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埼玉県の大宮駅から徒歩5分の位置に、待望のミニシアター「オット(OttO)」が2025年3月下旬に誕生する。地域の文化を支える新たな拠点として、地域住民や映画ファンから大きな期待が寄せられている。
かつて日本全国に7000館以上あった映画館は、現在600館を下回るまでに減少。映画文化が息づいていた街も、今や過去のものとなりつつある。
さいたま市も例外ではない。かつて大宮には映画館が12館あったが、現在は駅から離れた場所にシネマコンプレックスが2軒あるのみ。文化の拠点としての役割を担っていた映画館は、街からほぼ消え去った。そんな背景の中での新たなチャレンジに、注目が集まっている。
きっかけは自宅の建て替え
同プロジェクトを手がけるのは、地元在住の今井健太。1990年代から続く大宮駅西口の都市開発による街の変遷を、間近で感じてきた人物だ。今井は、さいたま市が推進する土地区画整理事業により街並みが整備される一方、かつてのように人々が集える場所が失われていく現状を目の当たりにしてきた。
そんな中、義父が所有する建物の区画整理による建て替えを機に、土地の管理運営を託された。駅近という恵まれた立地にもかかわらず、今井は住宅の再建ではなく、地域の未来を見据え、この土地を文化インフラとして活用する決断を下した。
「近所の皆が仲良く、昔から住んでいる人も引っ越してきた人も顔を合わせる事ができる場所があった方がいい」という義父の思いを引き継いだ今井と、その理念に賛同して集まった仲間が、このプロジェクトを形にしたのだ。
気軽に立ち寄りたくなる場所
オットは、ミニシアターの枠を超えた複合施設として運営される。施設内にはカフェやシェアハウスも併設し、地域住民はもちろん、誰でも気軽に立ち寄れる場所を目指す。建築家の佐々木善樹が手がけるオットの館内は、機能性と心地よさを兼ね備えた風通しの良い空間になるよう設計が施されている。
1階には、バーカウンターとカフェスペースを設置し、モーニングからナイトタイムまで幅広い時間帯で食事が楽しめる。また、映画関連の書籍をはじめ、料理本、コミックなど多彩なジャンルの書籍が並ぶブックカフェとしても利用できる。週末にはマルシェやフリーマーケットの開催も予定されており、オープンな場所として活用されるという。
2階はシアタールーム。約220インチのスクリーンと50席の観客席を備えた上映室には、山形の「鶴岡まちなかキネマ」から譲り受けた座席を使用する。映画上映だけでなく、音楽ライブや講演会、貸し切り上映会にも対応するなど、多目的な利用が可能。また、3階から5階には、短期から長期滞在まで対応できる25室のシェアハウスが併設される。
池袋や新宿へのアクセスが良く、大宮は「通り過ぎる街」になりがちだった。しかし、この新しい映画館の誕生をきっかけに、大宮が文化を発信する街へと変わっていく未来を期待せずにはいられない。
オットの開館には、クラウドファンディングによる支援が欠かせない。5,000円から支援ができ、1万円の「ムビチケミニシアター券」を購入すれば、オープン日から1年間映画を楽しみながら応援できる。集められた資金は、デジタルシネマ映写機の導入やカフェ・シェアハウスの運営費用に充てられる予定だ。
クラウドファンディングの詳細はウェブサイトで確認してほしい。応援は2025年2月28日(金)まで受け付けている。映画と地域をつなぐ新しい試みに、ぜひ参加してほしい。
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