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2021年7月23日(金・祝)にユジク阿佐ヶ谷跡地に新たな映画館、モーク(Morc)阿佐ヶ谷がオープンする。運営は手作りのアニメーションを専門に学ぶことができる、アート・アニメーションのちいさな学校が手がける。2020年に閉館したユジク阿佐ヶ谷から、スタッフや体制を新たにして再出発を果たした。
同館では「映画と文学、アニメーションの想像力」をテーマに小説やマンガ、作家、装丁など本にまつわる作品や、文学性を帯びた国内外の旧作や準新作映画を上映。アニメーションのセレクトは親子で観られる有名タイトルから、児童文学や絵本とリンクする作品、往年の東映アニメーションによる製作映画まで幅広く取りそろえる。
同学校の生徒の刺激になるように、若手クリエーターの作品は定期的に上映していくそう。また、学生が作成した卒業制作の上映会も年に1回行う。
地上から階段を下りると現れるエントランスとロビー部分は大きく改装を施した。同学校の「人形スタジオ」に10年ほど眠っていたという大樹の切り株のような巨大丸テーブルと木製椅子、アコースティックギター、スタッフが手作りしたという本棚などが置かれた空間は、木の温もりに満ちた落ち着いた雰囲気だ。
本棚はそれぞれのスタッフが選書した一箱書店になっている。文学にまつわる映画を観賞する前後に手に取って楽しめるほか、一部商品は購入も可能だ。飲食物の提供はしないが、同学校と深い関わりを持つロシアのアニメ作家、ユーリ・ノルシュテインの関連グッズと自社配給作品のDVDなどを販売する。
館名を変えた理由について「多くの人に愛されていたユジクは、前スタッフの方々が約5年間かけて作りあげたものです。その年月を残すためにも、館名を引き継ぐことはできませんでした」と劇場運営スタッフは語る。
新体制では支配人を含めてスタッフは全員一新しており、ほとんどが20代だという。また、ユジク阿佐ヶ谷で問題になっていた労務関連は、劇場運営チームとは切り離して別部署が管理するなど体制変更を行った。
労働環境については「小さい組織なのでシステマチックに割り切れない部分があると思っています。ですが、近くにあるラピュタ阿佐ヶ谷さんに分からないことを教えてもらいながら、スタッフが安心して働ける環境づくりに日々尽力していきます」と説明した。
こけら落としは、ロシアの文豪レフ・トルストイの代表作をセルゲイ・ボンダルチュクが監督、主演を務め映画化した『戦争と平和』(第一部と第二部)、市川凖が監督、脚本を手がけた『トキワ荘の青春』のデジタルリマスター版、弱冠25歳のラトビアの青年が一人で作り上げ、2020年度アカデミー賞最終候補にも選出されたアニメーション作品『Away』の3作品が上映される。
チケットは全て上映当日に窓口のみで販売。会員登録(入会費1,000円)すれば、毎週木曜は1,000円になるほか、各種作品を割安な料金で観賞できる。さらに6回分の観賞ポイントをためると1作品無料になるサービスも実施。「多くの方にとって来たいと思える場所になればうれしい」とスタッフは来客を呼びかける。
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