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2022年5月14日、数々のミシュラン星付き店に支持される東京のオーガニックファーマー、オウメファーム(Ome Farm)が営むプラントベースレストラン、オウメファームキッチン(Ome Farm Kitcen)が神田にリニューアルオープンした。
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「本当に安心できる食物を都心近郊で作る」をテーマに、無農薬、無化学肥料、固定種にこだわって、青梅で野菜を作り続けてきたオウメファーム。オーナーである太田太の子どもが甲状腺機能に疾患をもって生まれてきたことをきっかけに「体に取り入れる物から見直したい」という思いで2017年に立ち上げた。
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その3年後に畑の野菜を生かしたレストラン、オウメファームキッチンを浅草橋に出店。仲介者を極力入れずに直接農場から安全でおいしい食材を食卓に届けられることを意味する「ファームトゥテーブル」な場を実現した。さらに、創業当初から一貫して循環型農業にも力を入れている。余った食材はコンポストとして利用。その堆肥を使った土で育てた野菜を料理として提供しているという。
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「僕たちは、農家というより農を軸にした食の集団です」と太田は語る。その言葉通り同店はレストランだけでなく、ファーマーズマーケットへの出店や子どもに向けた食育イベントなども積極的に行っている。
レストランは農業に関心がない人にも魅力を発信する場として機能し、多くの人がオウメファームが作るおいしい野菜を知るきっかけとなった。過去には故・ジョエルロブションやノーマなど、海外の星付きシェフまでもが、その噂を聞きつけ訪れたそうだ。
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新しい店舗は、肩肘張らずに楽しんでもらうためにウッディで温かみのある空間に仕上げた。また、より多くの人が滞在できるように10席まで増やした。「野菜や料理の説明が全員に行き届き、なるべくスタッフとの距離が縮まることを意識して、あえてこの席数に留めました」と太田は言う。
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カウンター席の後ろには同ファームが手がけた自家製の蜂蜜や調味料、野菜などが並び、グロッサリーのようなスペースが広がる。そのほか、厳選したナチュラルワインや余ったパンを生かして作りあげたサステナブルなビールもそろっているので、ぜひチェックしてほしい。
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料理はその日の仕入れに合わせ、オウメファームの野菜を最大限に生かした日替わりメニューが並ぶ。もともと農家でまかない飯として出していたメニューをアレンジしたものだそう。手がけるのは両国にあるスペシャルティコーヒーの専門店、マキネスティーコーヒーや馬喰町にあるメキシカンの名店、北出食堂などで修行を積んだシェフの竹内真紀だ。
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基本的にはプラントベースのメニューが多いものの隣接する集落の農家である丹波山倶楽部から仕入れた新鮮なジビエなどを提供する日もある。日替わりメニューの中でも比較的登場回数が多いのが『季節野菜のカレー』(1300円)。取材時は旬の野菜をメインにした『ケールと菜の花のグリル』と『甘夏とハーブのシロップ』を合わせた。
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色どりも美しい『季節野菜のカレー』(1300円)はわさび菜、ケール、スイスチャードをはじめ、畑で採れた野菜を豊富に使ったビーガンメニュー。野菜のペーストに自家製のタバスコやスパイスを加えて煮込んで仕上げたカレーは、素材のうま味とタバスコの穏やかな辛みが凝縮された優しい味わいだ。
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ターサイ、からし菜、ビーツリーフのほか6種の野菜が入った『季節野菜のサラダ』(1200円)は、野菜の苦みやえぐみまでおいしく感じられる一皿。素材の風味を引き立てるため、ビネガーや柿酢、オリーブオイル、塩などを使い、シンプルな味付けを心がけているそう。フレッシュな甘夏の酸味が程よいアクセントになっている。
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カモミールが添えられた『甘夏とハーブのシロップ』(800円)はチャービルや蜂蜜、甘夏に砂糖を加え、発酵させて作った自家製シロップ。甘く、爽やかな味わいだけでなく、その清涼感のある香りに思わずうっとりする一杯だ。
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オウメファームは青梅産の野菜を都内のレストランやマルシェ、イベントを通して発信することで、東京にある広大な自然とそこで育てられた野菜の価値が再認識され、地域やコミュニティが活性化することを目指す。農と食について生産者から話を聞いてみたい人や本当においしい野菜と出合いたい人は、その入り口としてぜひ足を運んでみてほしい。
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