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2023年から始まる国立劇場の大規模なリニューアルを記念して、「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」の特設ウェブサイトがオープンした。いよいよ閉館が目前となった初代国立劇場および初代国立演芸場の歴史を伝えるとともに、2022年9月から始まるシリーズ『初代国立劇場さよなら公演』をはじめとした今後の事業展開について紹介する。
ウェブサイトに「構想100年」という言葉がある通り、国立劇場の誕生までには長い道のりがあった。早くは文明開化の明治時代から、ヨーロッパの宮廷劇場のような、日本を代表する劇場を設立するという構想が何度も立ち上がったという。特に、近代社会にふさわしい演劇を目指すべく提唱された「演劇改良運動」の発展や、国家意識の高まりなどを受けて、従来の芝居小屋ではない国立による劇場を設置する必要性を訴える声も多かったようだ。しかしながら、実際に現在の国立劇場が完成したのは戦後のことである。
連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の将校向けの住宅、三宅坂パレスハイツの跡地を利用し、半蔵門の地に1966年に初代国立劇場が完成。2018年から、半蔵門駅で文楽や歌舞伎の楽曲が発車メロディーとして使われているのはそのためだ。
半蔵門駅から皇居の堀沿いを進み、劇場の前庭にたどり着くと、春には満開の桜が出迎えてくれる。ソメイヨシノと異なる多品種の桜が植わっているので、比較的長いシーズンを楽しめるのも特徴だ。庭部分の地下には首都高速道路が走っているため、新たに大規模な建築物を建てることは難しいだろうが、公共建築だけに広場的な空間がどのように生まれ変わるかにも期待したい。
『初代国立劇場さよなら公演』シリーズは文楽の公演で幕を開ける。第1部『碁太平記白石噺』の「逆井村の段」は51年ぶりの上演とあって、こちらも要注目だ。57年の舞台に幕を下ろす劇場を惜しみつつ、未来へと続いていく伝統芸能を堪能したい。大、小の劇場と国立演芸場のほか、ホテルやレストランを併設した新たな国立劇場の運営開始は、2029年秋を予定している。
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