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2021年8月、借地契約満了に伴う閉館を発表し、2022年1月30日に営業を終えた多目的エンタテインメントスペース、ユウセン スタジオコースト(USEN STUDIO COAST、以下スタジオコースト)。
2022年1月28日から30日までの3日間、スタジオコーストの看板パーティーであり、20年間音楽ファンに愛され続けたクラブイベント『ageHa』のラストパーティーが開催された。本記事ではその様子とともにスタジオコーストの姿を振り返る。
2002年、スタジオコーストと『ageHa』の歴史は新木場で同時にスタートした。世界最高峰と名高くアイコンにもなったサウンドシステムのオクタゴンスピーカーを38機備えた、約2400人のキャパシティーを持つ大型スペースの誕生は、当時の国内をにぎわせた。なんとグランドオープンではDANNY TENAGLIA(ダニー・テナグリア)を招聘し、3000人を動員したという。
敷地内にはメインホールとなる「ARENA」(アリーナ)のほか、バーを備えた「ISRAND」(アイランド)やテントスペースである「BOX」(ボックス)、そしてプールのある「WATER」(ウォーター)と、大きく分けて4つのフロアから成る。なかでも「WATER」は海外の巨大なクラブにあるプールサイドからインスアパイアを受けて作られた人気のスポットだった。
週末になるとデリック・メイ(Derrick May)やジェフ・ミルズ(Jeff Mills)をはじめとする世界中のトップDJが出演。多くのファンが渋谷からの無料シャトルバスなどを使い、新木場を訪れていた。
日中にはライブイベントの会場としても活用され、昼夜合わせると約20年間で5000本以上のイベントを開催。述べ700万人以上が来場した。正面エントランスには、昔の映画館や劇場のように英字をはめ込むスタイルの看板があり、当日に公演を行うアーティストの名やイベント名が掲げられていた。多くのオーディエンスが記念に撮影するフォトスポットとしても有名であった。
ここからはヒップホップからテクノ、トランス、ハウス、レゲエなどあらゆるダンスミュージックが鳴り響いた、3日間にわたるラストパーティーをレポートしよう。最終日『ageHa THE GRAND FINAL』は「幅広い世代、多くのファンにageHaを体感してもらいたい」という願いを込め、未成年入場可能なデイタイムに開催された。
この日はDJ NORIのSpecial Opening Setからスタート。オープンとともに歴代の『ageHa』ファンたちが徐々にフロアへと集まり、ステージではダンサーらが会場を盛り上げていく。昼間にも関わらず、序盤から真夜中のような雰囲気があった。
かつては朝まで新木場で踊り過ごしていた若者も、気づけばパパ、ママ世代に。2006年にオープンした屋外エリア「PARK」(パーク)はキッズスペースとして開放され、子どもたちが無邪気に遊びまわる姿があった。また、会場のあちこちでは久々の再会を喜ぶ声も。
「ISLAND」では歴代のageHaTシャツをはじめ、グッズ・アイテムやポスターを展示。音楽フェス『RAINBOW DISCO CLUB』のキュレーションによる『DJ/LIVE“The First and the Last”』プログラムが行われたほか、バーカウンターを花道になぞらえたセクシーなショーケースも開催された。
屋外テントの「BOX」では、『ageHa』でレギュラーのトランスイベントだった『Jz Trance』を開催。海風が強く凍えるような天候のなか「BOX」は終始汗が噴出すほどの熱気を帯びていた。
プールを囲むようにして踊る「WATER」では、多くの海外DJを『ageHa』に誘致してきたPRIMITIVE INC.をオーガナイザーに迎え、深く縁のあるハウス/ディスコDJたちが出演。
そして、2002年のローンチパーティーから『ageHa』のレジデントを務めていた DJ EMMAがクロージングを担当。長い歴史に幕を閉じることを惜しむ声は止まず、きらびやかなドラァグクイーン、ダンサー、そして多くのファンたちによる大団円の果てに、パーティーは当初の予定を5時間以上もオーバーし終わりを迎えた。
国内だけではなく、海外のアーティストにとってもかけがえのない存在だったスタジオコースト。20年間で多くのドラマや伝説が生まれたことは、今までのヒストリーを見てもられば分かるだろう(公式サイトはクローズせず、今後も閲覧できる予定/2022年2月時点)。
この空間が無くなったことで、国内クラブカルチャーにおける「テーマパーク的な非日常」はほぼ失われてしまった。しかし『ageHa』とスタジオコーストが培ってきたエンターテインメントに向き合うためのマインドは、これからも新たな世代へと受け継がれていくだろう。新木場に夢のような場所があったことを、どうか忘れないでほしい。
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