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ドイツの首都で、最大の都市であるベルリン。その歴史は13世紀までさかのぼることができる。文化で満ちあふれるこの街は3つのユネスコ世界遺産や、世界で最もダイナミックでエキサイティングなナイトライフシーンで有名だ。
同市では文化施設やスペースなどを支援・発展させるための巨額資金を投じた助成体制も万全。これだけの文化的な「遺産」があるわけだからそれも、当然のように思える。
ベルリン市政における文化・社会結束担当のトップであるジョー・チアロは、パンデミックの影響を大きく受けた文化や遺産への若者の再参加を奨励するという公約の実現に向けて動いている。その結果として2023年7月には、なんと9億4,700万ユーロ(約1,558億1,947万円)が市の2024年分の文化振興予算として割り当てられることが発表された。これは、イギリスにおける同年分の文化振興向け助成金の2倍以上にも及ぶ額だ。
助成対象は2000の既存施設に加え、新設される500のナイトクラブや音楽ヴェニュー、美術館、劇場など。また、この助成金は、ベルリンの若者へクラブの入場料として50ユーロを支援するプログラム「jungendkulkarte」とも密接に連携していくようだ。
このように、ドイツにおいて、文化の優先順位が高いのは明らかだ。
しかし、今回のような大きな投資、そして膨大な数の新しい文化施設や店舗のオープンが進む反面、市内には将来の脅威に直面しているクラブもある。
その要因になっているのが、市内を走る高速道路「A100」の延長計画。この道路がシュプレー川の北へ延び、ベルリンで最もクールな地区の一つで多くの有名ナイトクラブがあるフリードリヒスハインまで通される可能性があり、川沿いのダンスクラブ「Else」、産業テクノの複合施設「About Blank」、クラブ兼展示スペースの「and Wild Renate」といった同地区のクラブが閉店の危機にさらされているというのだ。
ただ、ベルリンは戦わずして沈む街ではない。ベルリンのクラブシーンは提案された道路延長に対し、抗議などで対抗している。2023年9月上旬には、道路拡張に反対する地元組織や気候変動団体が、地域のスピリットをたたえ、文化を保護するよう呼びかけるデモを共同開催し、多くの人が参加した。
高速道路延長に反対派にとって追い風になることは、ほかにもある。まずは、自動車の利用者が減っていること。ドイツが「ドイッチュラント・チケット」(超格安の月極め交通パス)を再導入して以来、自動車の利用は16%減少しているそうだ。次に、工事費用の高さ。新しい区間の道路建設には1メートル20万ユーロ(約3,165万円)もかかるという。
さらに、クラブコミッションの調査では、2018年におけるベルリンのナイトクラブ全体の収益は、15億ユーロ(約2,367億4,242万円)もあることが分かっている。2021年には、ユネスコの無形文化遺産にベルリンのクラブを認定させるためにキャンペーンも始まった。
DJ兼クラブディレクターのソフィー・カールマンは、2022年ドイツの国際放送であるドイチェ・ヴェレ(DW)に対し「(クラブカルチャーが)文化的に認識されることは、ベルリンや世界における(クラブの)重要性を示すことになる」と語っている。
ベルリンのカルチャーシーンに巨額の資金が投入される予定であることを考えると、ベルリンの歴史的なナイトスポットを脅かすことは、非常に矛盾しているように思える。
この街を象徴するナイトライフの支援と発展が、最優先事項であり続けることを祈ろう。
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『Berlin is getting 500 new culture spaces – but some of its celebrated clubs are under threat(原文)』
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