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六本木一丁目にある泉屋博古館東京が2022年3月19日にリニューアルオープンした。同館は、京都市鹿ヶ谷にある泉屋博古館の分館として、2002年10月に旧住友家麻布別邸跡地に開館。近代絵画や工芸、茶道具、能面、能装束などを所蔵しており、企画展を通じて公開している。
2019年末から改修工事のため休館しており、2021年9月に完成。2021年4月には館名を泉屋博古館分館から泉屋博古館東京に変更した。今回の改修ではミュージアムショップ、ガラスメーカーハリオ(HARIO)直営のカフェ、講堂を新設したほか、展示スペースを拡張。よりゆったりとした観賞が可能になった。
リニューアルオープンを記念して、展覧会『泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京』が、2022年5月8日(日)まで開催中。展示は大阪・京都・東京の三都で活躍した近代の日本画家の作品で構成され、各都市で異なる展開をした明治・大正・昭和の日本画壇を横断的に眺める内容だ。「地域性」という観点で切り取ることで、ローカルな個性や表現を立体的に観賞できる貴重な機会である。
まず目を引くのは、近年人気が高まっている木島櫻谷(このしま・おうこく)の屏風『柳桜図』だ。館長の野地耕一郎が「柳の葉がシャラシャラと音を立てるようだ」と形容する、新緑の柳と山桜を描いた作品からは春の穏やかな空気が感じられる。
日本画の革新派の一人である東京の画家・橋本雅邦(はしもと・がほう)の『深山猛虎図』は、2年間の長期修復を終えて初の公開となる。明治時代に来日したアメリカの東洋美術史家にして哲学者でもあるアーネスト・フランシスコ・フェノロサの教えを受けて取り入れたという空間の表現は雄大だ。
三都ごとに美人画を見比べるというユニークな趣向の展示も見逃せない。尾竹国観(おたけ・こっかん)の『人物図』は、東京における日本画の挿絵風表現を見て取ることができる。
櫻谷の美人画『唐美人図』は京都の日本画らしい優麗な女性のたたずまいが特徴的だ。伝統の中に革新性を取り入れ、現代の女性を題材に描いた作品で、伏し目がちな少女の表情は印象に残るだろう。
細長い展示室にずらっと並べられた12幅からなる上島鳳山『十二ヶ月美人』は、大阪ならではのねっとりとした色香を感じさせる表現とともに、それぞれの美人図で展開する四季の移ろいが楽しめる。
京都画壇に属される原田西湖の『乾坤再明図』は天の岩戸をテーマにした作品。線描ではなく面でとらえる、光を感じさせる描写に注目してほしい。
このほか、ミュージアムショップでは住友コレクションをモチーフにしたグッズや、マスキングテープ、トートバッグ、クリアファイルなどオリジナルアイテムが購入できる。
カフェではハリオの器具で入れたスペシャリティコーヒーや紅茶、軽食を提供。店内はガラス張りになっており、緑豊かな庭を眺めながら一息つける。春の時期には桜が咲くので、展示の余韻が一層深まるだろう。また、ハリオ ランプワークファクトリー(HARIO Lampwork Factory)のガラスアクセサリーやコーヒー器具なども購入できる。
住友家の近代日本画コレクションは邸宅で実際に飾られるために、広い座敷と高い天井に見合う作品を画家に注文して描かせている。新しい空間で日本画の魅力と多様さを感じられる企画展を堪能してみては。
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