グリーンビル」を建設したいと考え、完成したデザインにを「Lilly(ユリの意)」と名付けた。
自身の屋上庭園で素晴らしいアクセントになっているユリについて、ブーラルは次のように説明する。「ユリはとても回復力があり丈夫。増殖をする植物で、庭に球根がどんどん広がります」
ブーラルは、アーバンガーデナーとして鳥や虫に餌をやり、植物に汚染された都市の炭素を吸収させながら、ブルックリンの自然生態系の一部となったことを実感してきた。その結果、Lillyが誕生。ブライアント・パークに影を落とす複合高層ビルのこのレンダリング画像は、単なる概念的なものではないのだ。
ブーラルは「実現は可能」と強調する。ニューヨークにはすでに、地熱やソーラーパネル、屋上緑化を取り入れているビルがいくつかある。例えば屋内競技場のバークレイズ・センターを覆うのは、セダムというメンテナンスのいらない植物。競技場に美しさと環境的な恩恵を同時にもたらすことに成功している。
ブルックリンで最も交通量の多い交差点にあるバークレイズ・
彼は「このような垂直の壁をあまり見かけない最大の理由の一つは、メンテナンス、水やり、そして寒さ」と分析。同時に、かんがい技術があればメンテナンスや水やりの手間は省くことができると主張する。
垂直の壁のような環境に適しているのが、冬を越すだけの回復力を持つ、アジアのユリだという。ブーラルは「適切な条件を整えれば、ユリは成長します」と自信を見せる。
花は美しい自然の美学を提供するだけでなく、花壇の状態で自然の断熱材、炭素吸収材としても機能する。植物が多ければ多いほど、汚染源の空気はきれいになるわけだ。改めて目を閉じてみよう。頭上で咲き、香りを漂わせるユリの花が見えてこないだろうか。
ブーラルは「これが実現すれば、自然は我々に報いてくれるでしょう」と締めくくった。
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