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「インド料理」と一口に言ってもインドは広く、気候や地形や宗教などが影響し合い、各地域ごとで異なる食文化が発展している。すっかり市民権を得た南インド料理も多様にあるが、経堂にはスリマンガラムという、南インドのタミル・ナードゥ州南部チェティナード地方の料理を専門に扱う人気店がある。
その2号店、スリマンガラム A/C(Sri Mangalam chettinad restaurant(veg/non veg)A/C)が、2022年5月3日、祖師ヶ谷大蔵にオープンした。
南インドへトリップする現地スタイル
店名にもある「A/C」とはエアコンのこと。暑い時期に気温が40度にも達するインドでは、「A/C」(エアコン付き)、「non A/C」(エアコンなし)をレストランやホテル、タクシーなどが表記している。エアコン付きは涼しく快適、つまり良いサービスを提供するということでもあり、現地スタイルで店名に冠したそう。
店構えも現地感があふれ、入り口に日本語の表示はない。地下へ降りていくと、目が覚めるほど明るく広い店内にテーブルがずらりと並ぶ。スパイスの香りが押し寄せてきて、まるで「インドに来た」かのようなトリップ感に心が踊らされる。
バナナリーフに盛られるごちそうを堪能
料理のメインは経堂店と同じくオーナーシェフのマハリンガムの故郷であるチェティナード地方の料理で、特徴の一つはスパイス使いだ。
貿易や銀行を仕事にしていた商人たちによって栄え、スリランカやミャンマーなど近隣の国へ働きに出た彼らが持ち帰った食文化が融合してできたのが、この地域の料理。ふんだんにスパイスを使うので、豊潤な、かといってきつくないカルパシやスターアニス、ポピーシードなど、ほかの地域のインド料理にはあまりない香りと出合えたりもする。
基本的なラインアップも経堂店と同じ(ビリヤニやティファンは現在は経堂店のみ)だが、大きく違うのは提供スタイル。メインのミールスだけでなく、全ての料理がバナナリーフに盛り付けられる。マハリンガムいわく「オールバナナリーフは日本で初めて」とのことで、郷土の暮らしや文化への愛を感じる。
ランチはミールスのみ。ベジタブルオンリーかノンベジタブルを選び、その上で基本の盛り付けのみの『リミテッド』か、おかわりが自由にできる『アンリミテッド』かを決める。
軽い口当たりのポンニライス(タミルでよく食べられる米)を中心に、サンバル(豆と野菜の煮込み)やラッサム(酸味のあるスープ)、ポリヤル(野菜の炒め物)、クートゥ(ポタージュ)、ノンベジならカレーも付き、大ぶりなバナナリーフいっぱいに豊かな香りの料理がたっぷりと盛り付けられる。
食べ方に決まりはない。それぞれを単体で味わう、いくつかを混ぜるなどさまざまな組み合わせを試しながら、うま味と酸味、辛味、香りを自分好みのバランスを探っていく。この自由さはとても心地よく、なんといってもうまい。
見た目はなんとも贅沢だが、野菜が多いこともあり胃には優しく、食欲をそそる刺激的な香りとうま味の重なりを堪能しているうちに、あっという間に完食した。初めてでも『アンリミテッド』を選ぶのはありかもしれない。
アラカルトメニューにも注目
ディナーは、ランチと同システムのミールスに加えて、各種アラカルトもそろっている。この日勧めてくれたのは、リッチな味わいで「インド式デニッシュパン」とも呼ばれるポロタ、ココナツ風味のチキンサールナー、青唐辛子でピリッと引き締まったマトンチュッカ、黒こしょうがきいた半熟の目玉焼きだ。
ドリンクの種類も豊富で、定番のチャイやラッシーはもちろん、南インド式コーヒーのカーピ、飲むアイスクリームのようなジガルタンダなども楽しめる。
チャイを頼むと、熱々のチャイを高く持ち上げ勢いよくもう一方のカップに移し替える派手なパフォーマンス(主に熱を冷ますことが目的)を披露してくれる。最後の最後まで楽しませてくれるのがスリマンガラム流だ。
チャイスタンドの設置も計画中?
5月にスタートしたものの、コロナ禍による影響でインドから取り寄せている調理器具などが全てそろい切っていないそうで、6月上旬時点ではまだプレオープンという状態。とはいえ、カレー好きの間ではオープン前から話題の店になっており、提供される料理はレベルが高く、一度食べれば間違いなくファンになるだろう。
6月中のグランドオープンを目指していて、その後も店内にチャイスタンドを設置するなど構想は広がる。アップデートされていく様子を間近で体感できるのも面白い。
チェティナード料理をまだ食べたことがない人は、ぜひスリマンガラムで体感してほしい。すでに経験がある人は再訪してさらに深くまで味わい、楽しみ尽くしてもらいたい。
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