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パリで「ヴェルヌイユ通り5番地」を見逃してしまうことは、まずありえないだろう。街の中心部、7区の落ち着いた高級住宅街にあるこの広い屋敷の壁は、非常に目を引く詩、追悼メッセージ、肖像画、ありとあらゆる色で描かれた落書きなどで埋め尽くされている。ここには国民的アイドルか何かが住んでいたのだろうかと思うかもしれないが、その発想はおおむね正しい。
ここは、称賛され、時にはそれ以上に物議を醸したフランスのシンガーソングライター、セルジュ・ゲンスブールが人生最後の20年間を過ごした家なのだ。
1991年3月2日にゲンスブールが心臓発作でこの世を去って以来、この家は彼の遺品を収めた非公式の聖地としての役割を果たしてきた。家の中の物は30年前のままであるという。灰皿にはまだ、吸い殻さえも残されているのだ。この場所は、熱狂的なファンには疑いようもないほどに魅力的だろう。ただ、この家の外をうろつくファンの姿(その多くはスプレー缶を巧みに操っている)を見かけることはあったが、これまで一般公開されたことはなかった。
しかし2021年3月2日、彼の死後30年を記念し、彼の娘であり、女優で歌手のシャルロット・ゲンスブールが、ついにこの家が2021年10月にミュージアムとして一般公開されることを発表したのだ。
シャルロットは、ゲインズブールが、『メロディ・ネルソンの物語』から『フライ・トゥ・ジャマイカ』まで間のアルバムに収録されている彼の晩年の曲の多くを書いた家がミュージアムになることで、この場所ならではのユニークな体験を提供できるだろうと述べている。
ミュージアムの主な見どころは、ピアノ、アールデコのバー、ゲンズブールの膨大な量の彫刻コレクションがある広いリビングエリア。この風変わりな部屋について、ゲンズブールは客人にこう語ったことがある。「ここが何なのか分からない。居間、音楽室、遊郭、博物館だろうか」
シャルロットが購入した家の反対側のガレージには、チケット売り場が設置される。家の1階である生活エリアはそのまま保存され、地下は展示スペースになる予定。彼女は、父親が暮らした家がパリの 「遺産」 になることを望んでいると話している。毎年巡礼をする何万人ものファンたちにとって、この家がついに正式な「遺産」になることは本当に喜ばしいことだろう。
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