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韓国料理店やアイドルグッズショップ、ハラルの食料品店やスパイスショップなど、活気あふれる多国籍の街、新大久保。2020年10月、そんな新大久保駅から徒歩数分の場所に、アートギャラリー、オープンアトリエ、コミュニティーセンターも兼ねる新大久保UGO(ウゴウ)がオープンした。
UGOの名前は、規律やルールに縛られない集団を指す「烏合の衆」に由来。そこには目的や属性が異なる個人が互いのビジョンを共有してアクションを起こす場としての意味も込められている。
運営メンバーは、磯村暖、海野林太郎、金色の愛・ユンボ、佐久間萌香、丹原健翔、中尾一平、林千歩、ぱにぱにぱにぱにともちんぱ、三好彼流、山縣瑠衣。アーティストやアート業界に関わる人たちだけでなく、職業を「ギャル」として生きるぱにぱにぱにぱにともちんぱなど、ユニークなメンバーが集まっている。
それぞれが紆余(うよ)曲折あって集まり、建物は築60年以上のアパートを改装。当時ニューヨークに滞在していた美術家の磯村を発起人として、場所を作ることについては2019年ごろから構想があったという。
大盛況のオープニングパーティーとサブスクリプションサービスの開始
元々は2020年3月のオープンを予定していたUGO。コロナ禍でオープンが遅れたが、10月にはバングラデシュ料理やシャンパンタワーのふるまい、ファッション雑誌『VOGUE』モデルのポーズから呼ばれるヴォーギングダンスなど、大盛況のオープニングパーティーが行われた。
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コロナ禍での運営について、2021年には公式ウェブサイトでサポーターの募集を開始。月額1,000円で入会できる『Friendプラン』では、UGO公式Instagramでは載せていないこぼれ話や裏話、メンバーのおすすめコンテンツをのぞく裏アカウントの相互フォローや、非公開イベントの招待などの楽しい特典が付く。ほかには『vibesプラン』『familyプラン』があり、ドローイングなどのリターンもある。運営資金の調達を契機に、全てのイベントが収益重視にならないよう企画を検討しているという。
また、金〜日曜には、UGOの入り口でバープロジェクト『ダイナソウ』を稼働中。インスタレーションでもある空間でドリンクを楽しみながら、制作の様子やUGOメンバーと交流できる貴重な機会だ。
多様性を目指すのではなく向き合い続ける、UGOが示す「道」
2021年2月21日には、フェミニズムとセクシュアリティーの観点から研究を行う美術史家として、またアーティストとしても活動する近藤銀河が主催、ゲストに都内の出版関係者である山口、安田を招いた『美術関係者のためのジェンダー、セクシュアリティに関する言語表現勉強会』が開かれた。
昨今、「多様性」という言葉が一人歩きする一方で、多様なはずの社会の鏡である現代アートのプレイヤーには、ジェンダーバランス、国籍、学歴など未だに偏りがある。「多様性」を目指すのではなく、常に向き合って行きたいとUGOメンバーは語る。
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建物の前の道には、UGOを目的に来た人だけではなく、日々さまざまな人々が訪れるという。公共の場とプライベートな空間の境界線がない路地は、UGOの在り方を象徴しているかのようだ。今後はコロナ禍での展示企画として屋外での展示も予定している。現代アートの間口を広げ、またマイノリティーに寄り添う場所として、UGOが示す「道」に注目したい。
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