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伝統工芸作家が新境地を開く「ポケモン×工芸展」が麻布台で開催

人間国宝から若手作家まで20人が参加、東京初公開の作品も

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Kaoru Hoshino
ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-
Photo: Kisa Toyoshima桑田卓郎『カップ(ピカチュウ)』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
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 麻布台ヒルズギャラリー」で、2024年11月1日(金)から 2025年2月2日(日)まで、「ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-」が開催される。これまでもポケモンは、ヴァン・ゴッホや現代アーティストのダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)といったアート界とのコラボレーションで人々を楽しませてきた。本展では、伝統工芸とポケモンという意外な組み合わせに期待が高まる。

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-
Photo: Kisa Toyoshima須藤玲子『ピカチュウの森』ニードルレースで作られた、約900本のピカチュウのインスタレーション。中を歩いて作品を体験できる。/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc
ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kaoru Hoshino須藤玲子『ピカチュウの森』(一部)/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc

本展は、2023年に石川県の「国立工芸館」で初開催された後、米国の日本文発信拠点「ジャパン ハウス ロサンゼルス(JAPAN HOUSE Los Angeles)」などを巡回し、多くの反響を呼んだ。これまでの展示では、約70点の作品が紹介されていたが、今回の東京開催では初公開の新作も加わり、出品数は約80点に拡大した。

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshima吉田泰一郎の作品群/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-
Photo: Kisa Toyoshima吉田泰一郎『ミュウツー』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

今回は新たに、吉田泰一郎による全長約2メートルの実物大『ミュウツー』の彫刻をはじめ、優美な文様で飾られた植葉香澄の『蔦唐草文ジュペッタ』などが加わった。さらに、ピカチュウをモチーフにした桑田卓郎の陶器のインスタレーションには、新たな要素が加わり、従来の2倍のボリュームで登場する。

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshima植葉香澄『蔦唐草文ジュペッタ』(左)/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
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Photo: Kisa Toyoshima桑田卓郎『ボウル(ピカチュウ)』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

会場は3部構成となっている。第1部「すがた 〜迫る!〜」では、高度な工芸技術によってポケモンの存在感をリアルに引き出した作品が展示。第2部「ものがたり 〜浸る!〜」は、ゲームを通じて表現されたポケモンの世界観に浸れる作品が並ぶ。第3部「くらし 〜愛でる!〜」では、器や着物などの生活アイテムにポケモンが登場したかのような作品を楽しむことができる。

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Photo: Kisa Toyoshima福田亨『雨上がり』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

ポケモン世代ならではの表現

出品作家は、ベテランから若手までの20人。その多くが1997年のアニメ放送をきっかけに広がった「ポケモン旋風」真っ只中で育った30〜40代の作家だ。子どもたちの間で社会現象となったポケモンカルチャーに直に触れ、キャラクターの特性を熟知している作家たちだからこそ、それぞれの個性を最適な手法で引き立している。

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Photo: Kisa Toyoshima満田晴穂『自在ギャラドス』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

江戸小紋作家の小宮康義もその一人。大学卒業後に父である3代目康正に師事し、職人の道に進んだ。現在は4代目として家業を継ぎ、「トランプ柄」など斬新なデザインを取り入れた作品を精力的に制作している。

小宮は、遠目から見ると無地に見えるほど細かい柄が描かれている江戸小紋の特徴を活かし、「ゴーストタイプ」のキャラクター、ゲンガーとゴーストを柄の中に巧妙に忍ばせた。細かいゆえに遠目で見ると曖昧模糊としている江戸小紋が、キャラクターの怪しげな個性と絶妙にマッチし、生き生きとした表現になっている。

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
画像提供:森ビル株式会社小宮康義『江戸小紋 着尺「ゲンガー・ゴースト」』(2022年)個人蔵

展示作品は、単なるキャラクターの再現を超えている。作家たちは世界中の人々を惹きつけるポケモンの魅力をさらに引き出そうと試み、その情熱が作品のクオリティーを一層高めているのだろう。どの作品も、作家が楽しみながら意欲的に制作したことが伝わる新鮮な表現にあふれており、瑞々しさが感じられるのが印象的だ。

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshima葉山有樹『森羅万象ポケモン壺』(拡大図)※よく見るとさまざまなポケモンが隠れている/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

多様な技とポケモンが起こすかがく反応

使用されている技法は、七宝・彫金・象嵌(ぞうがん)・自在・有田焼・紅型・螺鈿・可変金物・信楽焼・江戸小紋・漆などさまざま。これらの多彩な技法とポケモンが組み合わさり、互いの魅力を引き出す。

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshima城間栄市『琉球紅型着物「島ツナギ」』/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

例えば、素朴な風合いと温かみ、赤みがかった色合いや黒い焦げなど、土と火が織り成す風合いが特徴の信楽焼で表現された桝本佳子の「ほのおタイプ」のポケモンたちは、その個性と素材が見事に調和している。

ポケモン×工芸展-美とわざの大発見-
Photo: Kisa Toyoshima桝本佳子《ロコン/信楽壷》/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

限定グッズをゲットしよう

グッズコーナーにも忘れずに立ち寄ってほしい。日本の伝統柄「工字つなぎ」の着物を着たピカチュウのぬいぐるみのほか、ポケモンがデザインされた豆皿、レース編みのピカチュウなどが購入できる。さらに、図録には作家たちの制作現場などが収められ、充実した内容だ。 

ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshimaグッズコーナー/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
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Photo: Kisa Toyoshima須藤玲子のピカチュウのレースも購入できる/©2024 Pokemon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.

 さらに「麻布台ヒルズギャラリーカフェ」では、本展の作品にインスパイアされたコラボレーションカフェ『喫茶 ポケモン×工芸展』が期間限定でオープンし、特別メニューが楽しめる。

 ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―
Photo: Kisa Toyoshima「喫茶 ポケモン×工芸展」

ポケモンを入り口に、日本の伝統工芸を再発見できる本展、異色の融合から生まれる新しい美の形に驚くだろう。

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