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神楽坂に残る古い街並みの一角に現れた新スペース「パーマ(PAAMA)」で、韓国を代表するデザイナー、イ・カンホ(Kwangho Lee)の展覧会が2024年12月7日(土)まで開催中だ。イは、スタイロフォームやポリ塩化ビニル、鉄、陶土といった日常的で多様な素材を用いた家具のデザインで知られている。
彼のデザインは、機能性を追求するだけでなく、実用性と芸術性を押し広げる挑戦そのものといえる。その取り組みとして、空間を「誰も住んでいない」と仮定することで、デザインの固定観念を打ち破り、自由な発想を広げるプロジェクト「NOL」は、彼の代表的なものの一つ。さらに韓国の伝統文化を再解釈して作品に取り入れるなど、ジャンルの枠を超えた活動に注目が集まっている。
伝統的な技術や日常的な素材に新たな意味や解釈を与えるのは、彼のシグネチャースタイルになっている。このコンセプトをもとにロープやケーブルを編み込むことで制作されたのが、「Obsession(執着)」と名付けられたシリーズだ。
同展のタイトルにもなっているこの作品群は、ナイロン製のロープや電気ケーブルを編み込み、日常的な素材を新しい形で再構築している。これらは1980年代の韓国家庭で見られた、母や祖母によるかぎ針編みの記憶からインスピレーションを得たもの。しかし、伝統的な枠にとらわれず、イならではのアプローチで有機的かつ彫刻的な作品へと生まれ変わった。その結果、観る人に新しい視点をもたらしている。
「東京らしさ」が詰まった新スペース
パーマは、雑誌『ポパイ』のアートディレクターを務めた前田晃伸の事務所とギャラリーを併設した新しいスペースだ。ヘアスタイルの「パーマ」に由来するその名称には、髪形のように自由自在にスタイルや領域を変えるというコンセプトが込められている。
内装は、「サカイ(sacai)」をはじめ、「キコ コスタディノフ(Kiko Kostadinov)」の内装で知られるインテリアデザイナーの関祐介が担当。倉庫だった建物の雰囲気をあえて残し、インダストリアルな趣を活かした空間となっている。
雑居ビルの地下に位置し、「こんな場所にギャラリーが?」と思わせる、東京特有の驚きが詰まったロケーションだ。ギャラリーへとつながる階段には、元の構造を生かした遊び心あるデザインが施されており、一見殺風景な空間にさりげない仕掛けが隠されている。
展覧会に合わせ、「TOO MUCH Magazine」の編集チームが製作し、前田がアートディレクションを担当した作品集も販売されている。写真家の伊丹豪が撮影したイの作品や、前田自身が韓国のスタジオで撮影した写真、さらには独占インタビューも収録されており、イの世界観を存分に堪能できる一冊となっている。
工業製品とハンドクラフトの境界を曖昧にするイの作品と、建物が調和した本展にぜひ足を運んでみては。
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