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「世界のベストレストラン50(World's 50 Best Restaurants)」において2022年に2位に輝いたペルーのリマにある「セントラル(Central)」のシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネス(Virgilio Martinez)によるガストロノミーレストラン「マス(MAZ)」が2022年7月1日、紀尾井町にオープンした。
ヴィルヒリオはNetflixが配信するグルメ番組「シェフのテーブル」などに出演するなどメディアへの露出も多いペルー料理の伝道師。彼は、首都リマや海抜4000メートルに位置するモライ遺跡などに拠点がある「マテル・イニシアティバ」で食材の研究を進め、発信している。
「マテル・イニシアティバ」は、料理人や農学者だけでなく、ケチュア文化を代々受け継ぐアンデスの人々、脳学者、文化人類学者、アーティストなどあらゆる分野の専門家が参画し、食材を効率よく栽培し、どう無駄なく生かすかを調査し、雇用や教育の機会につなげ、持続可能な農村社会の発展を目指している機関である。
紀尾井町の「マス」はヴィルヒリオの世界観が伝わる「アトラクション」のような空間。エントランスではアンデスのジャガイモやトウモロコシ、食べられる粘土などのペルー独自の食材がディスプレーされており、隠れ家のような店内に20席のみが並んでいる。オープンキッチンで、調理の様子がライブで見られる設計だ。
提供するのは「9つの異なる高度の旅」と「9つの異なる高度を持つ野菜のメニュー」(2万4,200円、以下全て税込み)の2コースのみ。9品のコースで、ペルーの異なる高度が織り成す風景と生態をテーマに「海霧 海抜0m」「アンデスの森 海抜3260m」といったタイトルが付けられている。デザートの「アマゾニア 海抜750m」ではカカオの可能性に挑戦し、今まで食されることのなかったカカオの皮の部分なども調理し、同国の土地や生態系が持つ多様性を味わいながら学べる。これも「マテル・イニシアティバ」での研究の成果だ。
トップシェフを務めるのは、「セントラル」でヴィルヒリオの右腕となり、クリエーティブプログラムを担当し、世界各地の美食イベントへの参加や調査を進めてきたサンティアゴ・フェルナンデス(Santiago Fernandez)。食材の2割はペルーから取り寄せ、8割は千葉産のアンデス品種のジャガイモや日本の海で獲れたウニやホタテなどの地産食材を生かすという。
「日本をインスピレーションの源ととらえ、伝統や季節感を重視し、文化的に表現する食文化にペルーとの親和性を感じる」と語るヴィルヒリオ。彼同様、サンティアゴも「多種多様な素材を食に生かす日本でオープンできることはチャレンジングな冒険だ。日本各地のさまざまな食材を学び、取り入れていきたい」と抱負を語る。
ドリンクは、世界のワインと「マテル・イニシアティバ」で開発したリキュールを使ったカクテルを組み合わせたペアリングなどを用意(1万5,950円)。ノンアルコールのペアリングがあるのも興味深い。
ビーチに面したリマ、高地アンデス、毎日雨が降り続く熱帯アマゾンなど、高度により異なる風土や生態系を巡る食の旅を通じて、ペルーの地に思いを馳せてみては。
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『マス』
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