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銀座にある「黒田陶苑」で、繊細な染付けなどで国内外にファンも多い陶芸家の村田森(むらた・しん)の個展が、2023年1月14〜26日(木)に開催している。「二十四節気」をテーマにした392種類の皿や小鉢、わんといった和食器を展示・販売する。
⼆⼗四節気とは春分や秋分、夏⾄や冬⾄など24の節気を約15⽇ごとに区分した季節を示すもの。村田は従来から家庭や料理店で使える作品を意識してきたが、このようにテーマを決めたシリーズは自身初の試みだという。会場には、各節気ごとに、その時期の草花や動物、吉祥などをモチーフにした皿や鉢、わん、酒器が並び、使う人が季節を楽しめるように心配りされている。
2021年春から構想を始め、栄養素の勉強や旬の食材を求めて市場に出向くなど、さまざまなアプローチで食材や料理の知識を得たほか、⾐⾷住や⽇本⽂化なども取り⼊れてデザインに反映。中でも、器を手にして食事をするという日本ならではの文化に着目し、「手触りの感触や器から感じ取る温度感は特に意識した」と村田は語る。
白磁が持つ冷たさや土もの特有の暖かさ、あえて貫入(器の表面に入る小さなひび割れのようなもの)を入れることによって生まれる温もりなど、細やかな季節感が表現されている。
⼆⼗四節気というテーマは、割烹(かっぽう)料理屋などの専⾨店で使われることなどを意識して定めたものだそう。さまざまな旬の料理に呼応する⼆⼗四節気を取り入れた器は、料理店がまさに求めていたものだろう。これらは各節気ごとに、前菜から向付(むこうづけ)、汁、わん、焼き物、煮物、甘味、小皿、箸置きまで一式揃えられるよう制作されている。もちろん家庭用にも使えるものばかりだ。
用途的な理由だけではなく、「和食文化に根付いている季節というものを、さらに細かく分けた⼆⼗四節を器で表現することに挑戦してみたかった」と村田は打ち明ける。本シリーズで初めて作陶した焼き物や絵付けも数多い。
また、村田が憧憬(しょうけい)を抱いている北大路魯山人を意識した作品をはじめ、中国・明末期の古染付や初期の伊万里といった作品まで幅広くラインアップしている。
会場に並ぶ作品は、全て1点から注⽂して購入できるのも大きな特徴だ。会期終了の翌日から製作を始め、窯出ししたばかりの作品を届けるという仕組み(2023年夏以降の配送)。申し込みは、会場とウェブ展示会でも受け付けている。
「飾るよりも、ぜひ食事に使ってください。一番うれしいのは、よく使う器の一つになってくれることです」と村田。二十四節気をテーマにした全作品が見られるのは同展示だけなのはもちろん、受注販売の申し込みも同期間のみなので見逃がさないように。
ちなみに、アーティストの村上隆とともに運営している陶芸店「となりの村⽥」のつながりで、同展では村上から応援のコメントが寄せられているほか、Instagramでも同展に並ぶ作品の素晴らしさに触れている。この機会にぜひ会場を訪れ、自分の目で見て、触って、日常を華やかに彩る器を手に入れてみては。
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