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レトロなだけじゃないアート、SHIBUYA PIXEL ARTが開催

9月15~24日、渋谷・原宿の10会場で行われる一大作品展

テキスト:
Genya Aoki
SHIBUYA PIXEL ART
Photo: Aya Morimoto左から「Pizza Boy」「MARS LANDER」Shinji Murakami
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2023年9月15日に、渋谷各地でピクセルアートの祭典「SHIBUYA PIXEL ART 2023 ~HAKKO~」が始まった。第7回目となる今年は「HAKKO」をテーマに、過去最大規模の10会場で総勢70人以上のアーティストが参加する。ここでは、同展の見どころをいち早く紹介しよう。

SHIBUYA PIXEL ART
Photo: Aya Morimotoアンノン原宿

同イベントは、渋谷を舞台に毎年開催される世界最大級の「ピクセルアートの祭典」だ。「ピクセルアート」とは、コンピューターやビデオゲームの黎明(れいめい)期に、機能的な制約のもと発展した低解像度の描写である「ドット絵」や「絵文字」から派生あるいは着想を得たイラストレーションやアニメーション、刺しゅう、アクセサリー、絵画などのことである。

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Photo: Aya MorimotoShinji Murakamiによる約2メートルのLED彫刻「Emoticons」

同展では、黎明期の機能的な制約から解き放たれ、さまざまなメディアや新たな表現と結び付き、変化(発酵)してきた作品群や交流イベントにスポットを当て、現代の「ピクセルアート」が持つ表現の多様さや奥深さを感じることができる。

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Photo: Aya Morimotoアンノン原宿

最新テクノロジーと融合した「ニュートロ」に触れる。

まず初めに訪れてほしいのは、原宿にある古民家スペース「アンノン原宿(UNKNOWN HARAJUKU)」だ。ここには「ピクセル(画素)」をテーマに表現を続ける15人のアーティストが手がけた作品が並んでいる。

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Photo: Aya Morimoto「BINARY MONSTERS」奥田栄希

奥田栄希による「BINARY MONSTERS」は、8×8ピクセルで作られた1024体のモンスターを製作したもの。さらにピクセルで描いたキャラクターをAI(人工知能)を使ってイラスト化するという試みを実施している。

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Photo: Aya Morimoto「机上の合戦図屏風」重田佑介

重田佑介が作った、スマートフォンを屏風のようにじゃばらに並べた中で、合戦を描いた山水画がゲームのようにぬるぬると動く「机上の合戦図屏風」もユニークだ。

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Photo: Aya Morimoto「Twitter Bird/ X」Shinji Murakami
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Photo: Aya Morimoto「Twitter Bird / X」Shinji Murakami

「Twitter Bird」と「X」のロゴで遊ぶ、時事問題を風刺したゲームも見逃せない。ニューヨーク在住の現代アーティストであるShinji Murakamiが製作したものだ。1977年に発売され、今なおゲーム史に燦然(さんぜん)と輝くロム(ROM)カセット交換式ゲーム機「Atari2600」の実機で実際に遊べる。

わずか2カ月前に起きた現実の出来事がレトロゲーム機の中で息づいているのに、斬新で懐かしい「ニュートロ」を感じるだろう。

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Photo: Aya MorimotoShinji Murakami
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Photo: Aya Morimoto「MARS LANDER」Shinji Murakami

ちなみに、別会場である「シークエンス ミヤシタパーク」でもShinji Murakamiが作ったゲーム作品をプレイできる。これもAtari2600で遊べるものだが、さらにロムデータをスマートフォンに移植したARゲームも用意。ゲームのイメージが描かれた絵画をアンカーにしてARゲームを起動するというハイテクを駆使したレトロゲームなのである。ぜひ実際に試してほしい。

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Photo: Aya Morimoto
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Photo: Aya Morimoto「SPACE INVADERS」のテーブル筐体

シークエンス ミヤシタパークでは、元祖「ビット絵」ともいえる1978年発売当初の「SPACE INVADERS」も登場。テーブル筐体(きょうたい)も2台あり、レトロカフェ仕様になっている。いずれも100円でプレイ可能だ。

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Photo: Aya Morimoto左から「Spirals of the Temporal」「ONCE MORE 9」「Pitfall(Monochrome Dreames)Ed.2/8」MASARU OZAKI

