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「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」「メトロポリタン美術館」「ヴィクトリア&アルバート博物館」など、世界の名だたるミュージアムに作品が収蔵されているテキスタイルデザイナー・須藤玲子の大規模個展「須藤玲子:NUNOの布づくり」が茨城県水戸市で開催される。
須藤率いるテキスタイル・デザインスタジオのNUNOが、40年にわたって生み出してきたユニークな作品を紹介する同展。2019年に香港のアートセンター「Centre for Heritage, Arts and Textile(CHAT)」で企画・開催され、「ジャパン・ハウス ロンドン」やスイスへ巡回したものだ。
テキスタイルプランナーの先駆者だった新井淳一らとともに、1980年代に須藤が立ち上げたテキスタイルブランド「NUNO」は、日本各地の伝統的な染織技術や職人らとの協業にこだわりながら、最先端技術を駆使した素材開発など、常に革新的なテキスタイルづくりに取り組み、国際的な注目を集めてきた。環境問題や、布の再生・再利用にもいち早く目を向けて活動してきたことでも知られている。
「布づくり」の舞台裏をインスタレーションで紹介
本展は、須藤が手がけた代表作のテキスタイルだけではなく、デザインの源泉や制作過程からテキスタイルデザインに注目。デザインの着想源からドローイング、原材料や製作サンプル、職人との試行錯誤、生産の過程まで、普段見ることのできない布づくりの舞台裏を公開する。
また、音や映像で「布づくり」のプロセスを紹介するインスタレーションも登場。工場での生産の様子を、臨場感をもって知ることができるだろう。会場構成は建築家のたしろまさふみが担当。アーティスティックディレクションには、ライゾマティクスでの活動で知られる齋藤精一(現パノラマティクス主宰)が加わる。
磯崎建築に現れる「水戸黒」の新作
さらなる見どころは、磯崎新が設計した大空間に現れる、遊び心あふれるインスタレーション「こいのぼり」だ。本展では、色とりどりのNUNOオリジナルテキスタイルに加え、下地に使われる藍染めの青みがかった独特な色が特徴の「水戸黒」の特別なこいのぼりを新たに制作・展示する。水戸黒は江戸初期から水戸藩に伝わる染色技法で、大正時代に化学染織の普及によって途絶えた。しかし水戸市内の職人や地元の人々が、1970年代から再現と継承に取り組んでいる。
海外を巡回してきた本展だが、国内では香川県の「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」での展示を経て、須藤の出身地である茨城県内で満を持しての開催が実現した。会場となる「水戸芸術館現代美術センター」は、本展を企画したCHAT館長兼チーフキュレーターの高橋瑞木が、2003~16年に主任学芸員として勤務していたところでもある。NUNOと須藤によるテキスタイルが、磯崎建築を舞台にどんな展示空間を作り上げるのか。会期は2024年2月17日(土)~5月6日(月・祝)、開幕を楽しみに待ちたい。
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