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日本の老舗ホテルには、独特の「おもてなし」がある。
東京五輪のせいで、一時この「おもてなし」という言葉は陳腐化したのではあるが、しかしやはり日本のホテルにおけるサービスを言語化しようと試みる時、この語を除外するのは難しい。
特に「京王プラザホテル」は、新宿界隈(かいわい)で幼少期を過ごした私にとって「そこにいて当然」の存在であり、それは逆に当たり前過ぎるがゆえに、退屈なホテルにも私の目には映った。おそらく多くの昭和世代にとって同様だろう。だが、東京のみならず日本中にこれだけお洒落(しゃれ)でハイソな外資系ホテルが乱立し、そこかしこに足を運んだ後に、振り返って京王プラザを見つめ直すと、別の姿が目に止まるようになった。流行(はや)り廃りを思い求めるだけではない、サービスの芯を揚々と湛(たた)えている。
そんな京王プラザホテルが提供する「サービスの芯」は、本館の最上階に新設された「SKY PLAZA IBASHO」(2024年3月15日オープン)にも如実に反映されている。コンベンショナルなホテルでは、宿泊客に提供される館内の専用スペースは主に宿泊している自室に限られる。時として、高い部屋向けにはラウンジなどの宿泊限定スペースを設けるハイソなホテルもままあるが、基本的に自由に利用できるのは自室スペースである。もちろん、一般にも開放されているレストランやバーなども積極的に利用可能だが、こちらは宿泊客でなくとも、ほぼ同等とのサービスが得られる点を加味すると、宿泊客であるメリットはあまり大きくはない。
しかし、本館47階に設けられたIBASHOは、その名の通り宿泊客にも自室以外に「居場所」を提供する特異なサービスだ。地上170メートルに位置する約1100平方メートルに及ぶワンフロアを設定。主に6つのゾーンに分かれたこの空間は、老若男女を問わず、居場所として自由に活用できる。
フロアの北側に位置するのは「ライブラリーゾーン」。リモートワークの珍しくなくなった令和の時代、ワーキング向けに利用できるビジネスマンの居場所を確保。当然、コンセント、USBポートなど備え、開放的な空間で夜景を目にしつつ、業務に集中できる。また東京観光向けに、グラフィックマップも設置されているため、ビジネスマンでなくとも、情報収集に活用可能だ。「もっと業務に集中したい」というわがままに備え、「マルチパーパスゾーン」にはオンライン会議などに活用できるブースも設置している。
中央に設けられたエントランスから入り、すぐに目につくのは「ラウンジゾーン」。スターバックス提供によりカフェラテやカプチーノなどがフリーで楽しめるほか、カジュアルにしつらえられたバーカウンターでは、イタリアから届けられる「NIO COCKTAIL」全10種類(各1,400円、以下全て税込み)を、全国的にも名高い同ホテルのバーテンダーがひと手間かけ提供する。バーでのドリンクはナイトタイム限定で17時から。カクテル以外にも、ウイスキーやワインも味わえるので、ナイトキャップにピッタリだ。
靴を脱いでくつろげる「ガーデンゾーン」は、子どもが満喫するのはうってつけ。こうした土足厳禁のエリアがあるため、バーで提供されるドリンクのグラスには割れるようなガラスを使用せず、安全面に配慮している点も、なかなか心憎い。
個人的なおすすめは、「パークゾーン」。やはり靴を脱いで利用するのだが、東京都庁のイルミネーションを望む西側に広がるスペースには、ハンモックやランタンが配置され、ちょっとしたアウトドア気分を味わうことが可能だ。また、このハンモックが秀逸で、カクテルを嗜(たしな)んだ後に横になろうものなら、終業時間までグッスリ寝込んでしまうほど危険な居心地の良さをもたらしている。フロアの最新部・最南端には「ホールゾーン」を配しており、今後魅力的なイベントなどを展開していく予定という。
全231席を誇るこのフロアは、全面禁煙、飲食持ち込み不可、キャッシュレス対応となっているので、利用の際は留意しておきたい。
利用は、専用プラン・会員料金プランの宿泊客を対象としているが、ビジターでの利用も可能。平日のデイタイムは2,000円、土・日曜日と祝日のデイタイムが2,500円、ナイトタイムは平日週末を問わず5,000円。ビジターは、デイタイムとナイトタイムが完全入れ替え制となっているが、宿泊客はこの限りではない。
ちなみに2024年4月末までは、東京都庁舎の東側を活用したプロジェクションマッピングが展開されており、19時から21時までパークゾーンで、この光のショーを目の当たりにすることができる。
できるなら早いうちに足を運び、この快適な居場所を余すところなく体験したい。
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