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テキスト:Yurie Yoshimura
2023年の「フジロックフェスティバル」出演による来日から約7カ月。2024年3月11日、スロウダイヴ(Slowdive)が東京に帰ってきた。
単独公演は2017年12月以来、約6年ぶり。今回のアジアツアーは、チケット発売開始から数分でソールドアウトする国もあったという。2023年9月にリリースされた新アルバム「everything is alive」を引っ提げ、歓喜に包まれた一夜の様子を振り返る。
「この日をどれほど楽しみにしていたのだろう。この気持ちを共有できる人たちが今日はたくさんいるなんて、なんていい日なのだ」と、筆者は既に恍惚とした気分だった。17時30分、東京公演の会場の「豊洲PIT」に到着すると、グッズ売り場に並ぶ熱烈なスロウダイヴのファンが列を作っていた。
高層ビルやマンションが立ち並ぶ一角にある豊洲PITは、今回、3月11日の東京公演でも意味を持っている。なぜなら本会場は、東日本大震災における被災地復興支援活動の一環として計画、設立された施設だからだ。「PIT」とは、「Power Into Tohoku」という頭文字を組み合わせたものだという。忘れられない悲しみを癒やすとき、音楽はいつも寄り添い助けてくれる。
レイチェル・ゴスウェル(Vo/G)は、公演前のオンラインインタビューで「近年、私たちを取り巻くファン層は驚くほどにどんどん若くなっていて、ステージにいろんな世代が混ざり合っているのを見るのがとても不思議。同時に、とても喜ばしいことです」と語ってくれた。今回にもさまざまな年齢層の客層が入り混じっている。若者たちはもちろん、家族揃って来る人たちも多く見かけた。
入場を待つ観客がひしめく18時30分、ドアがオープン。会場入り口付近にはバンドメンバーと親交があるというゲームデザイナーの小島秀夫から贈られた花が飾られており、会場をさらに特別な場所にしていた。
隠せない高揚感とは裏腹に、開場から開演まではあっという間だった。開演と同時に歓声が湧く。スロウダイヴの来日を祝福する声に、空間が幸せに包まれた。
演奏は彼らの最新アルバム「everything is aliveの「shanty」からスタート。ベースとシンセサイザーが混ざり合い、発光する音に包み込まれていく。どんな音楽スタイルでも、スロウダイヴ色に持っていくのはさすが大御所バンドだ。
1991年発表のアルバム「Just For A Day」の収録曲、「Catch The Breeze」の後半から歓声が湧くーー。力強いドラムとギターの激しい調和が、絶妙なノイズを放っていた。
「ここ(日本)に戻って来ることができて本当にうれしいわ」と、レイチェルが言った後、「Crazy For Love」で観客のボルテージは増していく。ふわふわとした浮遊感とレイチェルの動きがシンクロする。ステージの映像は、水玉が弾け飛ぶような、サイケデリックな雰囲気を醸し出していた。
アンコール後の1曲目「Sugar For The Pill」では、バンドのデビュー年である「1-989」とバンド名「SD」が印字されたカプセル錠が割れて、粉末が流れ落ちるというスタイリッシュな映像が流れた。
東京公演最後の一曲は、ピンク・フロイドの初期中心メンバーであるシド・バレットのカバー曲「Golden Hair」。レイチェルの夢見心地なボーカルから、ゆったりとした演奏が始まる。このまま終わらないでほしい……と誰もが切に願っていた。
終演後、新アルバムが出来上がるまでの過程をレイチェルに問いた時、「この6年間、いいこともそうでないことも、本当にたくさんのことがあった。でも、私たちは常に今やるべきことをやっているだけなのよ」と言っていたことが忘れられない。尊敬してやまないアーティスト、バンドであり続けてくれてありがとう。それを改めて体感した一夜だった。
Slowdive –Toyosu Pit, Tokyo
2024/03/11
1. shanty
2. Star Roving
3. Catch The Breeze
4. skin in the game
5. Crazy for Love
6. Souvlaki Space Station
7. Sleep
8. chained to a cloud
9. Slomo
10. kisses
11. Alison
12. When The Sun Hits
13. 40 Days
Encore
14. Sugar For The Pill
15. Dagger
16. Golden Hair
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