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メキシコを訪れたことがある人でも知らないメキシコをこの小さな店は教えてくれる。2021年7月4日(日)、下北沢から一駅の位置にある池ノ上にメキシコ雑貨と植物の店、ヴィヴェロ トーキョー(VIVERO TOKYO)がオープンした。もともとメキシコ雑貨などの輸入に携わっていた髙松麻実と大野真嗣の2人が立ち上げた店で、髙松が店舗に立ち、大野が主に海外仕入れを担当している。
10人が入れるかどうかというほどのこぢんまりとした店内には、今まで知らなかった現在進行形のメキシコを感じさせる商品が並ぶ。メキシコ中央高原に住むウィチョル族の伝統工芸であるビーズアートのほか、同国では広く知られている陶器の一つである「タラベラ焼き」をアクセサリーにアレンジしたものなどを展開している。
植物は、メキシコの代表的な灌木(かんぼく)を用意。奥の間には、民間信仰として人気のある聖人、ヘスス・マルベルデやサンタ・ムエルテのグッズが祭壇のような売り場に陳列してある。
これらはメキシコ各地で買い付けた品々。ウィチョルやタラベラ焼きなどは地域の伝統工芸品だが、アーティストや現代の職人が新たな目線で再解釈やアレンジを施すことで、ただの土産物にとどまらない魅力を持っている。特に『アスールコバルト』のタラベラ焼きのアクセサリーが人気だ。
店内の壁に陳列された奉納画「エクス・ボト」もまた、伝統的なルーツを持ちながら日常に浸透することで価値が変遷したものの一つ。元々は何かの誓いや願いをし、それがかなった時に教会などへ礼を表すために納めるものだったが、現在では庶民の風刺画としての楽しみ方も一般的になっている。
酒の失敗談や夫婦げんかの一幕などユーモラスなエピソードが盛り込まれ、軽妙なタッチで描かれた作品は街の民芸品などでも多く見かけるという。こうした品々は「各地の教会や工房と長年に渡り親交を深めてきたからこそ入手できたものばかり」だと大野は胸を張る。
植物は、盆栽をイメージさせる成長が遅い灌木を多く取りそろえる。樹液が天然香料として使われ、幹の表皮が紙のように剥がれるため、現地では「パペリージョ」と呼ばれるカンラン科ブルセラ属などの塊茎植物、まるでカメの甲羅のように見えることから「亀甲竜」(和名)と名付けられたディオスコレア・エレファンティペス、メキシコでは高さ30メートルを越す大樹として一般的なセイバ オアハカの鉢植えサイズなど、現地では代表的な品種だが日本ではあまり見ないものばかり。
また、鉢やセットで置きたいオーナメントは同店オリジナル。オアハカ州のコヨテペックという村の工芸品である「バロ・ネグロ」という光沢を帯びた黒陶が美しいので、ぜひチェックしてほしい。
店の奥には小さな祭壇のように見える棚が並んでいる。ここは、「麻薬聖人」とも呼ばれるヘスス・マルベルデや「死の聖人」サンタ・ムエルテといった、貧しい人々や社会から弾かれたアウトローたちに信仰されている非公式の神たちをモチーフにしたアクセサリーや置き物、Tシャツなどのグッズスペースだ。
「メキシコはこうした時代の変化やさまざまな境遇に合った新たな聖人や教会が年々増えています」と大野は言う。近年は、アメリカへの移民、また中南米からメキシコへの移民が増加するのに伴い「移民の神」として聖トリビオ・ロモが人気なのだそう。
こうしたメキシコの知られざる信仰や伝統工芸を知るだけでなく、現代にアップデートした価値観に商品を通じて触れられる面白さは同店ならではだろう。日常にメキシコのユニークな品を取り入れてみてはいかが。
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