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三鷹天命反転住宅が存続危機、クラウドファンディングで修繕費募る

東京で最も美しい建築の一つである「死なないための住宅」の魅力を解説

テキスト:
Genya Aoki
三鷹天命反転住宅
Photo: Keiske Tanigawa
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モーションギャラリー(MotionGallery)は、三鷹市にある集合住宅、三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラーを歴史的建造物として次世代につなげるためのクラウドファンディングを、2021年9月13日(月)から開始する。

同住宅は、美術家であり建築家の荒川修作とマドリン・ギンズが設計、2008年に完成した、全9戸から成る世界初の「死なないための住宅」。5部屋が賃貸住宅となっており、残り4部屋は、同事務所やライブラリーのほか、短期滞在プログラム(ショートステイ)や、テレワークプランなどを設け、一般利用できる。また、定期的な見学会の開催といった教育、文化プログラムを世界へ発信するスペースとして活動してきた。

三鷹天命反転住宅
Photo: Keisuke Tanigawa

旅行ガイドブックの『ロンリープラネット(Lonely Planet)』への掲載や、アメリカの有料ケーブルテレビ放送局であるHBOの人気テレビドラマシリーズ『Girls』で使用されるなど海外からの人気も高く、「芸術作品の中に住める住宅」としてコロナ禍以前は多くの見学、宿泊客が足を運んでいた。

2020年には完成15周年を迎え、大がかりな修繕計画を進める予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で見学会や短期滞在プログラムの利用者が激減。経済的にも苦しい状況が続いている。このままでは同住宅を体験できる機会が減り続けてしまうと同時に、修繕が必要な箇所のダメージが広がっていき危機的な事態に直面してしまう。そうした中、運営管理を担っている荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所は初の試みとしてクラウドファウンディングを実施することを決断した。

三鷹天命反転住宅
荒川修作+マドリン・ギンズ( 撮影:山本真人 提供:荒川修作+マドリン・ギンズ 東京事務所)

目標金額は1,000万円、12月10日(金)まで実施する。建物全体の補修工事総額は5,500万円かかると見積もられており、集まった資金は、喫緊に取りかからなくてはならない劣化が激しい建物共用部分の耐火塗料、防水工事に当てられる。目標金額を上回った場合にはストレッチゴールを新たに設け、3棟に分かれた住居棟全体の補修費などに当てる予定だ。リターンは『たてもの見学会ご招待券』『テレワークプランご招待券』『ショートステイご招待券』など体験型のプランを多く用意している。

三鷹天命反転住宅
耐火塗装などの補修が必要な箇所(Photo: Keisuke Tanigawa)

ここでは、実際に筆者が体験した同住宅の魅力を少しだけ紹介しよう。まず挙げられるのは、写真でも分かる色彩の鮮やかさ。「カラフルであることが自然」という理念のもと、内外装に14色の鮮やかな色が施され、一部屋ごとに色の組み合わせは全く異なっている。さらに、誰がどの方向から見ても必ず6色以上が視界に入るように設計されているという。

三鷹天命反転住宅
Photo: Keisuke Tanigawa

「体が主役になる空間」をコンセプトに、身体性を意識する仕掛けが随所に施されている点も、この住宅を世界で唯一無二にしている要因だろう。入ってすぐに体感するのは、平らな場所が存在しない凸凹状のコンクリート床だ。思わず、歩き周って感触や体への影響を確かめてみたくなる。

三鷹天命反転住宅
凸凹状のコンクリート床(Photo: Keiske Tanigawa)

ほかにも、まっすぐ立っていられない球体構造の部屋やはしご、登り棒、砂利と畳とコンクリートという3つの素材が混在する「和室」、天井のフック、共用部の中心で盆地のように落ちくぼんだキッチンなど、普段は意識しない感覚が目覚めるディテールは枚挙にいとまがない。

三鷹天命反転住宅
球体になっている部屋(Photo: Keiske Tanigawa)

いずれも、住宅でありながら用途や対象を限定していない点も「ならでは」の要素。この住宅には3歳の子どもが大人より使いこなせる場所もあれば、70歳以上の大人にとって価値のある配置や仕様も存在する。一人一人の体は全て異なっており、日々変化するものだ。与えられた環境と条件を当たり前と思わずにいられることこそ、「死なないための住宅」の意義の一つであり、そうした暮らしの先に、無限の可能性を実感できるのかもしれない。

三鷹天命反転住宅
実際に事務所として使用している部屋の内観(Photo: Keisuke Tanigawa)

2時間この空間に身を置くだけでも、自分の体への意識と想像力が花開いていくエキサイティングなひとときになる。この機会にぜひ支援だけでなく、リターンを用いて自分の体で実感してみてほしい。

三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラーのクラウドファンディングの詳細情報はこちら

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