鮮やかな余白を楽しむ。

MASARU OZAKIによる、アンノン原宿の床の間空間を借景に山を浮かびあがらせる繊細な光の作品や、若干20歳の画素芸術愛好家・中里が描いた絵画「聖蹟桜ヶ丘」などは、ミニマルだからこそ生まれる余白を自ら補完する楽しみに満ちている。

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Photo: Aya Morimoto「聖蹟桜ヶ丘」中里

中でも聖蹟桜ヶ丘は、2:1のドットを用いることで、膨大な情報量を持った「街並み」というモチーフを、適度な画素に落とし込んでいる。見ていると、パノラマの街並みがまるで自分の街かのように情感をかきたてられるだろう。

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Photo: Aya Morimotoアンノン原宿

ピクセルアートは質感を帯びて現代アートに成る。

陶芸家の増田敏也によるビットで組み上げたかのような陶立体作品をはじめ、デジタルならではの要素を取り入れつつも、質感を有することで、既成のデジタルアートから解き放たれ、現代アートへと進化している作品も多い。沼田侑香は、アイロンビーズを用いてコンピューターのようなバグが起きた「キャベツ太郎」を描いている。

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Photo: Aya MorimotoLow Pixel CG「質感ノイズ(self portrait)」増田敏也

別会場である「オールデイプレイス渋谷(all day place shibuya)」では、韓国のピクセルアートをけん引するアーティストのJoo Jaebumが、「光合成」をテーマに自然を感じさせるピクセルアートのエキシビジョンを展開する。

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Photo: Aya MorimotoJoo Jaebumの作品

全て8bitのゲーム的なフォルムを持った3D作品だが、芝生部分にラグを用いるなど質感のある素材を組み合わせることで、自身の想像力がさらに生き生きと躍動するのを実感できるだろう。

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Photo: Aya Morimoto「龍虎図」EXCALIBUR

神話と日常生活が接続する。

このほか、日本神話的な表現にゲーム性を持ち込んだ現代美術サークル・EXCALIBURが、コロナ禍以降初の大規模展示「#FFFFFF TSUKUMO」を、ミヤシタパーク内にあるクラブラウンジ「オアトーキョー(or TOKYO)」で実施している。

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Photo: Aya Morimoto「NEW GAME+」EXCALIBUR
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Photo: Aya Morimoto「#FFFFFF TSUKUMO」

葛飾北斎の「龍虎図」を現代的に再構築した2枚の掛け軸作品や、コロナ禍を風刺した「「NEW GAME+」シリーズ、仮想と現実世界が混じり合う「Beautiful World」など見応えたっぷりだ。

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Photo: Aya Morimoto「『ラブライブ!スーパースター!!』コラボレーションピクセルアート」ななみ雪

ラブライバーはコンプリートする。

「渋谷キャスト スペース」では人気急上昇のピクセルアーティストであるななみ雪が、「ラブライブ!スーパースター!!」とコラボレーション。同展のためにピクセルアートで描きおろした11人のキャラクターが並ぶ。

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Photo: Aya Morimoto

また、渋谷・原宿エリアの17カ所以上を巡るデジタルスタンプラリー「原宿スタンプ」も実施。24日(日)までの期間にスタンプを12個集めれば、先着で限定ブロマイドとミニカードをゲットできる。詳細は特設ウェブページを確認してほしい。

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Photo: Aya Morimotoななみ雪の作品

桜丘再開発エリアにある「大和田第一ビル」屋上や、「アディダス オリジナルズ フラッグシップ ストア 原宿(adidas Originals Flagship Store Harajuku)」、「SACS」でも展示を実施する。それぞれ開始日が異なるので、訪れる際は公式ウェブサイトで確認してから訪れよう。

SHIBUYA PIXEL ART 2023 / 音電Opening Night!
画像提供:シブヤピクセルアート実行委員会

17日(日)には、DJ、VJ、パフォーマーなどが出演するオープニングイベントを開催。チケットは特設ウェブページで予約できる。

ピクセルアート好きはマストなのはもちろん、レトロゲームや現代アートが好きな人、緻密な情報化社会に疲弊している人はぜひ訪れてほしい。きっと楽しい刺激が得られるはずだ。

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