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国内外でカクテルバーを運営する世界的バーテンダー、後閑信吾率いるSGグループが国内7店舗目として初の焼き肉店となる「ヱスジ苑(SGN) 」をオープンした。
2022年7月に住所非公開でオープンした同店は、2023年9月末までの期間限定での営業を予定している。InstagramのDM(ダイレクトメッセージ)から予約を受け付けているが、9月15日(木)以降は住所や電話番号を公開し、テーブルチェックからも予約できるようになるとのことだ。
ヱスジ苑(SGN)は、「Full-Use」(「もったいない」を語源として SGグループが考案した造語)をコンセプトに、渋谷の「スワァル(swrl.)」とのコラボレーションでも知られるシェフの米澤文雄とソムリエの大越基裕、そして後閑が考える 「未来から来た焼き肉屋」だ。ドリンク持ち込み焼き肉の会で同席した後閑と大越が、焼き肉屋のサイドディッシュのアップデートや、ドリンクとの相性などの話題で盛り上がり、「だったら僕たちが新しい焼き肉屋を作ってしまおう」と相成ったという。
「未来の焼き肉屋」の設定は、人口増加と地球温暖化により牛肉の生産や消費に規制が入り「禁牛法」が施行された2050年。一般市民には簡単に牛肉が手に入らなくなってしまった時代を想定している。
「スピークイージー(禁酒法時代に酒を密造していたバーのこと)な店を意識しました」(後閑)
入り口からして、従来の焼き肉屋とは一線を画す。というよりも、この入り口を見てここが焼き肉屋だと思う人はほとんどいないだろう。店内に入ると、後閑がアイルランド人のアーティストに依頼したというアメコミ風のインパクトのあるイラストが目に飛び込んでくる。中でも、オードリー・ヘプバーンとおぼしき女性が生肉に食らいつくイラストには度肝を抜かれた。
音楽も、未来感を意識。料理はコースでの提供となる。コースにプラスしてオーダーできるアラカルトメニューも取り揃えた。「肉は持続可能性を意識し、黒毛の経産牛と『土佐あかうし』をフィーチャーしました。黒毛和牛の価格が高騰し、入手が困難だという設定です」と、後閑は不敵な笑いを浮かべる。
注目のタン元からタン中までを楽しめる、シガーのように長く、場所によって味わいが異なるシガータンのインパクトは絶大だ。シガーケースに入ったシガーカッターとともにサーブされるなど、遊び心も満載。どうやら「未来の焼き肉屋」では、タンはシガーカッターでカットして味わうらしい。
コンディメントも3種類(レモンこうじ、ネギ塩ごまだれ、チュミチュリ)が用意されていて、「味変」も自由自在だ。そもそもコンディメントで飲める。これは楽しい。
焼き肉屋とはいえ、やはりSGグループの新店だ。やはりドリンクには並々ならぬ気合を感じる。コースにカクテルやワイン、サワーをペアリングすることができ、例えば、タンには「爽快感があり、飲みごたえもある味わいを意識した」という「牛舌用レモンサワー」を合わせる。
「過去のホルモン」のペアリングはどぶろくフィズだ。料金はコースにペアリングを付けて1万円強。「いろいろな人にお肉本来のおいしさを知ってほしいこともあり、控えめに設定しました」と後閑が語るように、リーズナブルな価格設定となっている。
コースの一品である2種のあかうしの赤身は、スタッフから「片面だけ焼いて、油がキラキラしてきたら食べごろです」とアドバイスがあった。郷に入れば郷に従えとばかりに、近未来ならではの食べ方を試してみよう。
たれを付けなくても十分に味わい深いあかうしだが、こちらも3種類のコンディメント(焼き肉たれ、バーベキュー、ハラペーニョ)が用意されていた。この赤身肉には、辛口のランブルスコ(イタリア屈指の美食の都、エミリア・ロマーニャ州で生産される発泡性の赤ワイン)を合わせる。
「ランブルスコはペアリングをするのが難しいお酒です。バーベキューだと存在感が重いし、ステーキには軽過ぎる。かといってレストランで出すと、チープな印象になってしまう、立ち位置が難しいお酒ですが、脂を切る炭酸の爽快感が焼き肉にはとてもよく合うんです。辛口のランブルスコはさっぱりとした赤身肉に、甘口のランブルスコは脂身と甘口のたれにぴったりです」(後閑)
アラカルトで提供している「北京風サーロイン」(1枚1,650円)は、薄いサーロインをさっと焼き、北京ダックのように餅皮に包んで食べる。合わせるのは、「お洒落ウーロンハイ」(550円)だ。出てくる料理と酒は知ってはいるものばかりだが、同店ならではのアレンジが加えられていて、エンターテインメント性抜群でわくわくする。
「形は変わっても、焼き肉屋は半永久的に求められ続ける外食の形態だと思います。焼いて食べるというスタイルは変えずに、新しい体験をしてもらうことを意識しました」(後閑)
おいしくて、楽しくて、エキサイティングな「未来の焼き肉屋」は、意外とすぐ近くに存在しているのだ。
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